企業経営理論

ドメインについて|その2(企業経営理論)

投稿日:2020年10月12日 更新日:

こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。

今回はドメインの考え方に前回に引き続きついて解説します。

ドメインとは「事業を定義すること」です。

具体的には「誰に」「何を」「どのように」を決めていきます。

例えば「カラーコンタクトレンズをインタネットで販売する会社」であれば

  • 「誰に」:20~30代の社会人女性
  • 「何を」:休みの日におしゃれするカラコン
  • 「どのように」:インターネットで手軽に購入できる仕組み

といった感じです。

今回はドメインの定義や切り口などについて説明いたします。


ここで学べること

ドメインの定義方法

物理的な定義:「モノ」で定義する

機能的な定義:「コト」で定義する

 

マーケティングマイオピア

マイオピアは近視眼のこと。

自分で可能性を狭くしてしまっている状態。

 

ドメインの切り口

市場(顧客)軸、機能軸、技術軸の3つ切り口がある

 

ドメインの転換

環境が変わったら定義を変えること

 

重要度

中小企業診断士試験の重要度で表します。

一次試験 ★★★★★

ドメインは良く出題されています。

ドメインの定義方法はわかりそうでつかみどころのないテーマです。

理論を覚えたら過去問でしっかり対策しておいてください。

 

二次試験 ★★★★☆

ドメインの定義は非常に大事ですが、一次試験のように意地悪な問題は出題されません。

事例企業の強みを活かしてターゲットのニーズを満たす製品やサービスを生み出すという考え方が大事です。

 

ドメインの定義方法

ドメインの定義方法は2つあります。

それが

物理的に定義

機能的に定義

です。

物理的に定義するとは「ドメインをモノとして定義する」という考え方です。

これだとわかったようなわからない様な感じですね(^^;)

 

実例を挙げてみます。

例えばブレーキを作っている会社であれば

物理的には「ブレーキ製造」です。

 

これに対して機能的に定義するとは「ドメインをコトとして定義する」という考え方です。

最程のブレーキ製造であれば、

機能的には「車両を止める技術」です。

 

ドメインの定義を失敗した事例として、アメリカの鉄道会社が良く挙げられます。

アメリカの鉄道会社は当時、自分たちの会社を「鉄道事業」と物理的な定義をしていました。

その後、自動車や航空機の発展に伴って衰退していきました。

 

仮に定義を機能的にすればどうでしょうか?

自分たちのドメインは「車両を使って運搬するサービス」と定義すれば事業の幅が広がります。

この定義であればトラックなどを使った運搬も考えられます。

鉄道で経験した運搬する技術を活かすことができます。

船や飛行機などの業界に参入することも可能です。

 

鉄道事業はすたれても他の事業で成功した可能性は十分あります。


マーケティングマイオピア

ドメインを物理的にとらえると企業が持っている価値に気が付かないことがあります。

先ほどのアメリカの鉄道会社の事例のように鉄道にこだわり過ぎると事業の広がりません。

運ぶサービスととらえれば鉄道以外の可能性を模索できます。

このように顧客の視点を忘れて事業展開を制約してしまっている状態を「マーケティングマイオピア」と言います。

マイオピアは「近視」という意味です。

目の前のことしか見れていないので視野が狭くなっている状態です。

これを防ぐために「自分たちの事業は顧客にどういった価値をもたらしているのか?」といった考えが必要です。

そうすれば新しい可能性に気が付いてきます。

 

ただし抽象的すぎるとドメインがわかりにくくなってしまいます。

また何でも解釈によってはアリになってしまうので経営資源を集中することができません。

 

ライザップは「健康に寄与すること」をドメインとして定義していました。

しかし解釈によっては何でもアリになってしまいました。

それにより一時期あまり良くない状況となりました。

赤字企業を安く買収することで差額を利益に計上するということをやっていました。

それ自体は悪くないのですが、競争力の落ちた赤字企業は将来的にお荷物になる可能性があります。

ドメインの切り口

ドメインをどういった切り口で考えればよいか。

一般的には3つの方法があります。

市場(顧客)軸

市場(顧客)軸では共通の顧客によって定義します。

前に例を挙げた日本の鉄道会社は、鉄道事業の他にもホテルや不動産に展開しています。

これは「鉄道沿線の住民に対してサービスを提供する」といったドメインに定義しています。

 

機能軸

機能軸は自分の会社が顧客にどのような価値を提供できるか考えて定義します。

例えばIBMという会社は「顧客のITに関する課題を解決する」というドメインに定義しています。

この定義によりハード面だけでなくソフトやコンサルティングなどさまざまなITの課題をワンストップで解決できます。

顧客もあちこちに依頼するよりも1社にまとめて依頼したほうが安心です。

 

別の中食業界の会社では「食に関する課題を解決する」というドメインに定義しています。

お弁当や仕出しに関して規模が大きくても生産能力の高さを活かして解決することができます。

「中食で困ったらあの会社に依頼すれば間違いない」となれば他社よりも優位に立つことができます。

 

技術軸

技術軸は企業が持っている技術や能力を基にドメインを定義することです。

例に挙げると、キャノンは光学に関する技術に強みを持っています。

その強みはカメラなどの映像技術に活かしています。

それ以外にもプリンターなどの複合機を中心とした事務用品、X線診断システムやCTシステムなど医療の分野にも進出しています。

 

ドメインの転換

ドメインの定義は変えても良いのか?

 

もちろんOKです(^^)

 

むしろ環境の変化によって変えていかなくてはいけません。

 

例に挙げていたIBMを例に挙げると、

以前はパソコンを中心としたハード部分を製作していました。

この時のドメインは、コンピューターという技術軸で展開しています。

 

しかしハードはさまざまな企業が参入してきました。

パソコンは低価格化が進みどうしても利益を確保することが難しくなってきました。

 

そこでドメインを機能軸に転換しました。

ITに関する課題を解決するソリューションビジネスに展開することで業績を向上させることができました。

 

ドメインを転換するときは内部環境と外部環境を分析して決定します。


今回のまとめ

今回はドメインについて解説しました。

内容を振り返ると、

  • ドメインの定義は物理的な定義「モノ」と機能的な定義「コト」がある
  • 物理的な定義は「マーケティングマイオピア」が起きる可能性がある
  • 機能的な定義は「抽象的な定義」に陥る可能性がある
  • ドメインの切り口は「市場(顧客)軸」「機能軸」「技術軸」
  • ドメインは内部環境と外部環境の変化に応じて「転換」させる

といった感じでした。

試験においてはこの知識を応用する問題が多いです。

出題の可能性も高いので、過去問を繰り返しておいてください。

 

今回はここまでです。

また役に立つ情報をお伝えしますので、よろしくお願いします!

 

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