財務・会計

決算手続の流れ|決算整理仕訳その2(財務・会計)

投稿日:2021年2月3日 更新日:

こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。

前回から引き続き、決算整理仕訳について解説してます。

今回はその2です。

決算整理仕訳その1についてはこちらからどうぞ!

 

決算手続きの流れ

期中の取引に関しては、その都度仕訳を行い総勘定元帳に転記します。

そして期末になると財務諸表を作成するために、決算手続きを行います。

具体的な決算手続きの流れは5つです。

  1. 決算整理前試算表の作成
  2. 決算整理仕訳
  3. 決算整理後試算表の作成
  4. 帳簿の締切り
  5. 貸借対照表・損益計算書の作成

今回は最初の「2.決算整理仕訳」について解説します。

その1と2で決算整理仕訳の代表的なものを紹介します!

 

決算の流れを初めの章から振り返りたい場合は、1.決算整理前試算表の作成からどうぞ!

 

決算整理仕訳とは?

実は期中で行っていた仕訳と総勘定元帳への転記を集計したものを合計しても財務諸表を作成できません。

そこから正確な財務諸表に仕上げていくために修正をする必要があります。

それが「決算整理仕訳」です。

決算整理が必要な項目のことを「決算整理項目」といいます。

代表的なものは以下の通りです。

  • 経過勘定の処理
  • 棚卸資産の処理(売上原価の計算)
  • 貸倒引当金の設定
  • 有価証券の評価替え
  • 固定資産の減価償却
  • 負債性引当金の設定
  • 現金過不足の処理

かなり多いですね(^^;)

ですので1回では全部紹介することができませんでした。

今回はその中で、

  • 貸倒引当金の設定
  • 有価証券の評価替え
  • 固定資産の減価償却
  • 負債性引当金の設定
  • 現金過不足の処理

 

について解説していきます。

 

貸倒引当金の設定

貸倒引当金とは、売掛金や受取手形などの代金が受け取れる債権を持っているうち、将来代金が回収できない「貸し倒れ」を見積もっておくものです。

 

もし取引先が倒産すると、商品やサービスに対する対価が受け取れなくなります。

 

そこで期末の時点で債権(売掛金・受取手形)があれば、決算整理の時にある程度貸倒れを見積もっておき、当期の費用として計上します。

それと同時に貸倒引当金を設定する処理を行います。

これを「貸倒引当金の設定」と呼びます。 

貸倒引当金をあらかじめ設定しておいた場合は、期中に貸倒れ発生した時に貸倒引当金を取崩します。

 

貸倒引当金の設定

貸倒引当金の設定では始めに来期の貸倒額を見積もります。

「いくらで設定するの?」

となりますよね。

将来の貸倒額は正確にはわかりません(^^;)

これは過去の経験値に基づいて計算する感じです。

比率を元に計算することが多いです。

 

ちなにみ法定繰入率というのがあります。

業種によって細かく定められています。

業種別の法定繰入率は以下の通りです。

  • 卸売業・小売業(飲食店等を含む):1000分の10
  • 製造業・電気業・水道業:1000分の8
  • 金融業・保険業:1000分の3
  • 割賦販売小売業:1000分の13
  • サービス業などのその他の業種:1000分の6

これはかなり細かいので、診断士試験では覚える必要がありません。

 

来期の貸倒額を算出したら、貸倒引当金にその貸倒見積額を設定します。

ここで貸倒引当金には、当期の貸倒引当金の残高が残っている場合がありますので、当期の残高に、足りない分を積み立てることになります。

そのための方法として

  • 差額補充法
  • 洗替法

の 2 種類があります。

まあ、プロセスは違いますが最終的には同じ額です。

差額補充法

差額補充方は、来期の見積額と今期の貸倒引当金の差の分だけ追加する方法です。

 

