こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
今回は中小企業診断士一次試験の科目、財務・会計から「税務会計」について解説します。
実務になるとかなり細かい知識がにつようですが、試験においては基本的なことを問う問題が多いです。
ですので、基本的な考え方や計算方法を理解していただければ、得点に結びつけることができます。
税務会計については、企業が納付する法人税の計算や、会計と税務のズレを埋めるための税効果会計を学んでいきます。
税務会計とは?
税務会計とは「企業の課税されるべき所得額を算出するための会計」です。
企業は事業活動て得た儲けに応じて、法人税等を納める必要があります。
この法人税は単純に会計上の利益ではありません。
税務上の「所得」を基にして計算されます。
法人税の計算
法人税とは「法人に対して課税される税金」です。
法人税はその年に稼いだ所得に応じて計算されます。
申告と納付手続き
法人税を納付する手続きは、通常は、
- 中間申告
- 確定申告
という流れです。
中間申告は、1 年間の事業年度の中間である 6 ヶ月分の法人税を前払いする手続きです。
確定申告は、1 年間の事業活動による所得を元に計算した法人税を納付する手続きです。
中間申告で前払いした分は、確定申告により清算されます。
法人税では、事業年度終了の翌日から 2 ヶ月以内に、申告書の提出と税金の納付をします。
所得の計算
法人税の計算では、「所得」を計算してから法人税額を計算します。
税務上の所得は、会計上の利益とはいくつかの点で異なります。
会計上の利益は
- 「収益」から「費用」を引いたもの
ですが税務上の所得は違います。
具体的には、
- 「益金」から「損金」を引いたもの
です。
基本的には収益は益金、費用は損金と同じ意味合いです。
しかし会計と税務では目的が違うため、異なる部分があります。
会計の目的は「利害関係者に経営成績や財政状態を報告すること」です。
税務の目的は「公平で適正な課税を行うこと」です。
目的が違うので、会計上は費用とみなされているものが、税務上では損金に認められないことがあります。
交際費で具体例を挙げます。
交際費を無制限に認めるとどうなるでしょうか?
交際費をたくさん使って損金を増やせば、所得を減らすことができます。
所得を減らせば、課税対象が減るので税金の払う額を少なくしようと知恵がはたらく人もいるかと思います。
これを認めてしまうと、納税額に不公平感が出てしまいます。
もしこのようなことがされていても、税務上の修正を加えて修正をします。
このように、会計上の利益を、税務上の所得に換算し直す手続きを「税務調整」といいます。
税務調整の内訳は、税務申告書類の 1 つである「別表四」に記載することになっています。
「別表四」では、会計上の当期純利益を一番上に表示し、次に税務上の調整項目を記載します。
この調整項目には4つあります
- 損金不算入(損金として認めない)
- 損金算入(損金として認める)
- 益金不算入(益金として認めない)
- 益金算入(益金として認める)
これらの要素によって当期純利益から、加算・減算をします。
最終的に所得金額が計算されて、この金額を基に課税されます。
税務調整の4つ
次は、実際に税務調整をする4項目について掘り下げて行きます。
先程の繰り返しですが、調整項目の4つは、
- 損金不算入
- 損金算入
- 益金不算入
- 益金算入
です。
ひとつずつ具体例を挙げながら解説します。
損金不算入(損金として認めない)
損金不算入「会計上は費用としているが、税務上の損金として認められない項目」です。
例としては
- 交際費の損金不算入額
- 減価償却費の償却超過額
などがあります。
交際費は先ほどお伝えした通り、無限に認められると「入れたもん勝ち」になってしまいます。
減価償却費は、税務上では償却限度額が定められています。
ですので損金に算入できる額が制限されています。
もちろん減価償却費で当期の損金として認められなかった分については、次期以降の損金として繰り越しされます。
これは「税効果会計」に関わってきますので、その内容を記事を書いたらここにリンクを貼ります!
別表四では「損金不算入」の項目は、不算入の額を当期純利益に加算します。
損金に不算入ということは、費用として認められないということです。
ですので所得がその分増えます。
よって納税額も増えます。
損金算入(損金として認める)
損金算入は「会計上は費用としていないが、税務上の損金として認められる項目」です。
具体例としては
- 減価償却超過額の当期認容額
などがあります。
これは、減価償却費の償却超過額が発生した場合に、次期以降で調整される分です。
別表四では「損金算入」の項目は、算入した額を当期純利益から減算します。
つまり損金に算入できると、所得をマイナスすることができます。
所得が減れば納税額も少なくなります。
事業者にとっては節税したいので、いっぱい入れたいところですね(^^)
益金不算入(益金として認めない)
益金不算入は「会計上は収益としているが、税務上の益金としなくて良い項目」です。
例としては、
- 受取配当金の益金不算入額
などがあります。
「受取配当金の益金不算入額」は、受け取った配当金について、一定の割合を益金から控除する制度です。
配当金は配当をする企業が課税後に支払っています。
受け取った企業の所得として認められてしまうと、課税対象となってしまいます。
2重で課税を防ぐために、受取配当金を益金から除くことができるということです。
別表四では「益金不算入」の項目は、不算入の額を当期純利益から減算するため、マイナスとして表示します。
益金に不算入ということは、所得がその分減って、納税額が減るということになります。
益金算入(益金として認める)
益金算入は「会計上は収益としていないが、税務上の益金にする必要がある項目」です。
例としては
- 売上高の計上もれ
などがあります。
別表四では「益金算入」の項目は、算入した額を当期純利益に加算するため、プラスとして表示します。
益金に算入ということは、所得がその分増えて、納税額が増えるということになります。
このような 4 種類の加算・減算項目を「別表四」に記載し、税務上の所得金額を計算します。
加算と減算の項目を間違えないように注意してください。
意味を考えれば加算するか減産するかわかりますので、なぜ加算なのか?減算なのか?まで一旦落とし込んで覚えておいてください。
法人税の計算
税務調整が終われば所得が確定しますので、法人税の計算をします。
法人税額は、計算した所得に、所定の税率を掛けて計算します。
実際の税率は、企業の資本金の規模によって異なります。
期末の資本金が 1 億円超の大法人には、税率 23.20%が適用されます。
期末の資本金が 1 億円以下の中小法人には特例があり、税額が減額されるようになっています。
この場合は、所得のうち 800 万円以下の部分には税率 15%、800 万円を超える部分には税率 23.20%が適用されます。
例えば、所得が 1,000 万円の中小法人の場合はどうなるでしょうか?
所得1,000万円 中小法人 |
対象所得 | 税率 | 課税額 |
800万円 | 15% | 120万円 | |
200万円 | 23.20% | 46.4万円 | |
合計 | 166.4万円 |
所得のうち 800 万円以下の部分には 15%の税率を掛けて 120 万円、800 万円を超える金額である 200 万円分には 23.20%の税率を掛けて 46 万 4千円と計算されます。
これらを合計すると法人税額は 166 万 4 千円となります。
ちなみに法人税は定期的に更新されますのでご注意下さい。
なお、法人の支払う税金には、この法人税だけでなく事業税や法人住民税もあります。
詳細をかなり細かいのですが、試験対策としては法人税の計算までを覚えておけば良いです。