財務・会計

総合原価計算について(財務・会計)

投稿日:2021年5月9日 更新日:

こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。

前回は原価計算の方法である「個別原価計算」について解説しました。

今回は原価計算方法の一つである「総合原価計算」について解説していきます。

原価計算の方法は「個別」と「総合」

原価計算方法は、製品の種類や目的によって様々です。

基本的な原価計算の方法は、

  • 個別原価計算
  • 総合原価計算

があります。

個別原価計算は、「個別の製品ごとに原価計算をする方法」です。

例えば、特注の機械や船舶などを個別の注文ごとに生産する受注生産形態で採用される方法です。

割と大規模なものや値段が高いものに使用されます。

個別原価計算では製品ごとに原価を計算しますので、同じ機械でも原価が違います。

 

総合原価計算は、「大量生産形態で採用される原価計算の方法」です。

総合原価計算では、1 ヶ月単位に発生した原価を集計し、それを生産量で割ります。

そうすることで製品あたりの原価を計算します。

総合原価計算はまとめて計算しますので、1 ヶ月間の製品原価は同じ値です。

実際に具体的な方法を解説します。

個別原価計算は前回のブログで解説しました。

個別原価計算について(財務・会計)

今回はもう一つの総合原価計算について説明します。

総合原価計算とは

総合原価計算の計算は、1 ヶ月間に発生した原価を集計し、それを生産量で割ることで製品単位あたりの製造原価を計算します。

 

発生原価の集計

総合原価計算では、発生原価を2つに分けます。

  • 直接材料費
  • 加工費(それ以外の原価)

加工費については残りの原価をまとめていますので、

加工費=直接労務費+直接経費+製造間接費

です。

図表で表現すると、

原価の要素 総合原価計算の発生原価
直接材料費 直接材料費
直接労務費 加工費
直接経費
間接材料費
間接労務費
間接経費

考え方としては個別原価計算よりもざっくりしています。

つまり総合原価計算では直接材料費と加工費の2つの原価を計算して、合計すれば求めることができます。

 

実際の計算方法

では、図の例を見ながら計算方法を解説いたします。

 

当月のデータを確認します。

期首仕掛品が 200 個、期末仕掛品が 400 個あります。仕掛品の進捗度は共に50%です。

進捗度は仕掛品がどこまで完成しているかという意味です。

これは途中まで加工していることを表しますので、加工費の計算時に使用します。

 

2.原価データを見れば、

「すでに原価計算されているんじゃ」

と思ってしまいそうです。

しかし「当期製品製造原価」は「期首仕掛品+当期総製造費用ー期末仕掛品」です。

よって期末仕掛品を求める必要があります。

 

直接材料費と加工費で期末仕掛品の計算方法が違います。

これらを計算していきます。

 

個数と費用のデータがから直接材料費と加工費のボックス図を書いて、個数と費用の金額を整理します。

まず、直接材料費のボックス図は、図のような個数と金額になります。

材料は工程の始点で投入されていると解釈することがほとんどです。

「完成品」でも「期末仕掛品」でも、同じように費用が投入されたと考えます。

要するに直接材料費の個数は、完成品と仕掛品の分の当月のデータをそのまま記載するだけです。

ここから期首仕掛品原価87,000円を「期首仕掛品」に当期総製造費用480,000円を「当期投入」に記入します。

 

ややこしいのは次の加工品です。

加工費のボックス図を整理します。個数については、進捗度を考慮して記入します。

加工費は加工の進捗度によって発生していきますので、仕掛品については進捗した分しか費用がかかりません。

この例では仕掛品については進捗度が 50%ですので、50%分の費用しか消費していないということです。

この場合は、個数は進捗度を掛けた数字を記入します。

よって、期首仕掛品は 200 個X50%で 100 個、期末仕掛品は 400 個X50%で 200 個となります。

次に、完成品の個数は生産データの完成品の数字「1,000」をそのまま記入します。

 

さらに、当期投入分の個数を計算します。

これは、ボックス図でわかるように、完成品と期末仕掛品を合計し、期首仕掛品を引くことで計算できます。

この例では 1,100 個です。

これが、進捗度を考慮した個数、すなわち完成品換算量です。

 

直接材料費と同じく、原価データをボックス図に記入します。

加工費の期首仕掛品44,000円、当期総製造費用220,000円を記入します。

これで、個数と費用のデータが整理できました。

後は、期末仕掛品の原価を求めることができれば、完成品の原価を計算することができます。

 

期末仕掛品の原価

期末仕掛品原価についてわかっていることは「個数」です。

ということは期末仕掛品の単価がわかれば「個数×単価」で原価を計算することができます。

 

ここで単価の求め方をどうするかによって製造原価が違ってきます。

単価の求め方は主に3パターンあります。

  • 先入先出法
  • 後入先出法
  • 平均法

以前のブログに書いた決算整理の原価計算とほとんど同じです。

決算手続の流れ|決算整理仕訳その1(財務・会計)

ここでも細かく解説します。

 

