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評価制度の大前提と3つの原則

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こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。

評価制度を作る時に、

「どういったことに注意して作れば良いか」

と相談を受けます。

中小企業では評価制度を導入されていない企業がまだまだあります。

従業員数が20以下の規模であれば、経営者の目が届きますので、ややこしい評価制度を導入しなくても良いです。

しかしそれ以上の規模になると、従業員の意欲を低下させないよう仕組みを入れたほうが良いです。

その時に大前提となることと、3つのポイントについて解説いたします。

 

大前提は「納得性」

まず大前提として考えることは「みんなが納得してくれる制度」です。

評価される側は、評価結果が良くても悪くても、納得しないとそれが不満の原因となります。

私も以前の会社で納得できないことがありました。

人よりも頑張って遅くまで働いて、それなりに成果も出したのに評価は周りとそれほど変わらず‥‥

 

ゆえに、評価方法の納得性を高めることが最重要です。

当たり前ですが、納得性を忘れてしまうことが良くあります。

最先端の評価制度の仕組みを入れたとしても、評価される方が納得できなければ、意欲を向上させることはできません。

逆に考えれば、Excelで作成した評価シートでも納得性があれば十分なのです。

ややこしい仕組みを導入する前に、本当に自社に必要かどうかを検討して見てください(^^)

 

納得性が必要だということはわかりましたが、

「ところで、どうやって納得性を高めるの?」

という問題にぶつかります。

納得性を高めるためには3つのポイントがあります。

次にポイントを解説します。

 

3つのポイント①「公平性」

第1は『公平性の原則』です。

評価は公平に行われるべきということです。

当たり前ですよね(^^)

 

私は実務で評価制度を構築しています。

その中で「評価シート」という、評価の項目や着眼点が記載されたものを作成します。

評価シートには、

「この会社では、従業員にこういった行動をして欲しい」

といった経営者の思いを表現します。

同じ役割で働いている方には、同じ評価項目や着眼点を使用して評価を判定します。

 

また対象の期間についても、公平にします。

例えば、年2回評価する場合は、上期の評価期間を4月から9月の半期を対象とします。

ある人だけそれ以前の大クレームが対象に入るなんてありえないですよね。

しかし、大きな成功や失敗は評価期間の対象外でも影響を及ぼすことがあります。

決められた期間の中で評価を判定することで公平性を保ちます。

 

ちなみに評価項目は「役割」によって違うものを使用します。

パート・一般社員・管理職では役割が違います。

この方たちを同じ評価項目で評価するのは公平ではありません。

パートの方は与えられた仕事をこなすことが多いので、裁量が必要な仕事をすることは難しいです。

例えば、評価の項目に

「自分で考えて改善案を実行する」

があったとします。

この場合、管理職が一番有利です。

一般社員やパートの方は裁量が少ないので、明らかに差がついてしまいます。

よって評価の項目や着眼点は、役割によって変えなければ公平性を保つことができません。

公平性は大事ですが、非常に難しいです。

 

3つのポイント②「客観性」

第2は『客観性の原則』です。

客観的に判断できるように制度を構築することを意識します。

例えば行動評価のようなプロセスを評価する際に、基準を設定します。

判定 評価基準
A 模範的である
B よくできている
C できている
D もう少し努力が必要
E かなりの努力が必要

どういう状態であれば、どのような判定をするのかを評価者同士で目線を合わせます。

判定する尺度が異なれば、評価者によって差異が生じます。

差異を極力少なくするために、決められた基準や項目で評価を実施します。尺度の統一です。

 

しかし評価の基準は評価者で共有ができても、それだけでは客観的な判定を行うのは難しいです。

そこで評価者に対する教育や訓練を行い、尺度の差を少なくします。

評価者の訓練です。

評価者の訓練は、研修という形で2〜3時間行います。

私が実施している評価者訓練では、2つのフェーズで理解を深めます。

  1. 評価制度の内容説明
  2. 評価演習

1つめの「評価制度の内容説明」は評価者にどういった制度であるかや、注意してい欲しいポイントを丁寧に説明していきます。

約1時間ほどかけて説明します。

2つめの評価演習では、実際の従業員さんを模擬評価します。

1.5〜2時間実施します。

 

