財務・会計

安全性分析2|財務・会計

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こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。

前回から続き安全性の分析について解説をしています。

それではまずは安全性の振り返りから進めていきます。

 

安全性分析とは

安全性分析とは会社の財務的な側面で分析することです。

つまりお金がちゃんと回っているかどうかです。

当たり前の話ですが、売上を上げていても出ていくお金が多ければ会社を継続することはできません。

さらに言えば、利益が出ていても瞬間的にお金が無くなったりすると倒産します。

これを黒字倒産と言います。

つまり会社を継続させるためには、時々に必要になる費用に対して十分な支払い能力を持っておく必要があります。

このような会社の支払い能力や倒産リスクを分析するのが安全性分析です。

安全性分析は流動性分析とも言います。

 

安全性分析は3つあります。

  • 短期安全性:短期の支払い能力を分析
  • 長期安全性:資金調達と運用の妥当性を分析
  • 資本構成:自己資本と他人資本の構成を分析

ちなみに前回は「短期安全性」と「長期安全性」について解説しました。

安全性分析1|財務・会計

今回は資本構成について解説いたします。

 

資本構成の分析とは

資本構成の分析とは「資本を構成している自己資本と他人資本のバランスを分析すること」です。

自己資本とは純資産で表されます。

自己資本は名前の通りで、主に自分で用意した資金や事業活動で得た利益を蓄えたものが該当します。

自己資本は原則返済の必要がない資本のことを言います。

 

一方他人資本では人から借りた資本が該当します。

つまり借金なので、いづれは返さないといけないお金です。

 

なんとなくわかると思いますが、自己資本が多いほうが経営は安定しそうですね!

借金しないほうが良いといえます。

よく中小企業の社長に「私の会社は無借金だから(エッヘン)」<(`^´)>

なんて自慢されることがしばしばあります。

もちろん無借金経営は素晴らしいことですが、事業展開の面から言うとそうでもない部分もあります。

多少リスクはありますが、みんかからお金を集めることで、自己資金よりも大きな事業ができます。

規模が大きいと社会与える影響は大きくなります。

日本のイノベーション促進や生産性向上のためには、他人資本を効果的に使うことも求められます。

 

また創業を検討されている創業塾に参加したことがありますが、ほとんどの人が金融機関から資金調達を検討されていました。

できれば事業に必要な資金を用意したいのですが、なかなか難しいですよね・・・

 

資本構成の分析では、資本の調達方法である自己資本と他人資本のバランスを分析します。

資本構成の指標には、「自己資本比率」と「負債比率」があります。

 

自己資本比率

自己資本比率は、総資本に対する自己資本の割合です。

式は、

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資本 × 100

です。

 

自己資本は返済義務がないため、自己資本比率は高い方が望ましいといえます。

 

ちなみに、自己資本比率を逆数にしたものが財務レバレッジ(総資本 ÷ 自己資本) となります。

ただし、前に説明した財務レバレッジの効果を考えると、ある程度借入をして成長に必要な投資をした方が、収益性は高くなるとも考えられます。

よって、自己資本比率は適度な水準を維持していることが重要です。

 

実際に計算しています。

たとえば貸借対照表が下の状態だったとします。

純資産の合計が104、資産の合計が331なので、

自己資本比率 = 104 ÷ 331 × 100 = 31.4%

 

負債比率

負債比率は、他人資本である負債と自己資本の割合を表します。

式は、

負債比率 = 負債 ÷ 自己資本 × 100

です。

負債は人から借りたお金なので、返す必要があります。

たとえば、銀行から借り入れたお金や材料や商品を仕入れて支払いを済ませていないお金などが該当します。

 

負債比率は、自己資本比率と連動します。

自己資本比率が高くなると、負債が少なくなるため、負債比率が低くなります。

借入をすれば負債比率は増えるため、安全性という意味では低い方が良い指標です。

 

例で計算してみましょう。

先ほどの貸借対照表を見てみると、負債合計が227、自己資本が104です。

負債比率 = 227 ÷ 104 × 100 = 218.3%

 

 

インタレスト・カバレッジ・レシオ

インタレストカバレッジとは、その会社の借入金等の利息を支払える能力があるのかどうかを図るための指標です。

具体的には、営業利益や受け取った利息、配当で得た資金といった事業利益が、支払利息・社債利息や手形割引料の何倍あるかを式にします。

 

式は以下のようになります。

インタレスト・カバレッジ・レシオ= 事業利益 ÷ 支払利息(倍)