具体的な例で解説します。

来期の貸倒を50と見積もったとします。

当期末時点で貸倒引当金の残高が 20 あった場合、見積額と残高の差額 30を追加しますといった感じです。

単純に考えてください。

このときの仕訳は、

借方 貸方
貸倒引当金繰入額 30 貸倒引当金 30

貸倒引当金は「負債」、貸倒引当金借入額は「費用」に該当します。

費用の増加は「借方」、負債の増加は「貸方」に記載します。

 

洗替法

洗替法は「いったん貸倒引当金の残高を0にしてキレイな状態にしてから、来期の貸倒見積額の全額を設定する方法」です。

 

なんかややこしいですよね(^^;)

先程の例でしたら、20の貸倒引当金を一旦0に戻して、新たに50を繰入れる流れになります。

実際の仕分けはこんな感じです。

借方 貸方
貸倒引当金 20 貸倒引当金戻入益 20
貸倒引当金繰入額 50 貸倒引当金 50

一旦貸倒引当金(負債)をなくすので、借方に記載して帳消しにします。

この時に戻ってくる20は「貸倒引当金戻入益」という収益に仕分けされます。

収益の増加は貸方です。

そしてまっさらになった状態で、新しく設定した貸倒引当金50を記載します。

2つのやり方がありますが、最終的には貸倒引当金が50設定されたところは変わりません。

 

ところでなぜこのようなことをするかですが、会計には費用と収益を対応させなければならないという「費用収益対応の原則」があります。

費用をかけるのは収益を得るためです。

企業間の取引では先に商品やサービスを提供して代金を後で回収する「掛取引」が一般的です。

ですので、前期に売り上げて収益にしていた取引が、相手先が倒産して今期に回収不可能になってしまうことがあります。

事業年度をまたいでしまうと、正確な期間損益の算定ができません。

あらかじめ貸倒引当金を計上しておくことで、当期の費用である「貸倒損失」の発生を防ぐことができます。

 

貸倒引当金の取崩し

次に貸倒れが発生した場合にどのように仕訳をするか解説します。

当期の期中にその見積の元になった債権(売掛金や受取手形)の貸倒れが発生した場合は、設定していた貸倒引当金から取崩しを行います。

 

具体例で説明してみます。

前期の貸倒引当金は20に設定していました。

そして当期の期中に取引先が倒産して、売掛金の30が回収不能になってしまいました。

 

この場合の仕訳はどうなるでしょうか。

設定した貸倒引当金は前期に回収できなくなった債券のためにあります。

ですので回収不能になってしまったら、前期に設定していた貸倒引当金を取り崩します。

しかし10はみ出してしまいますので、これを貸倒損失という費用勘定で処理をします。

借方 貸方
貸倒引当金 20 売掛金 30
貸倒損失 10

貸倒引当金は前期の売り上げた商品・サービスに対して設定しています。

売掛金のうち20の損失に関しては、前期の費用として計上されています。

よって今期の損失には考えません。

貸倒損失の10に関しては、当期の費用として計上します。

このように前期の代金回収による損失を、できるだけ期をまたがないようにしています。

 

ちなみに当期に発生した売掛金などの債権が、貸倒れになった場合は、当期の費用として処理する必要があります。

例えば、当期の売掛金 10 が当期に貸倒れになった場合の仕訳は、

借方 貸方
貸倒損失 10 売掛金 10

少し複雑ですが、貸倒引当金に性質を理解できればわかってきます。

 

有価証券の評価替え

評価替えとは、「有価証券を購入したときの取得原価と期末時点の時価が異なる場合、取得原価を時価に修正すること」です。

有価証券の価値は日々変動しています。

特に売買目的有価証券は期末に価値の変動がないか確認を行い、必要に応じて評価替えを行います。

 

具体例で確認します。

例えば売買目的有価証券を1,000で購入しました。

期末の時価が900になっていました。

100だけ価値が下がっています。

この場合の仕訳は、

借方 貸方
有価証券評価損 100 有価証券 100

このように有価証券(資産)の価値が下がったので、貸方に100を書きます。

有価証券評価損は費用勘定なので、費用の増加は借方です。

有価証券評価損は損益計算書の営業外費用に入ります。

 

