こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
今ブログでは私自身の学びなおしを目的として、中小企業診断士試験の内容を振り返っています。
実務をするようになってからも試験内容を振り返っているのは、診断士試験の内容が実務で活躍するからです。
特に企業経営理論や運営管理、財務・会計などの科目は、ビジネスにおいて役に立つ内容が多いです。
試験は大変ですが、絶対プラスになりますよ!
最近は財務・会計の経営分析を振り返っています。
今回は2回にわたって安全性分析について解説いたします。
実際の数値で計算もしますので、いつも使用している貸借対照表を示しておきます。
安全性分析とは
安全性分析とは会社の財務的な側面で分析することです。
つまりお金がちゃんと回っているかどうかです。
当たり前の話ですが、売上を上げていても出ていくお金が多ければ会社を継続することはできません。
さらに言えば、利益が出ていても瞬間的にお金が無くなったりすると倒産します。
これを黒字倒産と言います。
つまり会社を継続させるためには、時々に必要になる費用に対して十分な支払い能力を持っておく必要があります。
このような会社の支払い能力や倒産リスクを分析するのが安全性分析です。
安全性分析は流動性分析とも言います。
安全性分析は3つあります。
- 短期安全性:短期の支払い能力を分析
- 長期安全性:資金調達と運用の妥当性を分析
- 資本構成:自己資本と他人資本の構成を分析
今回は短期安全性と長期安全性について解説いたします。
短期安全性
短期安全性では短期の支払能力である「流動比率」と「当座比率」という指標があります。
短期の安全性なので、「今現在の会社の財務状況が大丈夫か?」ということを見ます。
つまりこれらの指標が悪いと、かなり倒産のリスクがあるということです。
では短期の安全性は何で見るかというと、
「持っているお金で支払わないといけない費用を払えるか」
という感じです。
それぞれの指標を見ていきましょう!
◆流動比率
流動比率は返済が必要な流動負債と現金化しやすい流動資産を比率で表したものです。
流動負債は1年以内に返済が必要なもの、流動資産は1年以内に現金化されるものとされています。
つまり「すぐに返済が必要なものに対応できるか?」ということですね。
流動比率は単位は「%」で表します。
式は次の通りです。
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
分子に現金化できる資産、分母に返済が必要な負債が入ります。
分子に資産が入るので、この指標はできるだけ大きくしたいですね。
少なくとも100%以上にしないと支払うことが難しくなります。
この指標の理想的な状態は200%以上と言われています。
業界によって水準は異なりますが、なるべく支払い能力があることが倒産リスクを下げます。
下に私が事例で使用している貸借対照表を用意しました。
これで計算してみます。
これで見ると流動資産が261、流動負債は87ということがわかります。
先ほどの式に入れて計算してみましょう。
流動資産(261) ÷ 流動負債(87)× 100=300%
計算すると300%になりました。
理想は200%以上と言ってましたので、この会社の短期安全性はかなり高いといえるでしょう。
◆当座比率
次は当座比率です。
この指標は先ほの流動比率似ていますが、より資産に制約を設けています。
式は以下の通りです。
当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100
一見すると流動比率と似ていますが、分子が流動資産ではなく「当座資産」となっています。
当座資産は流動資産の中でもさらに短期に現金化できるものに限定しています。
当座資産に該当する項目は
- 現金・預金
- 受取手形
- 売掛金
- 有価証券
これらを合計したものです。
事例から該当する勘定科目を上げると以下の通りです。
流動資産と比較すると「棚卸資産」以下の項目が該当しなくなります。
これらの資産は現金化できるまで少し時間がかかるため、当座資産には該当しません。
ちなみに、受取手形、売掛金に貸倒引当金がある場合は、当座資産から控除することでより慎重に安全性を判断することができます。
また短期貸付金については当座資産に含まれると判断されることもありますが、含まれないと判断するほうが良いと考えます。
理由としては、
- 貸している相手の信用状態により一概に回収が容易とは限らない
- 貸借対照表の順番は「流動性配列法」
ということが挙げられます。
流動性配列法とは「貸借対照表の勘定科目は現金化しやすいものから記載すること」です。
現金化しやすいものから順番に記載することを考えると、棚卸資産よりも現金化しづらいと考えられます。
試験ではこのように判断が分かれるような勘定科目のある貸借対照表を用いないと思いますが(^^;)
当座比率では、流動比率よりもより短期に回収できる当座資産と、流動負債の比率を見るため、より厳密に会社の安全性を見るための指標です。
理想的な基準は業界によって異なりますが、一般的に100%以上が望ましいとされています。
事例の貸借対照表の安全性はどうでしょうか?
