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経営者のこだわり|食品製造業編

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こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。

私は仕事で経営者とお会いする機会があります。

合う時には当然目的がありますが、合間に雑談をする機会もあります。

その時に、経営に対するこだわりを聞くことができます。

その話を聞いて「なるほど~」と思うことが多々あります。

今回は興味深い内容をいくつか紹介いたします。

今回は「食品製造業」の経営者です。

 

ある食品製造業の紹介

その食品製造業は製造以外にも店舗による直販を行っています。

また、宿泊業(ホテル)などに卸もしています。

特定されないと思いますが、具体的に何を作っているかは伏せておきます。

 

経営者は2021年に事業承継した3代目です。

私と同じくらいの年齢ですが、承継する前から決断力のある方でした。

「この人すごいなぁ、バンバン物事決めてくなぁ」

前社長は職人系の人でしたが、新社長は経営者気質を感じました。

新社長が大事にしていることなど、どんな考えを持って経営しているかを紹介します。

 

ブランドを大事にしている

まず自社のブランドを大事にしていることがうかがえました。

具体的には「商品を安売りしない」ということです。

食品は消費期限が短いものが多いため、期限の近い商品を「見切り品」として安売りすることがあります。

消費期限の近いものは売れ行きが悪く、そのままにすると破棄しなければなりません。

破棄するということは、商品を作るために使った原料や手間が無駄になってしまいます。

それよりも割引で販売したほうが現金を回収できます。

 

しかしこの食品製造業の社長は

「うちは見切り品はしない」

という強いこだわりを持っていました。

その理由として

  • 値引をすると、その時しか購入してもらえなくなる
  • 品質がそれほど良くないので、徐々に売れなくなる
  • やがて割引をしても売れなくなる

このような流れになってしまう可能性があるからです。

確かに割引の商品があると、それを狙いたくなる気持ちはわかります。

私も料理の種類によっては、見切り品を活用して作りますので、どんなのがあるか覗いたりします。

食品ロスの観点から考えると「もったいない」と思いますが、自社商品が安定して売れるために破棄することを選んでいます。

そのあたりは破棄が極力減るように、需要予測を立てて生産計画を立てて対応しています。

 

流行に乗らない

次にこだわっているのは、一時の流行に乗らないことです。

この業界ではコロナ前から高級○○ブームが到来していました。

フランチャイズチェーン店もたくさん登場して、一時期はライバルにかなり押されていた時期もあったとのことです。

自社には流行に乗れるだけのリソースを持っていたのですが、選択した決断は「自社の道を行く」でした。

 

「流行に乗れば確かに一瞬は売上が出るかもしれないが、やがて廃れる時がくる」

「ライバル企業はそれ以外の強みがないので、流行が過ぎれば自然と淘汰される」

このような読みで自分たちの強みをひたすらに磨くことを第一と考えて経営されていました。

実際にコロナを機に流行が過ぎてしまい、高級ブームでフランチャイズ化したお店はどんどんなくなっています。

 

私は流行に乗ることは良いことだと思っています。

一時的に資金を得ることができるので、次の選択肢が増えます。

大事なのはその間に流行が去ったときのことを考えておくことです。

これは私が好きなスティーブン・R・コヴィー先生の「7つの習慣」にもある「緊急性は高くないが、重要度が高い仕事」に取り組むことです。

ついつい目の前のことに追われてしまい、先のことを考える暇がないことがあります。

一般従業員レベルであればまだしも、経営者が同じ作業に追われていると変化に対応できません。

流行に乗った資金を次の投資に回していくことを考えるのが経営者の仕事だと、この社長と話しながら改めて強く思いました。

 

新商品の開発

3つ目は商品開発についてです。

今の社長が入社する前も新商品開発は当然行われていましたが、さらに加速させています。

現社長の方針で、毎月新商品を10個程度開発することがマストになりました。

「そんなにアイデア出ます!?」

思わず私は聞いてしまいました(^^;)

漠然と新商品を開発するよりも、こうした縛りを設けたほうが新しい良いアイデアが出てくるそうです。

 

たしかに自分の仕事に置き換えても、納期が近づいてこないとやる気が起きないことがあります。

「今週までに報告書をまとめて!」と言われる方がやる気スイッチが入ります。

目標管理においても「何を」「どれだけ」「いつまでに」を決めないと、具体的なアクションプランを作成できません。

そういった意味では社長がおっしゃっている内容は

  • 「何を」 新商品を
  • 「どれだけ」 10個以上
  • 「いつまでに」 月末までに

これらが具体的に決まっています。

社長は経営理論の勉強をしたことがないそうですが、直感的に何をすべきかわかっていらっしゃいました。

経営者としてのセンスを感じますね(^^)

 

また新商品を開発してお見せに並べることは、常に動きがある状態をつくることで、顧客を楽しませる効果があります。

いつ行っても品揃えが変わらないと、いくらおいしくても飽きてしまいますよね。

新しいヒット商品を生み出そうと、貪欲に開発を進めているのはすごいです!

 

メディア・コラボ企画への積極参加

最後は外への情報発信です。

この会社ではインスタグラムによる発信をやっています。

華やかな食品の写真はインスタグラムとの相性も良く、足を運びたくなる内容です。

また更新もほぼ毎日されており、情報発信に力を入れていることがうかがえます。

 

それ以外にも交流会への参加や取材にも応じながら、自社ブランドの価値を高める活動をされています。

私が訪問した時は鉄道会社とのコラボ商品の開発をされていました。

ロット数が少なく開発にかかる時間と手間を考えると儲けにならないとのことでした。

どうして収益的にマイナスになるようなコラボをしているのかを尋ねました。

すると社長からは、

「実績を作りたい」

とおっしゃっていました。

 

たしかにコラボ商品だけで考えれば、収益性がないのでメリットはありません。

しかし、鉄道会社とのコラボをやったという実績は、自社の価値を高める効果があります。

要するに「物事を点で見ずに線で見る」ということです。

ことわざでも「損して得取れ」といった言葉がありますが、長い目で見たときに自社の価値を高めておくことは後々収益として返ってきます。

まだ若いのですが、物事を俯瞰して見ることができる素晴らしい社長です。

 

最後に

今回は仕事で出会った社長のこだわりエピソードについて紹介しました。

細かく言えないのは残念ですが、どうしても皆さんに伝えたいと思い書きました。

エピソード自体は当たり前のことかもしれませんが、経営は多くの人を巻き込まないといけないので、こうした判断を組織に浸透されることは非常に難しいです。

判断を誤ってしまうこともありますが、従業員からの同意を得られずに対立してしまうこともあります。

たとえ社長であっても会社の方向を自分の思い通りに決めることができないことがあります。

 

そんな時に「なぜこの方向に向かうのか」を言語化して伝えていくことが必要とされます。

目的を知らされないままに指示だけ与えられると、正しい方向で合っても反発にあってしまうこともあります。

今回紹介した社長は従業員への説明を丁寧に行い、確実に進めていくことが非常に上手でした。

私も参考にしながら、今後の仕事に活かしたいと思います。

ではまた!

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