企業経営理論

標的市場決定プロセス|STPについて(企業経営理論)

投稿日:2020年12月30日 更新日:

こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。

 

今回は標的市場をどのように選定するか解説します。

つまりターゲットをどの市場にするか決めます。

マーケティングでは消費者のニーズや競合の状況、自社の強みなどを分析ます。

そして標的となる市場を選定します。


なぜ標的市場を選定するかは、限られた経営資源を集中させるためです。

いろんな市場にアプローチすると経営資源が分散してしまい、思ったような成果を上げることができません。

 

標的を選定するプロセスは3つです。

  1. セグメンテーション:市場を細分化
  2. ターゲッティング:標的セグメントを決める
  3. ポジショニング:差別化できる位置を決める

セグメンテーション(Segmentation)、ターゲッティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の頭文字をとって

STP分析とも言います。

もう少し詳しく解説します。

 

セグメンテーション

セグメンテーションとは、市場をいろんな基準に細分化することです。

細分化した市場に対して、どのようにアプローチするかを考えます。

細分化することによって、より効率的かつ効果のあるマーケティングを行うことができます。

 

細分化の基準

細分化の基準はいろんな考え方ができます。

主に5つあります。

  • 地理的基準(ジオグラフィック)
  • 人口統計的基準(デモグラフィック)
  • 心理的基準(サイコグラフィック)
  • 社会・経済的基準
  • 行動変数基準

地理的基準(ジオグラフィック)

地理的基準は「地域や気候などの基準で市場を細分化すること」です。

英語で言うと「ジオグラフィック」といいます。

地域別で限定の商品を発売したり、気候によって商品を企画したりします。

 

人口統計的基準(デモグラフィック)

人口統計的基準は「年齢や性別、家族構成などで市場を細分化すること」です。

例えば10代の女性向けといった感じで細分化します。

英語で言うと「デモグラフィック」といいます。

最近はニーズが多様化していますので、年齢や性別で区切っても商品を企画しづらくなってきました。

 

心理的基準(サイコグラフィック)

心理的基準は消費者の価値観や志向、ライフスタイルなど心理の部分で細分化します。

英語では「サイコグラフィック」といいます。

例えば感染症が増えてきて出かけるよりも、家で過ごす時間が増えています。

そういった生活スタイルに合わせて商品を開発します。

 

社会・経済的基準

社会・経済的基準は「職業や所得、学歴等で市場を細分化する」ということです。

例えば職業では会社に勤める以外にフリーランスとして活動する方が増えてきました。

自由な時間に仕事をする方に向けてニーズを掘り下げて商品を開発します。

 

また、所得の多さによっても選ぶ商品は変わってきます。

例えば品質が高めの商品を開発して高所得者を狙うような感じです。

 

行動変数基準

行動基準変数は商品に対する知識や反応などで細分化することです。

商品の使用頻度や使用することで得られる価値、購入する状況などです。

行動変数の具体例は、頻繁に購入する層、使用することで爽快感を得たい層、商品を詳しく調べて買う層といった感じです。

 

市場細分化の条件

細分化の条件はいろいろあります。

実際にはこれら細分化の基準を組み合わせて絞り込んでいきます。

その時に忘れてはいけないのが、意味のある細分化にしなくてはいけません。

細分化には要件があります。

要件や以下の5つです。

  • 測定可能性
  • 到達可能性
  • 持続可能性(利益確保)または維持可能性
  • 差別化可能性
  • 実行可能性

それらを解説いたします。

測定可能性

測定可能性は「市場が定量的に把握できること」です。

市場の規模などが測定できなければいけません。

 

到達可能性

到達可能性は「細分化した市場にアプローチできるか」ということです。

細分化した市場に対して商品の存在をアピールできないことには成功しません。

 

持続可能性(利益確保)または維持可能性

持続可能性は「十分に利益を確保することができるか」ということです。

当たり前ですが、事業を持続していくためには「利益」が必要です。

それを得ることができなければ、他の利益確保できる事業に力を入れたほうが良いです。

 

差別化可能性

差別化可能性は「ほかの市場と異なるニーズを持つなどの区別ができる」ということです。

他とは違うニーズを持っているからこそ、その市場に対して求められる商品を開発します。

 

実行可能性

実行可能性は「その市場を惹きつけるマーケティングを実行できるか」ということです。

ターゲットした市場に対して実際に戦略を実行できないといけません。

 

ターゲッティング

セグメンテーションを行った後はターゲッティングを実行します。

ターゲッティングではその市場に対してアプローチするかを決定します。

どこにアプローチするかは、セグメント別で魅力があるかを検討します。

標的市場の決定には以下の3つがあります。

  • 無差別型マーケティング
  • 差別型マーケティング
  • 集中型マーケティング

これらはどれが一番優れているというわけではありません。

それぞれにはメリット・デメリットがあります。

 

無差別型マーケティング

無差別型マーケティングでは細分化した市場の考慮せず、全体に単一のマーケティング・ミックスを展開します。

一言で言うと「マス・マーケティング」です。

「標的市場をセグメント化した意味は何だったのか!?」

ってなりますが、広く受け入れられる商品であればセグメント別に展開しなくても良いです。

 

無差別型マーケティングのメリット

やはり単一のマーケティング・ミックスはコストが比較的安いです。

全体に対して単一のアプローチなので、細かい調整をしなくても良いので調整コストもかかりません。

社内の行動も統制しやすいです。

 

