こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
前回は事業再構築補助金の目的と新規事業の成功確率を解説しました。
今回は公募要領の「補助対象者」について解説します。
補助対象者とは?
補助対象者とは「補助金の申請ができる事業者」のことを指します。
すべての事業者が今回の事業再構築補助金に応募できるわけではありません。
中小企業を中心にして対象者を絞っています。
世の中にある企業の99%以上が中小企業なので、ほとんどの事業者が対象者に入っています。
ただし、しっかり見ておかないと「せっかく事業計画書を作ったのに対象者じゃなかった・・・」ってことになるかもしれません。
では公募要領の記載内容を確認しながら、対象者が誰なのかを詳しく解説します。
公募要領に書いてある補助対象者とは
公募要領とは「その補助金のルールブック」です。
見ていただくとわかりますが、文章だらけで読む気がしません。
よく「公募要領を読み込め」といいますが、私はいつも途中で挫折します(^^;)
6ページから対象者のことが書いています。
公募要領の補助対象者について、最初の文章から抜粋します。
本事業の補助対象者は、日本国内に本社を有する中小企業者等(下記アの要件を満たす「中小企業基本法」第2条第1項に規定する者及び下記イの要件を満たす者)及び中堅企業等(下記ウの要件を満たす者)とします。
いろいろ書いていますが、ざっくり言うと「中小企業 及び 中堅企業」が対象です。
ちなみに「及び」は「と」「&」のような意味です。
つまり「中小企業と中堅企業」が対象です。
- 中小企業には「”ア”を満たす者と”イ”を満たす者」という条件があります。
- 中堅企業には「”ウ”を満たす者」という条件があります。
「満たす事業者」ではなくて「満たす者」にしているのは、個人事業主も対象にしているからです。
この辺りは深く考える必要はありません(^^)
むしろ「中小企業・中堅企業とは具体的にどのくらいの規模?」が気になります。
もちろん公募要領に具体的な規模が示されています。
中小企業の定義
中小企業は「”ア”を満たす者と”イ”を満たす者」になっていましたので、詳しく見ていきます。
「ア」にはこんな図が載っています。
中小企業の要件は「資本金」と「従業員数」があります。
更に業種によって数値が異なります。
例えば「サービス業」であれば
- 資本金5,000万円以下
- 従業員数100名以下
という条件があります。
これはどちらかを満たしていれば中小企業の枠に入ります。
例えば、サービス業で資本金が1億円でも、従業員数が90名だったら「中小企業」です。
同じくサービス業で従業員数が200名でも資本金が2,000万円なら「中小企業」です。
もちろん両方とも数値以下でもOKです。
ダメなパターンは資本金が1億円、従業員数が200名のような場合です。
従業員数はどこまで数える必要があるのかも気になります。
正社員だけなのかパートも含めるのか、派遣社員は?といった疑問が湧いてきます。
「ア」の※2には従業員数のことが書いています。
※2
常勤従業員は、中小企業基本法上の「常時使用する従業員」をいい、労働基準法第 20 条の規定に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」と解されます。これには、日々雇い入れられる者、2 か月以内の期間を定めて使用される者、季節的業務に 4 か月以内の期間を定めて使用される者、試みの使用期間中の者は含まれません。
何やら難しそうですが、従業員数に数える対象者のことを書いてるんだろうなって感じです(^^;)
人数に入れる判断は「常時使用する従業員」です。
常時使用する従業員は解雇の予告が必要です。
逆を言うと「解雇の予告がいらない従業員」は数えません。
具体的には一時的に雇う人が該当します。
ということは正社員はもちろんのこと、パートや契約社員も「予め解雇の予告を必要とする者」なので従業員としてカウントします。
もう一つ「イ」を確認します。
イ 【「中小企業者等」に含まれる「中小企業者」以外の法人】
中小企業等経営強化法第2条第1項第6号~第8号に定める法人(企業組合等)又は法人税法別表第二に該当する法人(※1)若しくは法人税法以外の法律により公益法人等とみなされる法人
(従業員数が300人以下である者に限る。)であること(※2)。
※1 一般財団法人及び一般社団法人については、非営利型法人に該当しないものも対象となります。
※2 法人格のない任意団体(申請時に法人となっていて、任意団体として確定申告をしている場合は申請可能です)、収益事業を行っていない法人、運営費の大半を公的機関から得ている法人は補助対象となりません。また、日本経済の構造転換を促すことを目的とする本事業の趣旨から、政治団体や宗教法人などの団体も補助対象となりません。
