財務・会計

貸借対照表の負債と純資産の部(財務・会計)

投稿日:2021年1月20日 更新日:

こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。

前回から貸借対照表の解説をしていますが、意外に内容が多かったので2回に分けています。

今回は貸借対照表の右側、貸方(負債の部と純資産の部)について解説します。

貸借対照表についての概要と借方(資産の部)については下記リンクから確認してください(^^)

貸借対照表の概要と資産の部について(財務・会計)

貸方は資金の調達

貸方は「どのようにして事業に必要な資金を調達したか」ということを表しています。

事業を行うためには資金が必要です。

例えば、

  • 事業を行う店舗や事務所
  • 製品を製造するための建物や設備
  • 製品を生み出すための材料
  • 商品を売るための仕入れ

といった感じで、いろんな先行投資が必要です。

すべて自分で用意できれば良いのですが、なかなか難しいことが多いです。

自分で用意する以外に友人知人からの出資や銀行からの借り入れ等を活用します。

 

借方は「資産の部」だけでしたが、借方には「負債の部と純資産の部」の2つがあります。

 

負債の部

負債の部とは「返済する義務がある債務のこと」です。

「他人資本」と呼ばれ、誰かから借りたお金です。

代表的なのが銀行から借りたお金ですが、まだ支払いが終わっていない仕入れの代金なども負債の部に入ります。

 

流動負債

流動負債は企業の通常業務のサイクルに含まれるような、比較的短期に返済する項目が含まれます。

代表的な項目は

  • 支払手形
  • 買掛金
  • 短期借入金
  • その他流動資産

といった感じで、流動資産よりかは項目が少ないです。

 

支払手形

支払手形は「商品や材料の仕入れを行った際に、手形を発行して支払った総額」です。

流動資産の項目「受取手形」は「支払手形」の逆です。

つまり支払手形を受け取った企業は、受取手形を持つことになります。

 

買掛金

買掛金は「商品や材料の仕入れを行った後で、支払手形を発行していない掛取引の総額」です。

掛取引とは「商品・サービスを提供された時には代金を支払わず、決められた期日までに後日支払う取引」です。

つまり相手を信用して代金を後払いにしています。

ですので「信用取引」とも呼ばれます。

企業間の取引では、その都度支払いが発生すると取引が複雑になります。

そこでその月にかかった費用を月末等に一気に支払います。

販売時の掛取引が「売掛金」で、購入時の掛取引「買掛金」といいます。

 

短期借入金

短期借入金は「金融機関からの借り入れのうち、決算日翌日から1年以内に返済義務があるもの」です。

ちなみに短期借入金が多くなると返済のサイクルが早いので危ないです。

長期借入金のほうが良いのですが、企業の信用がなくなってくると短期借入金で借入するしかなくなってしまうこともあります。

 

その他流動資産

その他の流動資産として計上されるのは「経過勘定」と呼ばれるものです。

経過勘定とは「当期に受け取っている収益や費用のうちに、期をまたぐものを「当期分」と「次期分」に調整する勘定」です。

この経過勘定の中で「義務」が発生している場合、負債に計上されます。

うーん、ホントに経過勘定はわかりにくいですね(^^)

 

例えば、物件を賃貸している会社を考えます。

ある会社から家賃を1年分一気に支払ってもらい、そのうち来期の6か月分も含まれているような場合です。

この場合当期に払った「来期分の6か月分家賃は」経過勘定として計上されます。

これを「前受収益」と言います。

前受収益は先にお金をもらっている状態なので、物件を貸す義務が発生します。

義務は負債に分類されるので、前受収益は「負債」に計上します。

 

また継続してサービスを利用する会社が代金を後払いにしているケースを考えます。

例えば不動産を継続的に借りている場合で、家賃を後で支払うようなパターンです

これを「未払費用」といいます。

この場合、決算日地点で代金が未払いの場合、代金を支払う義務が生じます。

ですので未払費用は「負債」に計上します。

 

固定負債

固定負債は「金融機関等からの借り入れのうち、返済の義務が1年を超えるもの」が該当します。

代表的な項目として

  • 社債
  • 長期借入金

といったものがあります。

 

社債

社債とは「社債券」といい、企業が発行する債券」です。

企業は社債を売って得たお金を使って事業を行います。

社債は償還期間と呼ばれる満期があります。

償還日(満期)が来たら債権の持ち主にお金を返します。

それまでは債権の持ち主に定期的に利子を払います。

もうちょっと簡単に言うと、

「わが社はあなたから○○円借りました。〇年×月△日に返します。それまでの間、□%の利子を払います」

こういった約束を交わす感じです。

企業にとってはすぐに返さなくて良い、長期的な資金調達方法です。

 

