こんにちは!
中小企業診断士のカズユキです!
中小企業診断士の一次試験科目「財務・会計」は計算問題が多く、60分が非常に短く感じます。
そのため問題の意図をすぐに理解して、できるだけ早く計算に取り掛かることが攻略のポイントです。
今回は財務・会計の経営分析「資本回転率」について解説します。
資本回転率は売上高利益率などの指標と比べて、イメージが湧きにくいので難しく感じるかもしれません。
ひとつひとつ理解していけば慣れてきますので、焦らず習得していきましょう!
資本回転率とは
資本回転率は「一定期間の間に売上が資本の何倍になったか」を表す指標です。
この指標は大きくなれば良いとされています。
つまり「少ない資本で大きな売上を得られれば資本回転率は大きくなるので効率的」です。
資本回転率は資産を効率的に使用しているかを表していますので「効率性分析」とも言います。
資本回転率には種類があります。
分母の資本を置き換えることによって、異なる視点で分析できます。
分析するには貸借対照表と損益計算書が必要です。
実際期計算する時に使用する事例を下に掲載しておきます。
ちなみに上の図が貸借対照表、下の図が損益計算書です。
資本回転率の種類と計算
資本回転率の基本的な式は次の通りです。
資本回転率 = 売上高 ÷ 資本
資本はさまざまな考え方があるので、計算を交えながら説明します。
総資本回転率
総資本回転は企業全体の回転率を示します。
計算式は、
総資本回転率 = 売上高 ÷ 総資本
です。
「総資本」とよく似た言葉に「総資産」があります。
この2つは同じ事を表しています。
総資本回転率は、企業が持っているすべての資産を使用して何倍の売上高を上げたかと考えられます。
つまり総資本回転が高いほど資産を効率的に使用できたことと言えます。
分析に使用する時には、同業他社と比較すると良いでしょう。
業界によって資本回転率は異なります。
仮に業界平均よりも数値が低い場合は完全が必要です。
考えられる原因としては在庫や売上債権などの流動資産が多い、建物や設備などの固定資産が多いなどです。
しかし総資本回転率からは見えてきませんので、資産の種類別に回転率を分析して深堀します。
事例の決算書から計算すると
売上高(2,000) ÷ 資本(331)= 資本回転率(6.04回)
このように計算されます。
回転率の単位は「回」です。
この辺りが間違えやすいですね(^^;)
売上高は1年間の結果を表していますので、1年間の間で総資本がおよそ6回転したということを示します。
または1年間の売上は総資本の6倍とも考えられます。
経営資本回転率
経営資本回転率は「経営で使用している資産をどれだけ有効活用しているかを示す指標」です。
式は以下の通りです。
経営資本回転率 = 売上高 ÷ 経営資本
資産の中には会社の営業活動に含まれないモノがあります。
それを除くことによって、もっと正確に効率性を見る指標です。
では会社の営業活動に含まれない資産とはどんなものが該当するでしょうか。
それは「建設仮勘定」「投資その他の資産」「繰延資産」が該当します。
たとえば建設中の建物は、まだ売り上げを生み出す準備段階です。
この状態では会社の売上等に貢献できません。
また投資目的の有価証券等は営業活動とは関係が薄いです。
繰延資産についても経営資本から除いて計算します。
事例で経営資本を計算すると、
経営資本=総資産(331)ー投資その他の資産(2)ー繰延資産(1)=328
となります。
後は売上から経営資本を割れば数値が出てきます。
経営資本回転率 = 売上高(2,000) ÷ 経営資本(328) = 6.10回
これが本業で活用している資産から計算した回転率です。
先ほどの総資本よりも回転率が上がりました。
ちなみに中小企業庁に掲載されている調査に経営資本回転率が掲載されています
売上債権回転率
売上債権回転率は、売上債権の回収スピードを表す指標です。
式は以下の通りです。
売上債権回転率 = 売上高 ÷ 売上債権
売上債権とは、売掛金と受取手形などの総称です。