逆に有価証券の価値が1,100になった場合は収益がでます。

仕分けは、

借方 貸方
有価証券 100 有価証券評価益 100

有価証券の価値が上がっているので借方に100を計上して資産を増加させます。

有価証券評価益は収益なので、増加した場合は貸方に記載します。

有価証券評価益は損益計算書の営業外収益に該当します。

 

固定資産の減価償却

建物や機械のような有形固定資産は、使用するとだんだんと価値が減少します。

減価償却は「固定資産の購入費用を使用可能期間にわたって、分割して費用計上する会計処理」です。 

現金の流れで考えると、建物を購入すればその年に大きく費用がかかります。

固定資産のような長期にわたって収益獲得に貢献できるものは、購入した時に一気に費用計上するよりも使用年数に応じて分割して費用計上するほうが望ましいと考えられています。

そのために減価償却等処理を行います。

 

減価償却費の計算方法

減価償却の主な計算方法には2つあります。

  • 定額法
  • 定率法

定額法

定額法は「毎年同額の減価償却費を計上する方法」です。

計算式は、

(取得原価-残存価額)÷ 耐用年数

です。

耐用年数とは「その資産の使用可能年数」です。

建物や設備等あらかじめ決められています。

残存価額とは「使用可能年数である耐用年数を過ぎた後に残る価値のこと」です。

取得した価格から最終的に残る価値を引いて等分で割れば、毎年の減価償却費が算出されます。

 

例で挙げたほうがわかりやすいです。

  • 設備の購入価格 1,000
  • 耐用年数 10年
  • 残存価額 10%

この設備の毎期に発生する減価償却費は、

(1,000-100)÷10=90

となります。

 

定率法

定率法「資産の取得原価に一定の償却率を掛けて毎期の減価償却費を計上する方法」です。

計算式は、

(取得原価-減価償却累計額)×償却率

実務においてはもっと複雑なルールがありますが、ここでは基本的な考え方にとどめておきます。

これも例に挙げます。

1,000で購入した設備を償却率20%のの定率法で減価償却を行います。

最初の年では

(1000-0)×0.2=200

です。

翌年は

(1,000-200)×0.2=160

というように、だんだんと減価償却費が小さくなっていくのが特徴です。

 

減価償却費の記帳方法

減価償却費を実際に記帳するには2つのパターンがあります。

  • 直接法:建物・設備の資産に直接引いていく
  • 間接法:取得価格の表示を残したまま「減価償却累計額」という勘定科目に計上していく

どちらも償却額は同じです。

直接法の仕訳

直接法の仕訳は、

借方 貸方
減価償却費 100 設備 100

といった感じになります。

設備は資産なので、価値の減少は貸方(右側)に書きます。

例えば設備の価格が500であれば、価値が100減って「400」になります。

この400を貸借対照表に計上します。

そして価値が減った100は減価償却費(費用)として借方に計上し、損益計算書で処理されます。

 

間接法の仕訳

間接法で仕訳をした場合は次の通りです

借方 貸方
減価償却費 100 減価償却累計額 100

このように減価償却累計額という負債勘定に計上していきます。

例えば設備の価値が500だった場合、貸借対照表にどう表示されるかは、

固定資産

設備 500

減価償却累計額 ▲100

といった感じです。

減価償却累計額は負債項目ですが、資産の部にマイナスで表示されます。

同じく貸倒引当金も負債項目ですが資産の部に表示されているので似ています。

ちなみに下の図は、適当に数値を入れた貸借対照表です。

こちらを見ていただければ、どう表示されているかのイメージがつかめるかと思います。

 

負債性引当金の設定

引当金とは将来の資産の減少に備えるための科目です。

引当金では、当期の負担に属する金額を見積り、その分については当期の費用として計上します。

引当金の種類には

  • 評価性引当金
  • 負債性引当金

があります。

評価性引当金

評価制引当金は「将来の資産価値が一部損失することを予想して、資産から控除される引当金のこと」です。

先ほどの貸倒引当金は、「評価性引当金」に分類されます。

 

