中小企業診断士に合格して40歳から経営コンサルタントをしているカズユキです。
私の仕事で「5S活動支援」があります。
5S活動の内容はそれほど難しくありませんので、支援する必要はないと思われがちです。
しかし組織的に実行しようとすると、自社の力だけでは定着しないことがあります。
私のような外部の人間が関わることで「やらなきゃ怒られる」みたいな感じで進みます。
しかしこれでは外部チェックがなくなると同時に活動が終わります。
今回は、定着する秘訣を伝えます。
ちなみに基礎的な内容については以下の記事を参考にしてください。
習慣化にかかるのは3週間から1か月!?
会社に訪問している経営者から
「指示が徹底できない」
「改善の指示を出してもできない」
「5Sが続かない」
といった嘆きを聞きます。
こういった改善や5Sが続かない、というのは、どこの会社でもよく見られることです。
5Sか続かないということは「習慣化できていない」と言い換えることができます。
では人が何か新しい習慣を身につけようとする場合、どの程度継続すればよいのでしょうか?
まず習慣化までにかかる、大まかな目安ってどれくらいかインターネットで調べてみました。
習慣化しようとする内容にもよりますが、「21日」と「28日」ぐらいみたいです。
これは1960年代に発行された、外科手術に関する本が由来だと言われています。
マルツという医師が義手や義足が体に馴染むのに、平均で21日かかるということに気がつきました。
そこから、人間は生活の大きな変化に順応するには21日かかる、ということが主張されるようになったそうです。
あくまでも義手や義足の話ですけどね。
習慣化の実験
2009年に習慣化の問題に関して、”European Journal of Social Psycology”という雑誌に、ある心理学的な研究が公表されました。
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのフィリップ・ラリーという人が、96人の参加者を集めて行なった研究です。
研究に参加した人は、なにかを習慣化したいという動機を持っていました。
昼食時にフルーツを食べるような簡単なものから、毎日15分間ジョギングといった少し難易度の高いものなど様々です。
その実験では毎日、自分が習慣化したいと思ったことを、どれくらい無意識で実行できたかを答えることになっていました。
自分に強いることなく、あまり考えこむことなくできるようになったら習慣化ができたこととします。
その結果、参加者の無意識性と行動に関して、下図のようなカーブを描く関係が明らかになりました。
平均では、無意識に実行できるようになるまでに、66日かかったそうです。
グラフからわかることは、初期段階で無意識性がグッと伸び、参加者の習慣化が進むにしたがって、徐々に緩やかな伸びになるということです。
平均は66日ですが、習慣化したい事柄によって、習慣化までの期間が18日から254日とばらつくこともわかっています。
「コップで毎日水を飲む」といった簡単な習慣は、すぐに無意識な動作になっていきましたが、「朝食前に腹筋を毎日50回する」はもっと時間がかかっています。
内容にもよりますが、比較的シンプルなことであれば、2ヶ月間毎日繰り返しを続ければ習慣化できるということです。
さらに、少しぐらいサボっても長期的な影響は少ないということ、無意識性を大幅に促進するのは初期の繰り返しである、ということもわかりました。
この研究結果から、5Sの習慣化をどうすればよいかを考察します。
5Sを習慣化するには
私の考えは次のとおりです。
- 簡単にできることから始めていく
- 徐々にハードルを上げていく
- 一つ一つこなしていく
ということです。
例えば、朝礼後に身の回りのゴミを1分間拾う、ということでもよいでしょう。
その程度であれば、コップの水を毎日飲むのと同じくらい簡単なことです。
おそらく1〜2ヶ月もすれば「誰も何も言わなくても、朝礼後にはゴミを拾う」姿が見られるはずです。
そして、ゴミを拾わないと、なんだか一日が始まらないような気が生まれているはずです。
そうなれば次のステップとして、少しハードルをあげます。
次は、昼休み後に5分間だけ職場の拭き掃除と掃き掃除をするようにします。
そのあとは、職場の改善案を週に1回は提出する、5Sのミーティングを月に2回開く、工具棚の表示・標識を作るなど、少しずつ職場の高度な改善へとつなげていきます。
最初から一気にたくさんのことに取り組むと消化不良を起こしますが、習慣化されて無意識に行動できるようになって次の段階へ移れば、大きな負担を感じることはないでしょう。
私の経験則では、5Sがある程度のレベルで定着するには、どのような会社も3年はかかると思っています。
最初からなんでもかんでもやろうとすると、反発も大きく、挫折もしがちです。
簡単なことでもできることをまず確実にやる。
その繰り返しが、5S活動全体の定着につながっていきます。