無差別型マーケティングデメリット

デメリットはさまざまなニーズに対して細かいアプローチができないことです。

消費者のニーズが多様化している現在では、単一のアプローチでは高い満足度を与えることができません。

全体に受け入れられるために、尖った商品を開発することが難しいです。

特徴を出すことが難しいので、他の特徴的な商品に負けてしまう可能性があります。

 

差別型マーケティング

差別化マーケティングは、細分化した市場に対して別々のマーケティング・ミックスを展開します。

別の言い方をすると「フルライン戦略」です。

大規模の大きい会社が行っていることが多いです。

日本のリーダー企業であるTOYOTAはこの戦略を取っています。

どんなニーズにも応えることができるように幅広い車種を開発しています。

それぞれのニーズに対してCMなどのプロモーションもしっかり行っています。

 

差別型マーケティングのメリット

無差別型マーケティングのメリットはそれぞれの市場に対して適切なマーケティングを実行できるので売り上げが最も多いです。

無差別型と違い、多様化したニーズに対応しています。

お客さんの満足度も高いです。

 

無差別型マーケティングのデメリット

無差別型マーケティングのデメリットはコストがかかることです。

それぞれのニーズに対してアプローチを合わせることは良いことですが、いろんなプロジェクトを統制する必要があります。

またニーズが重なってカニバリゼーション(共食い)状態にならないよう調整する必要があります。

高度な管理能力が必要ですので、無差別型よりも膨大なコストがかかります。

ですので、資本力の大きい会社でないと展開することができません。

 

集中型マーケティング

集中型マーケティングは特定のセグメントに絞って経営資源を集中させてマーケティング・ミックスを展開することです。

中小企業ではこのような戦略を取ることが多いです。

 

集中型マーケティングメリット

集中型マーケティングは経営資源を集中させることができます。

限られた経営資源を有効活用するためには、単一市場にアプローチしたほうが良いです。

 

集中型マーケティングデメリット

その反面集中型マーケティングはリスク分散できません。

もし市場に受け入れられなかったら利益を得ることができません。

差別化型マーケティングは、一つの市場がうまくいかなくても他の市場があります。

撤退することもできます。

集中型はかなりの経営資源を単一市場に投入しているので、ダメだった時に会社が傾く可能性があります。

 

ポジショニング

ターゲッティングにおいては3つのアプローチを紹介しました。

中小企業が99%を占める状況を考えると、実際には「集中型マーケティング」が採用されることがほとんどです。

その場合のリスクを回避するためには市場に対して自社が競争優位を築くことができるようにしなければなりません。

ポジショニングでは選択した市場でどのような競争優位を築くかを考える方法です。

 

消費者に商品を買ってもらうためには、魅力的に感じてもらわないといけません。

と同時に、競合他社がすでに販売している商品と同じようなものでは優位に立つことは難しいでしょう。

 

そこでポジショニングを決めていきます。

ポジショニングでは競合がどのようなアプローチで商品を販売しているかを分析します。

そして自社が他の商品とは違ったマーケティングでアプローチして競争優位を築いていきます。

例えば下記のような図で分析ます。

これは「ポジショニング・マップ」と呼ばれるものです。

このように分析することで視覚的にわかりやすくすることができます。

2軸に関しては商品の特性をまとめることができるように決めていきます。

一般的には「価格帯」が入ることが多いです。

例に関してはもう一つの軸として「デザイン性」と「機能性」を採用しています。

このポジショニング・マップでは洋服やパソコンなどが該当します。

 

他社がいないような場所を狙ってポジショニングすることで差別化を図ることができます。

また自社においても自分の商品とポジションがかぶらないようにすることも重要です。

特にフルライン戦略を取っている会社であれば「カニバリゼーション」が起こります。

カニバリゼーションとは「共食い」という意味です。

自社の製品同士で売上を奪い合っている状態のことを指します。

新商品を投入したものの、既存商品と位置がかぶっている場合どうなるでしょうか?

新商品の売上が増加したと同時に既存商品の売り上げが落ち込む可能性があります。

結局トータルの売上が変わらない可能性も十分考えられます。

 

それを回避するためにはポジショニング・マップで自社の商品とい続けがかぶっていないかをあらかじめ分析しておきます。

そうすることで売上を奪い合うことがないようにします。

 

まとめ

今回は標的市場をどのように決めていくかを解説しました。

標的市場選定の方法

  1. セグメンテーション:市場を細分化
  2. ターゲッティング:標的セグメントを決める
  3. ポジショニング:差別化できる位置を決める

セグメンテーションの基準は

  • 地理的基準(ジオグラフィック)
  • 人口統計的基準(デモグラフィック)
  • 心理的基準(サイコグラフィック)
  • 社会・経済的基準
  • 行動変数基準

細分化の要件は

  • 測定可能性
  • 到達可能性
  • 持続可能性(利益確保)または維持可能性
  • 差別化可能性
  • 実行可能性

ターゲットのアプローチは

  • 無差別型マーケティング
  • 差別型マーケティング
  • 集中型マーケティング

ポジショニング方法

  • ポジショニング・マップで見える化
  • カニバリゼーションに注意

 

私はこのブログで中小企業診断士試験のことを書いています。

ここに書いてあるマーケティングは戦略を考える時に非常に重要なことです。

考えることは面倒ですが、このようなことを深く考えることで差別ができる優れた商品が生まれます。

正解があるわけではないので難しいですが、ぜひ実践してください。

 

私が使用したテキストと批評

中小企業診断士試験のためにさまざまなテキストや参考書を揃えました。

中には役に立ったものやそうでもないもいろいろありました。

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良ければ参考にしてください。

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