 

事業利益や支払利息は下記のものを合わせた数値です。

事業利益 = 営業利益+受取利息+配当金

支払利息に該当するもの = 支払利息+社債利息+手形割引料

 

インタレスト・カバレッジ・レシオの単位は、「倍」です。

イメージでわかると思いますが、分母の利息よりも分子の利益が多ければ良さそうですよね(^^)

たとえば、インタレスト・カバレッジ・レシオの倍率が「1」の場合、事業で得られた利益と支払利息・割引料が等しくなります。

この場合。設備投資や事業拡大を狙って、新たに借入金を増額するとどうなるでしょうか。

借入金を増額するということは、支払利息が増額することになります。

新たに追加の設備投資をして利益が増加すればよいのですが、分母の支払利息が増えると現状では利息を支払うことができなくなります。

この場合はこの会社に追加の借り入れをできる余裕がありません。

 

インタレストカバレッジの指標の分岐点は「1」です。

インタレスト・カバレッジ・レシオの倍率が「1」を上回っている場合、事業利益が支払利息・割引料を上回っています。

この場合、借入金を増額しても、現在の営業利益で借入金の支払利息を払う余裕があるといえます。

 

逆にインタレスト・カバレッジ・レシオの倍率が「1」を下回っている場合、事業利益が支払利息・割引料を下回っています。

この場合、借入金を増額するどころではなく、現在の借入金の利息すら支払いできない状況といえます。

 

手形割引について

インタレストカバレッジで出てきた「手形割引」について解説しておきます。

商品・サービスを提供した時に「約束手形」を受け取った場合、基本的に記載された期日までは支払いを受けられません。

しかし、「早く現金を手に入れないと支払いに間に合わない」といった、ギリギリの経営をしている場合、現金化できないと死活問題です。

そこで取立銀行または手形割引業者に一定の手数料を支払って期日前に手形を現金化ができる方法があります。

これを「手形の割引」といい、このときの手数料を「割引料」といいます。

 

手形の割引手数料は融資の金利と考えることができます。

期日前に受取手形を取立銀行や手形割引業者に買い取ってもらう時に、割引料を差し引かれた金額を受け取ることになります。

取立銀行や手形割引業者からすれば、手形を担保にして融資したようなものです。

よって手数料は金利が発生すると考えます。

インタレストカバレッジの支払利息に割引料が該当するのはこういったためです。

 

ゾンビ企業について

ゾンビ企業とは本来であれば倒産している企業が、金融機関や国・地方自治体等の支援で存続している状態のことです。

明確な定義はありませんが、帝国データバンクは「設立10年以上で、3年連続でインタレスト・カバレッジ・レシオが1を下回る企業」をゾンビ企業としています。

先ほど出てきましたが、インタレスト・カバレッジ・レシオが1を下回るというのは、企業活動で得た収益よりも利息等の支払いが多いことなので、利息の支払すらできていない状態です。

ちなみに帝国データバンクの調査によると、2021年度のゾンビ企業率は12.9%で、前年度比1.5ポイント増になっています。

2019年度が9.9%、2020年度が11.4%なので、急激にゾンビ企業が増えています。

このように増加している背景には、新型コロナウイルス対策による、特別貸付や支援金などが挙げられます。

本来倒産していた企業が支援をしたことによって存続するのは、経済の原理を考えると不健康と言えます。

市場活性化のためには収益力の低い企業を撤退させて、新しい企業を作っていくことが重要です。

しかし企業を撤退させることは雇用機会の損失につながります。

ゾンビ企業にも多くの人が働いています。

多くの雇用が失われると、雇用保険の給付など公的負担が発生します。

また、倒産するには多額のコストが掛かります。

法的倒産であれば、申立て費用、管財人費用、財産処分費用、解約費用などが発生します。

さらに、倒産企業との取引先にも影響が及びます。

取引先の売掛金などが回収できなくなれば連鎖倒産になることもあります。

このように稼げないからと言って撤退させることで、いろんな問題を発生させる可能性があるため、簡単に倒産させることができない事情があります。

 

前回と今回、2回にわたって安全性分析を解説しました。

安全に経営することは大事ですが、事業拡大に成功した企業はリスクを背負うことで成長した面もあります。

ベンチャー企業を例にとると、リスク背負いまくっていますよね。

私はリスクを背負うのは、なるべく少なくしておきたいですが(^^;)

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