模擬評価では実際の従業員を想定します。

参加者にはまず個人ごとに判定してみます。

その結果について、評価者の前で発表します。

判定結果だけでなく、判定した根拠についても説明してもらいます。

判定した根拠を言語化してもらうところが非常に重要です。

根拠を言語化して説明できないと、納得性を得られないからです。

 

その後は評価研修に参加しているメンバーで評価について討論します。

他の評価者がどういった根拠を基に判定しているかを聞くことで、自分の判定に役立ててもらいます。

また経営者の考えを聞くことによって、評価者の判定を経営者の判定をすり合わせます。

 

このように研修は概ね3時間かけて行います。

「そんなに時間をかけてしないといけないんですか!?」

という人もいますが、それだけ必要です。

評価の判定は滅多に行いません。

半年に一回行うので、内容を忘れてしまいます。

また評価の判定はその方の給料にも影響しますので責任重大です。

テキトーに判定されたら、たまったもんじゃないですよね(^^;;

ですので、事前に研修を実施して精度を高めなければなりません。

そして精度を高めるためには、理解を深めていただく必要があります。

 

ここからさらに差を少なくする取り組みも随時行っていきます。

それは評価の項目や基準の見直しです。

構築した評価の項目や着眼点は、より現場の仕事ぶりを評価できるものでなくてはいけません。

そのためには、常に修正が必要です。

会社によってはずっと同じ評価項目を使用していることがあります。

しかし1年後、3年後、5年後では会社の経営戦略や業績目標は変化します。

それによって項目や着眼点は変更されるべきです。

 

3つのポイント③「透明性」

第3は『透明性の原則』です。

これは「どのように評価がなされているのかみんなに知ってもらうこと」です。

客観的に評価を行なうために設けた基準や項目を、評価される側に公開します。

 

経営者は「ここで働く人は、こういう行動をして欲しい」という想いがあります。

評価制度では、その想いを評価シートに表現します。

書いている内容は、従業員と共有します。

共有することで経営者の思いと従業員の行動を一致させることができます。

 

これも当たり前のことですが、できていない会社が多いです。

 

もし経営者の思いを公開していないとどういったことが起こるでしょうか?

どういった行動をすればよいかわからない状態で、努力することはムダを生んでしまう可能性があります。

地図のない状態で目的地に向かうような感じです。

従業員さんも会社の維持・繁栄のために、頑張っていくれる人が多いです。

しかし努力が経営者の望む方向と違っている場合、高い評価を得ることができません。

「こんなに頑張っているのに、自分は評価されない( ノД`)シクシク…」

こんな状態では経営者・従業員両方とも幸福になるはずがありません。

 

評価項目の内容を公開することは、その会社の「行動指針」を社内に示すことになります。

単に上司が部下に「がんばれ」と声をかけただけでは、具体的な説明がないので何どうすれば良いかわかりません。

行動指針を具体的な業務に落とし込んで、公開することで、

「会社はこんな行動を期待しているのか」

このように納得感が高まります。

 

また評価シートがあれば、上司と部下の話し合いの場などで活用できます。

私は評価制度で「評価面談」を実施することをおすすめしています。

しかし評価面談で上司と部下が対峙した時に、

「何を話そうかな?」

といった感じで、話すことがなくて困ることが多いです。

評価シートがあれば、できている項目や、できていない項目を話し合うことができます。

評価内容をネタにしながら、コミュニケーションを図ることができるので、社内の活性化につながります。

ちなみに評価面談では、3つ褒めて1つ改善を促す感じで進めていくと良いです。

 

まとめ

今回は評価制度構築で大前提となることと、3つのポイントについて解説しました。

最後にまとめると、

  1. 大前提は「納得できる評価制度」であること
  2. 評価内容や期間を統一する「公平性」
  3. 達成基準を統一する「客観性」
  4. 評価する内容を公開する「透明性」

こういった点を押さえて構築することで、従業員の意欲を向上させる制度を構築することができます。

評価制度は「評価されるってなんかイヤだな」と思う方が多いです。

みんなの意欲をそぐような結果にならないよう、常に修正を加えて適切に評価制度を運用します。

やはり20人以上の組織であれば、意欲を向上させながら、人材を育成するために評価制度を導入するべきです。

評価基準や評価内容は評価者だけが所持するのではなく、評価される側にも公開して日頃の人財育成に活用してください。

 

 

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