コンサル実務 人事制度

間接部門の目標設定①

投稿日:2022年11月20日 更新日:

こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。

以前に目標の必要性と目標管理についてブログを書きました。

なぜ目標が必要か|目標管理の落とし穴と適切な運用

目標管理はさまざまな会社で実践しておりますが、間接部門の目標設定に苦労されています。

今回は具体的な間接部門を取り上げて、具体的な目標設定の事例を紹介します。

今回取り上げるのは、経理部門・総務部門の2部門です。

 

各部門の役割とは

目標設定の具体例を挙げる前に、各部門の役割について触れておきます。

間接部門は直接部門に比べて目に見えた成果が出にくいですが、直接部門が成果を上げるために不可欠な部門です。

あらためてどんな貢献をしているか、どのような能力が必要かを明らかにしておきます。

 

総務部門の役割

総務部門は企業の事務業務や関係部門の管理業務を担っています。

簡単に言うと社内のサポート・調整役です。

ただし総務部門の領域は会社によって大きく異なります。

比較的小規模の会社では総務部門が経理や人事についても兼任していることがありますが、今回は経理や人事は別部門として考えます。

総務部の役割については以下の点が挙げられます。

 

会社の経営戦略の策定・共有

まず挙げられるのが、会社の経営戦略を策定・共有です。

全社的な方向性を決めるためには、さまざまな部門から情報を集める必要があります。

また決定した内容を浸透させるために各部門に共有します。

もし部門間で内容に矛盾が生じる場合には、総務部門が間に入って調整します。

このように総務部門は社内が一つの方向性に向かうよう、情報を集約・発信する役割があります。

 

各部門のサポート

次に各部門が円滑に活動できるよう、サポートを行います。

たとえば営業部門が成果を出せるように社内の情報を整理して提供します。

出張等が必要な際には移動・宿泊の手配などを行います。

また会社に必要な事務用品の手配や、機械の不具合が発生した場合の修理の依頼などもします。

総務部門は社員が気持ちよく仕事ができるよう職場の環境を整える役割があります。

 

社内外の行事運営

社内外で行事等を行う場合、会場の手配や当日の運営を担当します。

会場の手配や参加人数の把握、当日の進行をするためのタイムスケジュールを作成します。

社員の表彰があれば賞状などの手配も必要でしょう。

また社外の関係者を招いてイベントをする場合であれば、関係各所との日程の調整や伝達が必要になってきます。

利害関係者と信頼関係を築くためにも、滞りなく進めることが求められます。

 

このように総務部門では社内外の利害関係者と良好な関係作りや調整を求められます。これらの役割を満たすためには、互いが納得できるように交渉することが必要です。目標を作成する際にはこれらの役割についても念頭に置きましょう。

 

経理部門の役割

続いて経理部門の役割についても確認しておきます。

経理部門は企業内で発生するお金の情報を集約して、記録し、管理・報告する役割があります。

以下に一般的な経理部門の役割を示します。

 

入出金の管理

まず経理部門で重要な役割は現金の入出金管理です。

企業間の取引は掛取引が一般的なので、取引とお金の流れが一致しません。

経費の支払はいつまでにする必要があるのか、取引先からの入金がされているかを把握しておかなくてはいけません。

お金の管理は経営を継続するための重要な要素です。経理部門は非常に重要な役割を担っています。

 

発生した取引の記録と集計

また経理部門は発生した取引を記録する役割があります。

企業において取引はほぼ毎日発生します。

それらの取引を正確に記録・集計して経営層に報告します。

たとえば会社は1年間の経営成績を決算書という形で報告する義務があります。

経理部門は経営者が正しい経営判断を行うために必要な情報を取り扱っています。

 

給与計算

経理部門は従業員に支給する給与を計算しています。

給与支給総額から各種手当、基本給から控除する保険料を計算して支給額を算出します。

勤怠状況の把握も必要です。給与は社員が生活するために必要不可欠なものです。

毎月決まった日に決まった支給額を間違えることなく支給しなければならないため、非常に重要な役割といえます。

 

このように経理部門の業務はミスが発生すると大きな損失が出る可能性があります。

たとえば取引において入金の金額に誤りがあれば、取引先からの信頼が下がるでしょう。

また繰り返しの作業が多いため、効率性を上げることも求められます。

 

各部門の具体例目標例

それぞれの部門の役割について理解してからは、具体的な目標設定事例を挙げていきます。

 

総務部門の具体的目標

総務部門は費用面の管理を担っているため、内部の改善から利益を生むような目標が活動としてよいでしょう。

ただし社内の環境を整える役割を忘れずに取り組んでください。

 

経費削減

まずは経費削減目標が挙げられます。

会社の活動をするとさまざまな費用が必要ですが、売上以上に経費が掛かっていると利益になりません。

経費の使用が適正であるかを見極めて、ムダな経費を抑えることができれば、売上を上げたこととほぼ同じ効果を得ることができます。

ただし経費削減に取り掛かっていくと、次第に削減できる費用がなくなっていきます。

取り組みがそれほど進んでいない場合は、効果が期待できるため前年比○○%削減といった目標で良いですが、維持管理に差し掛かっていくにつれて●●●●万円以内といった目標にするほうが良いでしょう。

また繁閑の差によって経費にも差が出ると思いますので、実績を考慮しながら目標設定していきましょう。

注意点は経費削減を優先するあまりに、直接部門の活動を妨げないことです。

総務部門の役割である職場環境の向上や調整を忘れないようにしましょう。

 

