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なぜ目標が必要か|目標管理の落とし穴と適切な運用

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こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。

ドラッガーが目標管理制度を提唱して、会社では目標を作ることが一般的になっています。

私も目標を自分で作成し、実施して結果報告をする「PDCA」を長年会社でやってきました。

 

会社が目標を作ること、個人が目標に向かって業務を行うことは当たり前のことになっています。

しかし目標は本当に必要なのでしょうか?

 

目標を達成することによりも目標を作ることが目的になっているような気がします。

達成できないような目標を振り分けられて、モチベーションが大きく下がっている組織もあります。

そこで今回は目標について改めて考えてみることにしました。

 

目標とは会社の目的を具現化すること

目標とは「仕事における具体的なゴールを定めること」です。

皆さんの会社でも売上高や不良率、納期遵守率といった目標が掲げられているのではないでしょうか。

目標は会社の目的を達成するために作られます。

目的は個々の会社によって異なりますが、共通して言えることは理念やビジョンを達成することや、利益を出して存続することなどが挙げられます。

ただし理念やビジョン、存続といった内容は抽象的な表現が多いので、これだけでは組織のメンバーが具体的な行動を起こすことは難しいです。

目標をつくることのよって、これらの抽象的な理念やビジョンが行動しやすいように具体化されます。

目的を達成できる効果的な目標をつくるにはそれなりの労力がかかります。

 

私が支援している会社では部門の目標設定に2~3か月かけています。

それぞれの部署が抱えている課題を掘り下げたり、優先順位を決めたりするには、それなりの期間が必要です。

 

目標設定に時間をかけていると「目標を作る意味があるのか」と疑問を持つ人もいます。

たしかに目標を作っている時間があれば、その時間で生産や販売をしたほうが生産性は高まるかもしれません。

また仮に目標がなくても毎日たくさんのやるべき仕事があります。半年や1年後の目標がなくても毎日の仕事はできるでしょう。

それでも多くの会社で目標設定をしているのは、目的を具体的にする以上にメリットがあるからです。

次に目標をつくるメリットについていくつか紹介します。

 

目標を作るメリット

目標は行き先や役割を明確にできる

目標を設定することのメリットの一つ目は、行き先や役割を明確にできることです。

もし目標を決めずに物事を進めていくと、組織のメンバーの行動はバラバラになってしまいます。

目標を作成することで、目指すべき方向を組織のメンバーと共有ができるので、同じ方向に向かって進むことができます。

組織のメンバーが同じ目標に向かって進むことによって、大きな力を生むことができます。

また目標によってメンバーの役割も明らかになります。一般職から現場リーダー・管理職ごとに期待されていることが目標によって明らかになれば、何をやるべきかがはっきりします。

 

目標は仕事の生産性を向上させる

次に目標を設定することによって仕事の生産性を高めることができます。

目標がなく毎日仕事をするよりも、目標を定めたほうが達成しようとする行動が生まれます。

達成意欲が生まれると積極的に組織のメンバーとコミュニケーションを取ろうとします。

また目標を明らかにすると、達成するために必要な能力が明らかになります。

仮に能力が不足している場合は、それを習得するために努力をします。時間短縮などの生産性を上げる取り組みも生まれやすいです。

 

目標はモチベーションを高める

三つ目として目標を作成することによって組織のメンバーのモチベーションを高めることができます。

たとえば少し高い目標を達成するために、責任のある仕事を任せることがあります。

会社の重要な仕事を担当することは、任せられた従業員のモチベーションアップにつながります。

また目標を達成できると、達成感を得ることができるので、満足度が向上し次の仕事へのエネルギーとなります。

特に自ら目標を作ると、他人から言われるよりもやる気が起きます。

 

安易な目標設定はモチベーションを下げる

これまで解説したように目標設定は目的の具現化以外にもメリットがあります。

しかし目標の取り扱いによってはモチベーションを下げてしまうリスクがあります。それらについて解説いたします。

 