長期借入金

長期借入金は金融機関からの借り入れのうち、返済義務が 1 年を超えるもの」です。

企業にとってはすぐに返さなくてよい資金なので、短期借入金よりも経営面で助かります。

しかし会社に一定の信用がないと長期借入金で借入することは難しいです。

 

純資産の部

純資産の部は「返済義務のない資金」です。

例えば、自分の資金や株主からの出資、活動で得た利益の留保分が該当します。

「資産の部=負債の部+純資産の部」ですので、

「純資産の部」は「資産の部」から「負債の部」を引いた額となります。

 

株主資本

株主資本は簡単にいうと「株主の持ち分にあたる部分」です。

これに該当するのは、

  • 資本金
  • 資本剰余金
  • 利益剰余金
  • 自己株式
  • 新株予約権

が該当します。

 

資本金

資本金は「事業の元手となる資金のこと」です。

事業を円滑に進めるためには会社を運営していく資金以外に、会社を始めるためにある程度資金が必要な場合があります。

その時に企業は出資者を募って資金を集めます。

 

出資者には企業が株式を発行し、払い込みを受けた金額のうち、資本金として繰り入れられます。

出資された金額をすべて資本金に繰り入れる必要はありません。

繰り入れなかったお金は資本準備金にまわされます。

 

会社を始めるときに資本金は1円からでもスタートできますが、ある程度の金額にしておくほうが信頼してもらいやすいです。

 

資本剰余金

資本剰余金は「資本準備金」「その他資本剰余金」があります。

 

資本準備金

資本準備金には株主から払い込まれたお金のうち、資本金に入らなかったお金が該当します。

また、その他剰余金から株主に配当を行った場合に積み立てられるお金もあります。

 

その他資本剰余金

その他資本剰余金は資本金や資本準備金を取り崩して発生した剰余金が該当します。

また、自己株式を処分した場合の剰余金もこれに含まれます。

 

利益剰余金

利益剰余金は「利益準備金」と「その他利益剰余金」があります。

 

利益準備金

利益準備金は、「その他利益剰余金」から配当を行った場合に積み立てられるルールがあります。

 

その他利益剰余金

その他利益剰余金は更に分かれて、「任意積立金」と「繰越利益剰余金」があります。

 

任意積立金

株主総会の決議によって任意に積み立てられた剰余金のことです。

 

繰越利益剰余金

繰越利益剰余金は前期の繰り越された利益に当期の利益を加え、利益準備金と任意積立金を除いたお金です。

これまでの利益のお金が積み立てられた感じですね(^^)

繰越利益剰余金は配当の原資となります。

 

自己株式

自己株式とは「自社が発行した株式を、自分で保有しているというもの」です。

株式会社では自社の株式を市場で買い取ることで取得することができます。

 

本来であれば資金調達手段である株式なので、自社が買い取るということは資金が入らないです。

自分で買った場合はマイナス計上されます。

 

「なんで自己株式を取得するの?」って感じですよね(^^;)

自己株式を取得することで市場に出回る株式の数を減少させることができます。

これにより株式の価値を維持することができるので、株価を維持する目的で取得します。

 

新株予約権

新株予約権は「あらかじめ決められた価格で株式を取得できる権利のこと」です。

この権利を持っている人は、権利を行使することで新株を決められた価格で取得することができます。

だいたい有利な条件で株式を取得することができます。

 

新株予約権は資金調達の目的以外にも使われます。

ストックオプション制度や買収防衛策として活用されることもあります。

ストックオプション制度についてのせつめいはこちらからどうぞ!

買収防衛策についての説明はこちらからどうぞ!

 

法定準備金

法定準備金とは「もし将来に大きな損失が発生した時のために、積み立てておくお金」です。

法定準備金には、

  • 資本準備金
  • 利益準備金

が該当します。

法定準備金の積み立てにはルールがあります。詳しくは別の機会で書きます(^^)

 

最後に

今回は貸借対照表の右側である、「負債の部」「純資産の部」の解説をしました。

あらためて項目を解説すると、私も勉強になりました(^^)

 

実は私の実務において、詳しい内容まで駆使することはありません。

診断士試験を受ける皆さんのためにちょっと深堀していこうと思います。

また読んでいただけると嬉しいです!

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