残業時間削減

経費削減と類似していますが、残業時間の削減についても目標として挙げられます。

経費削減と分類した理由は、残業時間の削減が経費の削減よりも従業員の健康を守る側面もあるからです。

注意点は残業時間削減が進んだ場合、社員の給与が減少する可能性があります。

特に残業時間削減に貢献している部門や人ほど給与が少なくなるため、優秀な社員から不満が出る可能性があります。

放置しておくと社員のモチベーション低下につながります。

対処方法としては残業時間の削減ができている部門には賞与等で還元して年収ベースで極端に下がらないような配慮をします。

まずは現状の残業時間を把握して、そこから無理のない範囲で目標を設定しましょう。

 

改善提案

社歴の浅い社員は目標づくりに苦労することが多いので、改善提案件数を目標に掲げると良いでしょう。

実は社内で当たり前になっていることがムダだったと気が付くことがあります。

そういったことはまだ業務になれていない社員が見ることで発見できることがあります。

あくまで提案なので実現については上司と相談します。

提案件数○○件といった具体的な数値で表すと振り返ったときに達成したかどうかを客観的に判断できます。

 

経理部門の具体的目標

次に経理部門について具体的な目標を上げていきます。

経理部門では効率や正確性が高まる目標が考えられます。

 

業務スピードアップ

経理部門の日常業務は繰り返しの作業が多いので、一つのタスクを終了させる時間を短縮することのよって生産性を向上させることができます。

たとえば、伝票処理をスピードアップさせることなどが挙げられます。

また新しいシステムやソフト導入が決まっていれば、スケジュール通りに導入することも目標として掲げることも考えられます。

導入後はそれを活かして業務効率化を目指します。

ただし早いだけで正確性が欠けていては良い仕事とは言えません。

経理部門の役割である正確性を忘れずに取り組んでください。

経理部門に限らず仕事は効率よりも品質が大事であることを念頭に置きましょう。

 

作業標準作成

次に作業標準をつくることが挙げられます。

間接部門はそれぞれの業務内容が見えにくく、自分のやり方で仕事を進めていることがあります。

その結果個人によって業務スピードが異なったり、特定の人にしか業務ができなかったりすることが見受けられます。

属人性になっている業務は、その担当者が長期不在や退職した場合に、業務に混乱を与えます。

そうしたことを防ぐために作業の手順をまとめて共有します。

標準書は誰がやっても同じ品質の仕事ができる重要なツールです。

緊急性は高くありませんが経理部門の正確性を支える重要度の高い内容です。

 

業務の習得

社内業務を習得中の社員には業務の習得自体を目標にすると、達成意欲を高めて習得までの時間を短縮できる効果があります。

たとえば、決算書などの重要書類を独力で作成できるように習得します。

また知識の向上を目指した会計基準や税制のセミナーに参加することも目標として挙げられます。

研修やセミナーは参加の回数を目標設定にすると客観的に判断できます。

また資格取得なども目標設定に入れることも考えられます。

ただし難易度によっては半年で達成できない可能性もありますので、達成できなくてもプロセスを評価するようにしましょう。

 

効果的な目標作成のヒント

最後に目標作成において押さえておいてほしいポイントをいくつか紹介いたします。

 

具体的な目標例を示す

最初に紹介するのは目標の具体例の提示です。

実は多くの会社ではどんなことを目標に掲げるべきかがわからず、部下だけでなく上司も困っています。

その場合、目標の具体的な例を提示してみましょう。

私もある会社で各部門の目標具体例を作成して提示したことがあります。

これにより社員は何を目標に掲げればよいか理解が深まり、目標設定がスムーズになりました。

社員も期待されている内容をなんとなく理解していますが、意外と一致していないことがあります。

誰が見てもわかるように文章化して共有することによって、社員の想いと会社の理想が一致しやすくなりますので、ぜひ具体化することをおすすめします。

 

非現実的な目標にしない

次にミスを0にするといった非現実的な目標は掲げないようにしてください。

よく工場に「不良品ゼロ」と掲げている現場をよく見ますが、残念ながら不良品を完全に防ぐことはできません。

残念ながらヒューマンエラーはどんなに防ごうとしても起こってしまいます。

工場で掲げている不良品ゼロは目標ではなくスローガンです。現状を分析して現実的な目標を設定して下さい。

 

目標の目的を共有する

目標を具体化していくと手段が目的となってしまうこともあります。

たとえば経理部門で挙げた研修・セミナーへの参加ですが、参加回数を目標に掲げた場合、回数を受けることが目的となってしまい、肝心の知識や技術の習得を忘れがちです。

目標を落とし込むことで社歴の浅い社員には伝わりやすくなりますが、何を達成するための目標であるかを上司と部下が事前にすり合わせておきましょう。

 

難しい目標には加点をする

目標の作成を個人に任せると、比較的低めの目標を設定しがちです。

ある会社の経営者から「うちの社員は挑戦しようとする意欲がない」と嘆いておられました。

特に目標の達成度合いと処遇が連動していると、なるべく評価点が出やすい目標をつくりたくなる心情は理解できます。

この場合は難しい目標には加点することを検討しましょう。加点をすることによって社員も難しい業務に挑戦しやすくなります。

社員の挑戦を促すために、高い目標設定に対してメリットがあるよう、仕組みを導入してみましょう。

 

今回は具体的な間接部門を挙げて、役割の再確認と具体的な目標について解説いたしました。

効果的な目標作成は簡単ではありません。上司と部下が何回か打ち合わせを重ねていくことで徐々に良い目標になります。ま

ずは60点ぐらいで良いので、少しずつ進めていきましょう。

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