こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
今回は評価制度についてです。
評価制度と聞くと「人に点数を付けられるのはイヤ」と思う人が多くいます。
「評価する側は気楽でいいなぁ」なんて思う人もいます。
しかし評価する側は相当なプレッシャーを感じてます。
今回は評価者側について解説していきます。
実は評価する側もプレッシャー
評価制度は基本的に全従業員を対象とします。
しかし部長クラスになると評価対象から外れることも珍しくありません。
そんな時、
「部長だけ評価されないなんてずるい」
といった意見が挙がります。
誰でも人から評価を受けることは抵抗がありますし、そのプレッシャーから逃れたいと思います。
では評価対象から外れた部長は楽をしているでしょうか?
実はそうでもありません。
部下の評価を任せられているプレッシャーで大変な思いをしています。
会社によっては評価の点数で昇給や賞与の支給額が決まります。
つまり他人の生活に影響を及ぼすほどのことを会社から押し付けられています。
「この評価は本当に適正なのだろうか・・・?」
会社の命令通りに評価をしたものの、自分の評価が適正なのか自信を持てません。
そんな時に私が提案しているのが「評価者訓練」です。
評価者訓練
評価者訓練とは「評価者に会社の評価制度の仕組みを理解してもらい、公平・公正に評価ができるようにする訓練」です。
「そんなことをしなくても部下の評価はできる」
と考えている人も多いですが、評価者訓練はいろんな効果があります。
- 評価をする目的を知る
- 評価制度の内容を理解してもらう
- 公正・公平な評価にする
3つの効果について解説いたします。
評価をする目的を知る
まずは評価をする目的をすり合わせておきます。
評価制度は人材育成を目的としています。
つまり評価制度は人材育成を実現する手段です。
しかし給与や賞与の支給額を決定するためのものだと思っている人が多いです。
これは一度の説明では浸透しません。
何度も経営者の口から説明することで、少しずつ伝わります。
目的の目線が合っていないと、どんな制度を導入してもうまくいきません。
目的については私もしつこいほど皆さんに伝えるようにしています。
目的を省いて手法の説明だけはやめてください。
評価制度の内容を理解してもらう
次に評価制度の内容を理解してもらいます。
これも導入の時に説明してから放置してはうまくいきません。
なぜなら評価制度は頻繁に行わないからです。
一般的には上期と下期の2回、つまり半年に1回ぐらいのペースで行われています。
「うちの評価制度ってどんなんだっけ?」
毎回こんな感じで運用されます。
「評価の期限に間に合わせないといけないし、かといって適当に評価をつけたら説明ができない」
方法がわからないので誰かに聞いてみるのですか、わかる人がいないので大変です(^^;)
このように評価制度は、なかなか要領を得ないのが実情です。
そうならないために、評価の内容を伝えたり評価基準を擦り合わせたり、運用方法を確認したりします。
一度体験していることなら思い出してくれます。
このように評価者関連は会社がどんな人材を求めているかを伝えることができます。
公正・公平な評価にする
最後に公正・公平な評価にすることが挙げられます。
目的と制度の内容を理解しても、陥りやすい誤差や評価する基準を把握しておかなくては評価者によって評価にバラつきが出ます。
評価のバラつきが妥当なものであれば良いのですが、評価者によって価値観が違いますので、それ以外の要素に影響されていることがあります。
代表的な誤差に「ハロー効果」があります。
ハローは「後光」という意味があり、簡単に説明すると「オーラ」です。
これは「いつまでの過去の出来事の影響を受けて評価すること」のことです。
例えば過去に大きなミスをして会社に損害を与えた人がいます。
その人は評価される時に、「あの人は今過去に大きな失敗をしたからなぁ」といつも低い評価をつけられている状態になっています。
失敗した時と今回の評価の対象期間は関係がないにも関わらず、こうした影響を受けている人がいると思います。
逆に大きな成功をしたことで、良い影響を受ける人もいます。
本来であれば評価の対象外になることが、影響を受けていては、不当な差を生んでしまいます。
これは知らず知らずのうちに影響されていることがありますので注意して下さい。
評価分析は「平均」と「分散」
ある会社で考課者訓練の前に、直近の評価結果を見せていただきました。
分析する場合は、少なくとも平均と分散は見るようにしています。
「平均」で甘辛度合いをチェック
まずは部門ごとに平均値に差があるかをチェックします。
平均値を見れば、部門責任者の評価が全体的に甘いのか辛いのかを判断できます。
ムリに調整をする必要はありませんが、あまりにも部署間で差がある場合は調整をします。
評価の理論誤差に「寛大化傾向」があります。
これは評価が甘くなってしまう傾向です。
理由としては、
- 部下との関係性を悪くしたくない
- 評価に自信がない
- 部下のほうが専門的な仕事をしている
このような理由が考えられます。
もう一つ論理誤差というのがあります。
これは「間違った関連性をもとに評価をしてしまうこと」です。
たとえば英語が話せる人を「英語圏の人と交渉ができる」と思って評価をしてしまうことが考えられます。
英語は話せるけれども、交渉が上手とは限りませんよね。
身近なものではベテランや役職者のほうが良い評価をつけるといったことがあります。
確かに社歴が長くなると、いろんな仕事ができます。
しかし仕事ができるとは限りません。
またベテランになれば評価基準も高くなるので、良い評価を取ることは容易ではありません。
しかしイメージ的にベテラン・役職者は良い結果と思い込んでいるのです。
「分散」でメリハリをチェック
今度は「分散」でバラツキ度合を見ます。
分散が大きければ良い評価と悪い評価のメリハリがついた状態になっています。
逆に分散が小さい場合は差が少なく、みんな同じような評価になっています。
評価の誤差に「中央化傾向」があります。
これは評価が真ん中の評価によりやすい傾向を表しています。
このような評価は次のことが原因だと思われます。
- あまり観察していなかったので評価材料に乏しい
- 評価することに自信がない
評価をする時には判断材料が必要です。
普段からメモを取るなどして素材を集める必要があるのですが、半年に1回では忘れてしまいます。
判断材料がなければ評価ができません。
そうするとあたりさわりのない中央の点数をつける傾向が出ます。
評価に自信がない場合も、あたりさわりのない評価となるのです。
判断材料がない場合に、直前の行動が半年間の評価を決定することもあります。
これは「期末効果」と呼ばれます。
4月頑張ったのに、8月・9月に成果が乏しく半年の評価が悪かったという感じです。
評価者訓練で全体の目線合わせをする
評価者訓練では今回紹介した誤差をあらかじめ説明しておくことができるので、間違った傾向をある程度防ぐことができます。
また評価者訓練によって評価者は自分の評価が辛いのか甘いのかを知ることができます。
自分の傾向を知ることは、普段の仕事では体験できないので貴重です。
更に他の評価者の判断や傾向を見ることができます。
私は模擬評価によって、どのように判断したかを話し合うことを重要視しています。
そのような取り組みによって、全体の目線合わせや意識改革を進めることができるからです。
制度の目的を伝えて評価をする人材を育成することが、より良い評価制度には不可欠です。