当座資産を計算してい見ると、
- 現金・預金=50
- 受取手形60ー3=57
- 売掛金100ー5=95
- 有価証券=20
合計すると50+57+95+20=222です。
流動負債は流動比率で使用したものと同じ87です。
計算すると、
流動資産(222) ÷ 流動負債(87)× 100=255.1%
となりました。
100%以上が望ましい指標なので、安全性は高いと判断できます。
長期安全性
長期安全性は企業の財務状態を長期的な目線で分析します。
先ほどの短期では一年未満に現金化や支払いの必要性がある流動資産や流動負債に着目しましたが、長期的な目線とはどういったことを分析するでしょうか?
長期安全性では固定資産に着目します。
つまり「固定資産が適切な資金で賄われているか」を分析します。
建物や設備などの固定資産は、投資してから資金を回収するまでに長い時間がかかります。
そのため、固定資産は、返済義務のない自己資本か、返済期間が長い長期借入金などの固定負債で賄うことが良いとされます。
たとえば、固定資産への投資を短期に返済する必要がある流動負債で賄うとどうなるでしょうか?
固定資産はすぐに現金化できないのに対して、流動負債はすぐに支払いを求められます。
するとお金が不足してしまうので、財務状態が不安定になります。
長期安全性の指標には、固定比率と固定長期適合率があります。
固定比率
固定比率とは固定資産が自己資本でどれだけ賄われているかを示し指標です。
返済義務のない自己資本(純資産)で固定資産をまかなえていると安全と言えますね。
式は、
固定比率 = 固定資産 ÷ 自己資本 × 100
です。
理想的な状態は「自己資本(純資産)で固定資産をまかなっている」なので、100%以下です。
先ほどの流動比率は高いことが良いとされていましたが、この指標は低いことが求められます。
ちょっとややこしいですね(^^;)
丸暗記すると、どっちかわからなくなりますので、しっかりと意味を理解しておきましょう。
念のため事例を参考に計算してみましょう。
固定資産(69) ÷ 自己資本(104) × 100 = 66.3%
理想である100%以下を達成していますので、安全性は高いといえます。
金額の規模はわかりませんが、この事例企業は優秀ですね!
事例企業のような安全な設備投資が理想ですが、現実は大きな投資を自己資本(純資産)で賄うことは難しいです。
よってこの指標を100%以下にすることはハードルが高いので、固定資産も含めた次の固定長期適合率で固定負債も含めて分析します。
固定長期適合率
固定長期適合率は、固定比率よりも基準を緩くした指標です。
具体的には固定資産を自己資本で賄え切れていなくても、支払期限が長い固定負債で賄えていればOKと判断します。
自己資本だけでなく、固定負債を含めて計算した指標です。
式は、
固定長期適合率 = 固定資産 ÷ (自己資本 + 固定負債)
です。
固定長期適合率も100%以下であることが理想です。
先ほどの固定資産よりも分母の範囲が多くなりましたので、100%以下になりやすくなっています。
逆に考えると、この指標が100%を超えていると危険ということです。
固定資産への投資の一部が流動負債で調達されているのは財務的には安全と言えません。
事例企業を見てみましょう。
赤で囲っている範囲が対象の数値です。
固定資産は69、自己資産(純資産)は104、固定負債は140です。
これを式に代入すると、
69 ÷ (104 + 140)= 28.4%
です。
事例企業の安全性は非常に高いといえます。
今回はここまでです。
次回は安全性分析の2回目として「資本構成」から見る分析をしてみます。
中小企業診断士試験においては、一次試験・二次試験両方とも重要なテーマです。
特に流動比率と固定比率の理想とする数値が異なりますので、丸暗記ではなく意味を理解しておいてください。
ではまた!