先入先出法

先入先出法は、期首仕掛品を先に完成させて、それが完成した後に当月投入分を製造すると仮定する方法です。

今回の場合、仕掛品は全部使いきっているので「当期投入」の費用が当てはまりそうです。

直接材料費は、先入先出法では当期投入 1,200 個のうち 400 個が期末仕掛品になったと考えます。

よって、期末仕掛品の単価は、当期投入分と同じになります。

当期投入分の単価は480,000 円を 1,200 個で割ると 400 円です。

したがって、期末仕掛品原価は、

単価400円/個×400 個=160,000 円

です。

当期製品製造原価はこれだけの材料があれば求めることができます。

製造原価(直接材料費)は期首仕掛品原価 87,000 円+当期投入480,000 円ー期末仕掛品原価160,000 円=407,000 円です。

この原価は直接材料費です。

総合原価計算ではもう一つの加工費についてを求めて合計する必要があります。

加工費もボックス図を使って、直接材料費と同じように計算していきます。

 

期末仕掛品は当期投入 1,100 個のうち 200 個がなったと考えます。

当期投入分の単価は 220,000 円÷1,100個=200 円です。

期末仕掛品原価は、

単価200円/個×200個=40,000 円

です。

 

製造原価(加工費)は期首仕掛品原価44,000 円+当期投入 220,000 円ー期末仕掛品原価40,000 円=224,000 円です。

これで、直接材料費と加工費の完成品原価を求めることができました。

あとはこの2つを合計すれば当期製品製造原価がわかります。

当期製品製造原価=製造原価(直接材料費)407,000 円+製造原価(加工費)224,000 円= 631,000 円です。

 

ついでに完成品の単位原価を求めてみます。

先入れ先出し法による完成品単位原価は、631,000 円÷1,000 個=631 円です。

 

後入先出法

後入先出法は、先に当月投入分を完成させて、その後に期首仕掛品の分を完成させると仮定する方法です。

あまりあり得ない話ですが(^^;)

とにかく計算してみます。

後入れ先出しにすると期末仕掛品は期首仕掛品が優先的に残っていることになります。

期末仕掛品には期首仕掛品の原価が含まれます。

また、期首仕掛品よりも期末仕掛品の個数が多い場合は、期末仕掛品には期首仕掛品に加えて、当期投入分の費用も含まれます。

 

例では期末仕掛品400個のうち、200個が期首仕掛品で残りの200個が当期投入分です。

よって期末仕掛品の原価は、200個×435円/個(期首仕掛品の原価分)+200個×400円/個(当期投入の原価分)=167,000円です。

 

あとは期首仕掛品原価 87,000 円+当期投入 480,000 円ー期末仕掛品原価 167,000円で製造原価(直接材料費)が計算されます。

計算すると400,000 円です。

 

加工費も同様です。

期末仕掛品の 200個は、期首仕掛品の分が 100 個、当期投入分が 100 個です。

よって期末仕掛品の原価は、100個×440円/個(期首仕掛品の原価分)+100個×200円/個(当期投入の原価分)=64,000円です。

 

期首仕掛品原価 44,000 円+当期投入 220,000 円ー期末仕掛品原価 64,000 円=200,000 円が製造原価(加工費)です。

逆に完成品1,000個の原価は当期投入の単価 200円に相当するため、完成品の個数 1,000 個×200円/個=200,000 円と計算することもできます。

試験のことを考えると、この方法の方が早く計算できます。

 

最後はこの 2つを合計します。

当期製品製造原価は 600,000 円です。

単位原価は、600,000 円÷1,000 個で 600 円です。

このように先入先出法とは単価が変わります。

問題分を見て対応に注意してください。

平均法

最後は平均法です。

平均法は、期首仕掛品と当期投入の分が平均的に完成すると仮定する方法です。

この場合は、期末仕掛品は、期首仕掛品と当期投入分を平均した原価で構成されます。

例で確認してみましょう。

平均法では、期首仕掛品と当期投入分を平均した単位あたりの原価に、個数を掛けることで原価が計算できます。

直接材料費では、期首仕掛品が 87,000 円で200 個、当期投入分が480,000 円で 1,200個なので、567,000 円÷1,400 個を計算すると単価は 405 円になります。

よって、期末仕掛品原価は、単価 405 円に個数 400 個を掛けることで、162,000 円と計算できます。

ここから製造原価(直接材料費)は期首仕掛品原価 87,000 円+当期投入 480,000 円ー期末仕掛品原価 162,000 円=405,000 円と導くことができます。

これは、単価 405 円に、完成品の個数 1,000 個を掛けて算出することもできます。

 

加工費も同様です。

加工費の平均単価を求めると 220 円になりました。

これに、期末仕掛品の個数を掛けて期末仕掛品原価は 44,000 円と計算できます。

製造原価(加工費)は、単価 220 円×個数 1,000 個=220,000 と計算できます。

 

よって当期製品製造原価はは、直接材料費と加工費の完成品原価を足して、625,000 円と計算できます。

また、完成品単位原価は、625,000 円÷1,000 個で625 円となります。

 

総合原価計算のポイントは、加工費の求め方です。

初めに進捗度を使って数量の換算を行い、正しいボックス図を書くことです。

試験では期末仕掛品の原価について指定がります。

どの方法を使っても計算できるように、くり返し練習しておきましょう(^^)

 

 

 

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