この文章をすぐに理解できる人は、私の解説よりも公募要領を読まれた方が良いです(^^)
正直私はこんな文章では理解できません(>_<)
読んでみると組合や社団法人も中小法人の中に該当しますよと書いています。
ホントにざっくり言ってますが(^^)
いろんな法人が該当するので、ほとんどの事業者が入ると思います。
逆に対象とならないものを挙げていきます。
- 従業員300名以上の公益法人
- 法人格のない任意団体
- 収益事業を行っていない法人
- 公的機関から大きな支援を受けている法人
- 政治団体
- 宗教法人
こんな感じです。
ただし条件によっては満たすこともありますので、対象者かどうかは事務局に確認したほうが良いです。
みなし大企業に注意
資本金や従業員数で条件を満たしていても、中小企業に該当しないことがあります。
それが「みなし大企業」です。
この場合は規模が中小企業であっても補助金の対象外とされてしまいます。
みなし大企業とは「中小企業の規模感でありながらも大手企業の傘下に属する企業」です。
大企業の傘下に入り、実質のコントロールは大企業が行っている企業のことです。
どのような状態になっているとみなし大企業とされるのか?
全部で6つありましたので紹介します。
(1)発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業者
株式を半数以上所有している人は、その会社を自分の思うままできます。
半数以上の株式を大企業が持っているということは、その中小企業の決定権は大企業にあります。
この場合は対象から外れます。
(2)発行済株式の総数又は出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業者
(2)は株の2/3以上を複数の大企業が持っている場合です。
これも会社の意思決定を大企業が握っていますので、対象外です。
(3)大企業の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者
これは「役員総数の半分以上が大企業から送り込まれた人間」ということです。
この状態も会社の意思決定を大企業が握っているような状態なので、対象外になってしまいます。
(4)発行済株式の総数又は出資価格の総額を(1)~(3)に該当する中小企業者が所有している中小企業者
だんだん複雑になってきましたね(^^;)
今度は「大企業に意思決定権を握られている会社の子会社」です。
例えば、
- A企業(大企業)はB企業(中小企業)の株式を1/2以上所有
- B企業はC企業(中小企業)を株式を100%所有している
この場合C企業は補助金の対象企業から外れます。
(5)(1)~(3)に該当する中小企業者の役員又は職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業者。
またまた複雑ですね(^^;)
(5)は「役員全員が、大企業に意思決定権を握られている会社の人間で構成されている中小企業」です。
これも意思決定は大企業の思うままですよね。
(6)応募申請時点において、確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者
これは簡単に言うと「めっちゃ儲かっている中小企業は対象外」です。
課税所得は税金を引く前の利益に近いものですが、税引前当期純利益が15億円を超えているって相当すごい会社です。
私が訪問している会社は、売上高で10億円以下の会社が多いです。
売上高で10億円以下なので、利益はもっと少ないです。
このような会社も対象外です。
ちなみに、このすごく儲かっている中小企業は、この後の「中堅企業」の枠には該当します。
中堅企業とは
中堅企業とは今回の事業再構築補助金で現れた新しい枠組みです。
中小企業は「中小企業基本法」という法律に定義がありますが、中堅企業はありません。
事業再構築補助金に「中堅企業」という枠組みを見て、
「中堅企業ってなんじゃ!?」
となった方が多いです。
当初「中堅企業」は明確にこれだという条件を明かされていませんでした。
ようやく公募要領が発表されてわかりました。
条件はざっくり3つです。
- 中小企業枠の「ア」「イ」に該当しない
- 資本金が10億円未満の法人
- 資本金が定められていない場合は、従業員数が2,000人以下
それ以外に「各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者」も加わります。
中堅企業に属する企業は別の枠組みで申請することができます。
対象者の要件は、いつのタイミングで満たしている必要があるか?
