企業経営理論

組織の運営について(企業経営理論)

投稿日:2020年11月23日 更新日:

こんにちは!中小企業診断士試験のカズユキです。

最近は組織について何回かに分けて解説をしています。

今回は組織の運営について解説しています。

 

組織のライフサイクル

組織には誕生してから成熟していく段階があります。

製品ライフサイクルに近いものです。

また、次の段階に必要とされるものが違います。

どういったことが必要かは試験でも出題されます。

 

組織のライフサイクルは以下の4段階です。

  • 起業家段階
  • 共同体段階
  • 公式化段階
  • 精巧化段階

では解説しています。

 

起業家段階

組織の誕生段階は「起業化段階」といいます。

立ち上がったばかりなので、管理活動は必要とされていません。

組織が次の段階に必要なものは「起業家のリーダーシップ」です。

どういった価値を誰に提供するか、情熱が必要です。

 

共同体段階

事業が軌道に乗り始めると、企業か一人では対応することができなくなってきます。

単なる起業家のリーダーシップだけでは事業を継続することができません。

 

そこで一緒に協力してくれる仲間が必要になってきます。

仲間が増えてくると、内部の統制をとる必要があります。

この段階では管理活動が必要です。

そのために管理ができる体制を整備していきます。

 

この段階では起業家は徐々に繰り返しの仕事などの日常業務をまかせていきます。

つまり「権限移譲」が必要です。

組織の設計原則であった「例外の原則」を実施します。

起業家は権限を委譲していき、例外的な重要な決定事項に集中します。

 

公式化段階

共同体段階を超えると次は「公式化段階」です。

この段階では仕事を管理する仕組みが作られています。

組織が階層化されていますので、重要度に応じてどこで決済するかも決まります。

 

規則や手続きなどの整備がされているので、官僚的な組織になっています。

官僚的な組織になること自体は悪くはありません。

管理ができる仕組みが整っているということです。

 

官僚化が進み過ぎると問題も発生します。

組織を守ることが目的になってしまう状態です。

これを「官僚の逆機能」といいます。

この状態では環境の変化に対応することが難しくなります。

組織が硬直化した状態を克服するための対策が必要です。

 

組織が環境に対して柔軟に対応するためには、

組織の階層をあえてフラットにして指揮命令系統をシンプルにする。

各部署からメンバーを集めてプロジェクトチームを作る。

社内で情報を共有できるよう、部門を超えたミーティングやコミュニケーションなどを行う。

 

このようなことは組織的に行わないといけません。

誰かが声を上げて行うボトムアップよりも、トップダウンで実行することで機会を作ることができます。

ただしこういった今までにない取り組みは、参加メンバーが目的を共有していなくてはいけません。

最初はうまくいかなくても継続していくことで目的が浸透してすこしずつ改善していきます。

 

精巧化段階

組織のライフサイクルの最終段階になると管理の仕組みと環境への対応ができる非常に優れた組織が完成します。

この段階を「精巧化段階」といいます。

組織のメンバーは分業を行いながらも、他部署など横の連携を調整することができます。

この段階で必要なのは、企業の存在意義を再確認することです。

起業家段階で語られていた「企業理念」を再度浸透させる必要があります。

 

企業の使命が何なのかを見つめなおして、再活性化をします。

一人一人が企業の存在意義や、あるべき姿を供することで、自覚を持って仕事に取り組んでくれます。

管理者の意識が向上すると、起業化がわざわざ指示を出さなくても会社が適正に運営されていきます。

 

このような状況になると、例外の原則がよりしっかり行われます。

起業家にとっては会社運営がしやするなります。

 

官僚の逆機能

ここで公式化段階で登場した「官僚の逆機能」について解説します。

 

官僚の逆機能は企業の目標を達成するために作られた制度や規則が、次第に規則を守ることが目的となってしまうことです。

手段が目的化することで、目標達成の弊害となってしまいます。

 

具体的にどのような状態になっているか例を挙げます。

 

セクショナリズム

自分の所属している部署の利益を優先するあまり、全体最適化ができていない状態

 

形式主義

内容よりも形式にこだわってしまっている状態

 