具体的に売上債権は商品やサービスを提供したけれども、代金を回収していない状態のことを指します。
企業間取引では掛け取引が一般的ですので、商品・サービスの提供と現金の受け取りは一致しないことがほとんどです。
しかし、放置しておくと不良債権化する恐れがあります。
たとえば相手の会社が倒産するような場合です。
よってこの数値は回転数が高い(売上債権が少ない)ほうが良いとされます。
売上債権= 受取手形(57)+ 売掛金(95)= 152
売上債権回転率=売上高(2,000)÷売上債権(152)=13.2回
この指標が業界平均よりも低い場合は、売上債権の回収速度が遅いということです。
手元に現金が少ないと倒産リスクが高まりますので、交渉して現金の回収を早めておきましょう。
補足ですが、負債についても回転率・回転期間を分析することができます。
計算式は
買入債務回転率 = 売上高 ÷ 買入債務
です。
買入債務は、仕入の際の買掛金と支払手形の合計で計算されます。
この指標は売上債権回転率とは逆で支払いの速度は遅い方がキャッシュフローには良い影響を与えます。
しかし支払いが遅いと、取引先との関係が悪化するリスクもあります。
棚卸資産回転率
棚卸資産回転率は、商品在庫などが消化する速度を表します。
式は、
棚卸資産回転率= 売上高 ÷ 棚卸資産
です。
棚卸資産とは「在庫」です。
つまり分母の在庫が少ないことによって数値が高くなります。
一般的に在庫が少ないほうが効率的でリスクの少ない経営ができているといえます。
低い場合は必要以上に在庫を持っていることが考えられます。
事例で計算すると
売上債権回転率=売上高(2,000)÷棚卸資産(30)=66.6回
この指標は比較しないと高い低いの判断はできません。
一般的には在庫を抱えていると劣化して不良在庫につながる恐れもあります
しかし在庫が少ないと機会損失を招く恐れもありますのでバランスが重要ですね(^^)
固定資産回転率
固定資産回転率は固定資産をどれだけ活用しているかを示す指標です。
式は、
固定資産回転率=売上高÷固定資産
です。
事例を使用すると、
固定資産回転率=売上高(2,000)÷固定資産(62)=32.3回
仮にこの指標が低い場合は、固定資産を有効に使用できていないことが考えられます。
建物や機械、ソフトウェア等の活用度合いを見極めるために次の有形固定資産回転率に掘り下げます。
有形固定資産回転率
有形固定資産回転率は固定資産の中で有形固定資産に絞り込んだ指標が「有形固定資産回転率」です。
式は、
有形固定資産回転率=売上高÷有形固定資産
です。
事例を使用すると、
固定資産回転率=売上高(2,000)÷固定資産(69)=29.0回
ちなみに、建設仮勘定を除いた有形固定資産で計算する場合もあります。
もう一つの表示「回転期間」
回転率については別の表示方法として「回転期間」もあります。
回転期間=365日÷資本回転率
です。
資本回転率で参考にしている売上高は1年間の成績です。
よって資本回転率の回数は、1年間の間に何回転するかを表しています。
ということは、365日で割ることで「何日」に換算することができます。
たとえば事例の総資本回転率は
売上高(2,000) ÷ 資本(331)= 資本回転率(6.04回)
でした。
これを回転期間にすると
回転期間=365日÷資本回転率(6.04回)=60.4(日)
と計算されます。
また回転期間を「月」で計算することもできます。
その場合は、
回転期間=12カ月÷資本回転率
で計算します。
回転期間の場合は値が小さい方が良いです。
中小企業診断士試験の対策で考えると、両方で計算できれば良いですね(^^)
今回はイメージしづらい回転率について解説しました。
数値は業界によって高い低いがありますので、ある会社の指標がわかっても善しあしの判断はできません。
競合他社と比較するのが良いですが、そんな簡単に情報は手に入らないので、業界平均の指標と比較することになるでしょう。
分析方法としては総資本回転率から計算して、悪い場合に更に掘り下げていく感じです。
[…] 前回は資本回転率について解説しました。 […]