こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
前回までは、原価の概要などについて解説しました。
今回からは実際に原価を計算する方法を解説します。
特に個別原価計算について解説していきます。
原価計算の方法は「個別」と「総合」
原価計算方法は、製品の種類や目的によって様々です。
基本的な原価計算の方法は、
- 個別原価計算
- 総合原価計算
があります。
個別原価計算は、「個別の製品ごとに原価計算をする方法」です。
例えば、特注の機械や船舶などを個別の注文ごとに生産する受注生産形態で採用される方法です。
割と大規模なものや値段が高いものに使用されます。
個別原価計算では製品ごとに原価を計算しますので、同じ機械でも原価が違います。
総合原価計算は、「大量生産形態で採用される原価計算の方法」です。
総合原価計算では、1 ヶ月単位に発生した原価を集計し、それを生産量で割ります。
そうすることで製品あたりの原価を計算します。
総合原価計算はまとめて計算しますので、1 ヶ月間の製品原価は同じ値です。
実際に具体的な方法を解説します。
個別原価計算とは
個別原価計算は、「製品ごとに個別で原価を計算する方法」です。
個別原価計算の方法は、
- 製造直接費は「賦課」
- 製造間接費は「配賦」
です。
個別原価計算では、顧客からの注文ごとに製造指図書を発行します。
製造指図書には、製造指図書 No.が付けられ、この単位で原価を集計します。
まず製造直接費については、「製造指図書に直接賦課」します。
賦課というのは、かかった費用を直接製品に負担させるということです。
また、製造間接費については、合理的な基準に従って各製造指図書に配賦します。
配賦というのは、全体の費用を、ある基準で各製造指図書に割り振ることです。
この基準のことを配賦基準と呼びます。
具体例による計算事例
実際に数値を使って説明した方がわかりやすいので、ここからは具体例で解説します。
ある工場の当月に発生して全体の原価を表に示します。
当期発生の製造直接費一覧 | ||
項目 | 消費 | 金額 |
直接材料費 | 400㎏ | 400,000円 |
直接労務費 | 200h | 240,000円 |
直接経費 | – | 0円 |
当期発生の製造間接費一覧 | |
間接材料費 | 50,000円 |
間接労務費 | 100,000円 |
間接経費 | 50,000円 |
直接材料費と直接労務費の単価を求めることができます。
直接材料費は400,000円÷400㎏=1,000円/㎏です。
直接労務費は240,000円÷200h=1,200円/hです。
これらの単価は賦課するときに使用します。
次にある製品Aの原価を求めてみます。
データは以下の通りです。
製造指図書 No.1 | |
項目 | 消費 |
直接材料費 | 100㎏ |
直接労務費 | 100h |
直接経費 | 発生なし |
間接費(材料・労務・経費) | 直接材料費基準で配賦 |
覚えておくことは、
- 直接費は「賦課」
- 間接費は「配賦」
です。
製造直接費
まず、当月に工場で発生した原価のうち、製造直接費については消費量を元に、製造指図書に賦課していきます。
この例では、製造指図書 No.1 に賦課をしています。直接材料費は工場全体の 400Kg のうち 100Kg 分を消費しました。
また、直接労務費は工場全体の 200hのうち 100h 分を消費しています。
消費量に単価をかければ計算することができます。
実際に計算してみましょう。
直接材料費=100㎏×1,000円/㎏=100,000円
直接労務費=100h×1,200円/h=120,000円
直接経費は今回は省略します。
つまり製造直接費は、
直接材料費100,000円+直接労務費120,000円=220,000円
です。
製造間接費
製造間接費については、何らかの配賦基準を使って計算します。
試験問題には材料の使用料や労働時間など何を基準にするか書いています。
今回は、直接材料の使用量が配賦基準です。
これは材料をどれだけ使ったかの割合に応じて間接費を割り当てるということです。
間接費は材料費・労務費・経費を合計します。
よって製造間接費は、
間接材料費50,000円+間接労務費100,000円+間接経費50,000円
=200,000円
となります。
ここから単価を計算します。
製造間接費の合計を、直接材料の総消費量で割ることで配賦率がわかります。
つまり、
間接費単価=200,000円÷400㎏=500円/㎏
よって、製造指図書 No.1 に配賦する額は、
製造指図書 No.1 の間接費=単価500円/㎏×直接材料使用料100Kg=50,000 円
となります。
ここまで計算すれば、製造指図書No.1の原価がわかります。
つまり、直接費と間接費を合計すればよいだけです。
製造指図書 No.1 の製造費用=
直接費220,000円+間接費50,000円=270,000 円
であることがわかります。
個別原価計算では製造指図書がいくつか登場します。
出題としては下図のような形が多いです。
ここでは製造指図書は3つあります。
これを合計したものが「当期総製造費用」です。
図で言うと840,000円です。
ちなみに出題は穴埋め問題になっていることがあります。
材料消費量や労務時間、経費の配賦基準等が示されているので、そのヒントを基に計算していきます。
「これで当期の製造原価を求められた」
と思ったら大間違いです(^^)
製造原価は完成品に対してのみ発生します。
全部完成していれば当期総製造費用と当期製造原価は等しいですが、中小企業診断士試験ではこの中で「未完成品」を入れてきます。
次に当期総製造費用から当期製造原価の求め方を説明します。
当期製品製造原価の計算
では当期製品製造原価を求めていきます。
図のように、他の製造指図書 No.2 と No.3 を含めて、原価計算表の総括表を作成します。
ここで、製造指図書 No.3 だけは、月末に未完成の状態でした。
未完成のものは仕掛品となりますので、製造原価から除去する必要があります。
また、この例では期首の仕掛品は無いものとします。
そうすると、製造原価報告書には、製造指図書 No.3 の製造費用が期末仕掛品として計上されます。
よって、当期製品製造原価は、3 つの製品の製造費用から、期末仕掛品をマイナスする必要がります。
このように、個別原価計算では、未完成の仕掛品に注意する必要があります。
具体例による計算事例
製造原価報告書の解説ブログで使用した図表を活用します。
期首仕掛品は0です。
当期製造費用は合計額の840,000円です。
期末仕掛品は製造指図書No.3が未完成品なので290,000円です。
当期製品製造原価は「期首仕掛品+当期製造費用ー期末仕掛品」で求められます。
つまり⑨の当期製品製造原価は
期首仕掛品0円+当期製造費用840,000円ー期末仕掛品290,000円=550,000円
製造原価については下記のブログも参考になります。
最後に
今回は製造原価の計算方法「個別原価計算」について解説しました。
最後に大事なポイントをまとめると、
個別原価計算は、「製品ごとに個別で原価を計算する方法」
個別原価計算の方法は、
- 製造直接費は「賦課」
- 製造間接費は「配賦」
当期製品製造原価=期首仕掛品+当期製造費用ー期末仕掛品
です。
個別原価計算では穴埋め問題が出題されます。
落ち着いて考えれば、それほど難しくありません。
過去問を解いて準備しておけば大丈夫です。
次回は「総合原価計算」について解説します。
最後まで読んでいただき、誠にありがとうございます!
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