目標数値が高すぎる・低すぎる

目標値が達成できないほど高い場合、目標を作ることでモチベーションを下げてしまいます。

高い目標に対して挑戦すること自体は悪いことではありません。

しかし努力でどうにもならない目標を掲げても従業員のモチベーションを下げるだけです。

逆に低すぎると簡単に達成してしまうため能力を十分に発揮できません。

目標を達成が見えてくると手を抜いてしまうこともあり、かえって生産性の低下を招きます。

また目標に取り上げる内容は、対象者がコントロールできる内容にしないといけません。

たとえば間接部門では経費を抑えることはできるかもしれませんが、直接的に売り上げを増やす活動は難しいです。

自分でコントロールできる範囲を超えている目標はモチベーションを下げてしまいます。

 

目標を達成する具体的な行動計画がない

目標作成ができたとしても、目標が抽象的であると行動に移すことができません。

たとえば5S活動は本業の仕事とは別で活動のための時間を作る必要があります。

5S活動が進まない実行計画には「時間がある時にする」といった抽象的な表現が混じっています。

このような場合、活動が先送りになったり、一部の人に負担がかかったりして全体のモチベーションが低下してしまいます。

達成の手段は個人で考えることも必要ですが、上司と部下のすり合わせが不十分だと実行に移せないケースが多く見受けられます。

目標をつくる時は具体的な行動計画まで落とし込んでおかないと、達成意欲やメンバーの動機付けにつながりにくいです。

 

実行した計画の振り返りをしていない

計画を実行しても結果について考察していないことがあります。

売上高や不良率といった結果は共有できていると思いますが、なぜそのような結果になったのかを分析していないと、さらなる改善に結びつきません。

また結果の分析が不十分だと誰が頑張ったのかわからないため、評価をすることができません。

達成に貢献した人をしっかり評価しないと、次第に目標達成の意欲は低下していきます。

 

目標管理を行うポイント

目標の落とし穴にはまらないようにするためには、目標を作るだけでなく管理することが必要です。

目標管理では目標設定前から結果までの流れを上司と部下が同意をしながら進めていきます。

目標管理について押さえておくべきポイントを解説します。

 

達成基準や達成方法をサポートする

まずはどこまでやれば達成なのか、達成のための効果的な行動について、上司と部下が話し合って決めておきます。

一番わかりやすいのは「数値基準」です。

売上●●●●万円、不良率●%以下といった数値目標は客観的な判断がしやすく、達成できたかどうか振り返る時に明確に評価できます。

また目標に対してどのような行動で達成をするのかも決めておきます。

このように達成基準・達成のための行動が具体的になると達成意欲がわきます。

目標は努力すれば達成できる範囲でなければモチベーションは高まりません。

しかし達成基準は部下だけでは判断ができなかったり、個人の能力によって異なったりします。

そのため上司と部下が目標設定の面談を実施して、達成可能な水準をすり合わせておきます。

特に社歴の浅い部下は達成するための行動がわからずに困っていることがあります。

すべて上司が決める必要はありませんが、ヒントを与えながら部下に考えさせるようにしましょう。

 

進捗確認を上司と部下が一緒にする

二つ目は目標達成の進捗を定期的に確認しておくことです。

たとえば月に1回程度進捗確認をすることで、取り組みの状況や適正な目標であるかをチェックできます。

期首につくった目標がスケジュール通りいくとは限りません。

私が支援している会社でも立てた目標や行動が進まなかった場合は変更しています。

逆に早く進んだ場合はさらに先に予定していたことを前倒しにします。

また定期的な進捗確認は達成を妨げる問題が大きくなる前に見つけることもできます。

早めに対処することによって、目標達成の確率を高めます。

 

結果だけでなくプロセスも評価する

三つめは結果やプロセスを公平に評価することです。

がんばった結果やプロセスを評価や処遇等に反映させることで、貢献度が高いメンバーのモチベーションを高めます。

公平に判断するためにも達成基準を明確にしておくことは非常に重要です。

達成基準があいまいになっていると、振り返った時に判定が難しくなります。

また結果だけではその時の運にも左右されることがあるので、取り組んだ姿勢も合わせて見ておきましょう。

そのためには部下の行動を普段から観察しておく必要があります。観察して気づいたことは忘れないようにメモなど記録を残しておきましょう。

 

今回は目標の重要性や管理のポイントなどを解説しました。

目標は目的を達成するための手段であることを念頭においてください。

目標を作ることが目的にならないよう、上司は部下の目標設定や進捗管理をしてください。

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