規則万能主義

現状の課題に対して、規則や前例がないので対応できないと考えてしまう状態

 

事なかれ主義

解決しなければならない課題があるが、関わろうとせずに放置する状態

 

繫文縟礼(はんぶんじょくれい)

規則が細かすぎて非効率になっている状態

 

目的置換

規則や手続きを守ることが目的になってしまっている状態

 

 

こうやって挙げてみるとどこの会社でもありますね(^^;)

組織の会メンバーになるにつれて全体最適化の目線が不足していますので、管理者がしっかり説明して統制を取らなくてはいけません。

課題に対しても放置するような状態は進捗管理ができていない証拠です。

一気に解決することは難しいですが、すこしずつ進めながら解決していくことで目標達成につながります。

 

環境変化へどう対応するか

組織は常に外部環境の影響を受けます。

それに対応する唯一の組織形態はありません。

つまり状況によって最適な組織形態は違うということです。

 

どのような状況でどのような組織形態が向いているかの説明として、「組織のコンティンジェンシー理論」があります。

 

組織のコンティンジェンシー理論

バーンズとストーカーが提唱した組織のコンティンジェンシー理論では、

  • 安定した産業では官僚的組織
  • 不安定な産業においては柔軟な組織

これらが向いています。

まあ当たり前のこと言っているだけです(^^)

またローレンスとローシュも組織のコンティンジェンシー理論について指摘しています。

それは、不安定な環境に置かれている組織は「分化と統合」の必要だということです。

 

分化により「分業」をすることで、それぞれの部門が専門性を追求します。

しかしこの場合、部門間のセクショナリズムが発生します。

それを全体最適ができる高度な統合をすることで、業績を向上することができます。

組織間のコンフリクト(対立・軋轢)解決が業績向上のカギです。

 

不確実に対応するために必要なことは

企業の未来は常に不確実です。

安定しているように見えて、急に環境が変化します。

ここでは遠くに見通しが悪い場合にどうすべきかを解説します。

 

変化がしやすい外部環境では、大量に情報を処理する必要があります。

大量の情報を処理するには時間も労力もかかります。

時間をかけてしまうと変化についていくことができなくなります。

その場合どうすべきか4つを例に挙げています。

組織スラックを活用する

組織スラックというのは「余剰資源」という意味です。

組織の余剰資源とは、余っている人員や設備、生産の余剰時間、内部留保などです。

組織スラックを活用すると情報処理を分担することができます。

 

自己完結型組織の構築

自己完結型組織とは名前の通り仕事を最後まで完遂する組織のことです。

例えば新しい課題が顕在化した時には、それに対応するためにチームを新しく構築するようなことです。

既存の組織と調整することなく課題にあたることができるので、調整する時間や手間を減らすことができます。

 

横断的な組織構築

横断的組織は部署を越えて活動するような役割を作ることです。

営業と製造では与えられている仕事内容や設定される目標が違います。

ただし「企業を存続させる」という大きな目標に関しては、部署が違えど同じです。

その時にセクショナリズムが発生しないように、各部門をまたがって調整する役割があると情報共有がスムーズになります。

外部のコンサルタントは、ファシリテーターの役割にもなってくれます。

内部の人間だけでは対立することがありますが、外部の人間が調整すると驚くほど簡単に解決することもあります。

 

情報処理システムを強化

これはそのままの意味です。

設備や新しい仕組みを導入することで、情報処理を早くすることで環境対応を行います。

繰り返しの作業に対する生産性が上がると、新しい仕事に対応することができます。

また今までよりも情報共有が簡単にできる仕組みやサービスを導入することで、情報伝達が早くなります。

 

組織スラックのメリット4つ

組織スラックは余剰資源ですが、持っておくことによりメリットがあります。

ステークホルダーをつなぎとめる

組織に従業員をつなぎとめるには、従業員の貢献よりも魅力的な誘因を生み出し続けることが必要です。

組織スラックがあればその誘因を生み出すことができます。

また、、株主・債権者・取引企業・顧客など、他のステークホルダーについても誘因を生み出せます。

 