負債性引当金

負債制引当金とは「将来の支出に備えた引当金のこと」です。

  • 賞与引当金
  • 退職給付金引当金
  • 修繕引当金

こういった引当金が「負債性引当金」に分類されます。

例えば、当期に退職給付引当金として 200 を計上する場合の仕訳は、

借方 貸方
退職給付費用 200 退職給付引当金 200

「退職給付費用」は当期の費用として処理されます。

「退職給付引当金」は、貸借対照表の負債の部に積み立てられ、将来に退職給付が支払われた場合には取崩しされます。

 

現金過不足の処理

帳簿上に記録されている現金と実際の現金は一致するはずですが、記入漏れ等により一致しないことがあります。

その場合も仕訳を行っていく必要があります。

 

現金過不足の期中の処理

現金過不足の原因がすぐに分かれば本来の仕訳を行います。

しかしすぐには原因が分らないことが多いです。

その場合帳簿上の有高と実際の有高とを一致させるために、とりあえず「現金過不足」勘定で処理しておきます。

そして、後日、その原因が分かった時点で本来の勘定に切り替えます。

具体例を挙げてみます。

帳簿有高 > 実際有高のケース

実際のお金が500少なかった場合です。

原因がすぐにわからなければ、

借方 貸方
現金過不足 500 現金 500

現金が少ないので貸方に記入して資産を減少します。

現金過不足は「仮の勘定科目」です。

後日、現金過不足が「保険料の支払い」だったことが判明しました。

上記の仮の仕訳を処理しなおします。

借方 貸方
支払保険料 500 現金過不足 500

現金過不足を貸方に記載することで、打ち消します。

そして本来の費用である支払保険料を費用計上します。

 

帳簿有高 < 実際有高のケース

逆に実際の現金が多かった場合はどうなるかを解説します。

具体的に現金が1,000多く、すぐには原因がわからなかった場合の処理は、

借方 貸方
現金 1,000 現金過不足 1,000

この不明な現金が、後日「受取手数料」だったことが判明しました。

借方 貸方
現金過不足 1,000 受取手数料 1,000

貸方に仕分けしていた現金過不足を借方に記載することで0にします。

そして本来の収益であった、受取手数料を計上します。

 

現金過不足の決算時の処理

次に「結局期末になっても原因がわからなかった場合の仕訳」を解説します。

期末において、現金過不足の原因が分からなかった場合は、

  • 実際のお金がすくなければ「雑損」(費用)
  • 逆に多ければ「雑益」(収益)

という勘定で処理します。

帳簿有高 > 実際有高のケース

先ほどの例と同様に、実際のお金が500少なかった場合です。

期中に行う仕訳は、

借方 貸方
現金過不足 500 現金 500

これは同じです。

調査したものの結局突き止めることができなかった場合は、

借方 貸方
雑損 500 現金過不足 500

雑損は「費用勘定」です。

 

帳簿有高 < 実際有高のケース

逆に実際の現金が1,000多かった場合はどうなるでしょうか?

仕訳はひとまず一緒です。

借方 貸方
現金 1,000 現金過不足 1,000

この不明な現金が、結局期末になってもわからなかった場合は「雑益」として仕訳をします。

借方 貸方
現金過不足 1,000 雑益 1,000

雑益は「収益勘定」です。

 

最後に

2回にわたって決算整理仕訳の代表的なものを解説しました。

その時は理解してても、しばらくすると「何だったけ?」となることが多いです(^^;)

ですので、問題を解いたりして知識の定着を行っていただくとよいです。

診断士で登場した過去問を紹介したいのですが、なかなかそこまで書けなくて申し訳なく思っています。

ただ、どんどん解説を書いて網羅できるように頑張ります!

次回は決算処理の

  • 決算整理後試算表の作成
  • 帳簿の締切り
  • 貸借対照表・損益計算書の作成

このあたりをサラッと書いていきたいと思います。

診断士試験は範囲が広いので、「浅く広く」をモットーにどんどん進んでいったほうが良いです。

後ろ髪を引かれる思いをしますが、とりあえず一周目指してがんばりましょう(^^)

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