会社の資本金や従業員数は変化します。
資本金はそんなころころ変わりませんが、従業員数は常に変化します。
そうなると「いつ満たしておけばよいの?」となります。
これも公募要領に記載されています。
まずは文面をそのまま載せます。
補助対象者の要件は、本事業の公募開始日において満たしている必要があります。また、事業実施期間に限って、資本金の減資や従業員数の削減を行い、事業実施期間終了後に、再度、資本金の増資や従業員数の増員を行うなど、専ら本事業の対象事業者となることを目的として、資本金、従業員数、株式保有割合等を変更していると認められた場合には、申請時点にさかのぼって本事業の補助の対象外となる場合があります。
満たしているタイミングは「公募開始日」です。
公募開始日って何?となります。
公募開始日は「こんな補助金を応募をはじめます」といった発表のような感じです。
よくあるのが「公募要領が発表されるタイミング」です。
ちなみに事業再構築補助金の2次募集はこんなスケジュールになっています。
【公募期間】
公募開始:令和3年5月20日(木)18:00
申請受付:令和3年5月26日(水)予定
応募締切:令和3年7月2日 (金)18:00
この場合令和3年5月20日時点で満たしていることが条件です。
だからといって「補助金申請をしたいからって資本金や従業員を減らしらり、株の保有数を変えたりするのはダメよ」と書いてありますね(^^)
こんなこと書いてあるってことは過去にそういった事例があったんでしょうね(^▽^;)
最近創業した事業者でもチャンスあり!
事業再構築補助金の要件として「コロナ前と後で売上高が10%以上減少している」というのがあります。
そうするとコロナ後に創業した会社は対象外になります。
しかし条件によっては対象になることが書いてあります。
公募要領の文章を見てみましょう。
コロナ以前(2020年3月31日以前)から創業を計画等しており、2020年4月1日から2020年12月31日までに創業した場合は、特例的に支援の対象となります。この場合、売上高減少要件は、2020年10月以降の連続する6か月間のうち任意の3か月の合計売上高を、2020年の創業時から同年12月末までの1日当たり平均売上高の3か月分の売上高と比較して算出してください。
なお、事業計画書において、コロナ以前から創業計画を有していたこと及び新型コロナウイルス感染症の影響により売上が減少していることを示していただく必要があります(例えば、2020年3月31日より前に策定した創業計画の提出、自社が属する業種の売上が減少していることを公的統計等を用いて示す 等)。
ポイントは、「コロナ前から操業を計画していた」です。
具体的には2020年3月31日以前に計画していたことが条件となっています。
これって証明できるのでしょうかね(^^;)
売り上げ減少の条件は付いています。
比較するのは、
- 創業から2020年12月末の売上高
- 2020年10月以降の売上高
となっています。
具体的な数値で確認したほうがわかりやすいですね。
創業から2020年12月末の一日当たりの平均売上×90日を計算します。
一日当たりの売上高は
創業から2020年12月末までの売上÷営業日
で求めることができます。
例えば
創業が2020年7月22日とします。とします。
年 | 2020年 | |||||
月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
売上高(単位:万円) | 50 | 120 | 120 | 100 | 90 | 120 |
日数 | 10 | 31 | 30 | 31 | 30 | 31 |
売上高合計は「580万円」です。
営業日は「163 日」です。
そうすると一日平均の売上高は「3.55万円」です。
これに90日をかけることで「約320万円」と計算されました。
一方2020年10月以降は「連続する6か月のうち3か月の合計」となっています。
例えば
年 | 2020年 | 2021年 | ||||
月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
売上高(単位:万円) | 100 | 90 | 120 | 100 | 80 | 100 |
こんな売上があったとします。
この中から任意に少ない売り上げをピックアップして比較すればよいです。
この場合2020年11月、2021年2月、3月の売上高が低いのでピックアップします。
そうすると合計売上高が「270万円」です。
およそ15.6%ダウンしていますので、要件である10%以上の減少を満たしています。
最後に
今回は事業再構築補助金の補助対象者について解説しました。
公募要領の文章が難しいので、いまいち理解しづらいです。
こうやって分解して考えると、理解しやすくなります。
今後もこんな感じで解説を書きます。
私自身も公募要領の理解に非常に役に立っています。
情報発信もしながら勉強できるなんて一石二鳥です!
また頑張って書きますので、読んでください(^^)/
セミナー資料公開(無料ダウンロード特典)
私が以前実施したセミナーの内容をダウンロードできるようにしました。
事業再構築補助金とIT導入補助金について解説しています。
(無料ダウンロード特典)最近注目されている補助金について
もしよければ参考にしてください。
事業計画書作成のポイントなんかも解説しています。