対立解消ができる

企業内外で発生する問題は多くの経営資源を必要とします。

その時に組織スラックは問題解決の経営資源として使用することができます。

 

急な対応や柔軟な対応ができる

原材料や製品の在庫が多いことで急な対応ができます。

原材料が急に入荷ができなくなっても、しばらくは製品の安定供給ができます。

また急な受注があっても、在庫があればすぐに対応することができます。

こういった在庫が多いとキャッシュフローが悪化する別の問題があります。

しかし豊富な経営資源は機動力が向上します。

 

イノベーションの促進

組織スラックを活用することによって新たな革新を生むことができます。

新しいプロジェクトを立ち上げて、新たな事業の柱を作ることも可能です。

経営資源が豊富にあることで、次の環境に対応する準備ができます。

 

ここまでメリットを説明しました。

しかし中小企業では余剰資源を持っている余裕がほとんどありません。

そんな余剰資源があるなら、有効に使わないといけませんね(^^)

しかしよくよく考えると、使っていない遊休設備やスペースがあったりします。

整理整頓ができていないので、わざわざ遠くまで取りに行ったり探したりしています。

5S活動でいらないものを整理すると有効活用できる可能性が高くなります。

実はもったいないことをしている可能性がありますので、あらためて組織全体で考える必要があります。

 

組織間関係論

組織を運営していくためには外部環境とのかかわりが重要です。

あまり依存しすぎると、立場が弱くなります。

また取引の条件によっては、外注するか内製化するかも考えないといけません。

そういった関係を解説します。

 

組織依存モデル

組織依存モデル外部環境によって自分たちの自由が制約されてしまう状況のことです。

組織運営を行うと必ず外部との接触は避けられません。

例えば部品や材料の購入、製品の仕入れなどです。

 

この関係が依存しているほどに自分たちが進めたいように事業を運営することができなくなります。

例えば日本は資源が少ないので、外国から資源を仕入れて製品を作っています。

もし資源を売ってくれないとどうなるか・・・当然製品を作ることができなくなり経済活動を行うことができなくなります。

このような関係が外部に依存している状態です。

 

ではどのような時に依存度が高くなるか?

以下にまとめてみました。

  1. 企業にとってその資源の重要度が高い
  2. 外部の企業のパワーが強い
  3. 資源の集中度が高い

1は主要な部品や資源になるほど依存度が高くなります。

2は取引先から技術指導などのコンサルタントを受けたり、社外取締役を送り込まれていると依存度が高くなります。

3は資源の調達先が1社に集中すると、依存度が高くなります。

 

外部の依存度が高いと自分たちの事業を自由に進めることができないので、依存度をうまくコントロールする必要があります。

つまり依存度のマネジメントすることが必要です。

ではどのようにマネジメントしていくかですが、方向性は2つです。

  1. 依存度を回避する
  2. 依存度をコントロールする

まず1の依存度を回避するには、代替品を見つけることです。

そうするとその資源の重要度を下げることができます。

また取引先を多角化することです。

分散して取引を行うことで、ある会社からの依存度を下げることができます。

 

これらは口で言うのは簡単ですが、代替品の品質が担保されているか調査しなくてはなりません。

特に重要は資源は、自分たちの製品の品質に直接的に影響が出ます。

 

また、取引先を多角化すると管理費用が向上します。

注文するときにミスが生じることもあるので、社内から1社に集中するほうが楽だという批判が考えられます。

このようなデメリットも考えなくてはいけません。

 

また2に関しては外部企業と強調することで、自分たちの裁量度を挙げていきます。

第3者からの外部組織を操作することも一つの方法です。

このように依存度自体は変えられなくても、自社のペースに巻き込むような政治的アプローチもあります。

 

取引コストアプローチ

取引コストアプローチとは「取引をするときにかかるコストがどれくらいかを算出して、外部委託するか内製化するかを考える方法」です。

例えば、M&Aは内部に取り込む方法です。

またOEMは外部に委託する方法です。

当然コストがかからないよう意思決定します。

 

では取引コストはどのように考えていくのでしょうか?

主に3つの段階でコストがかかります。

  1. 取引相手を探すコスト
  2. お互いの条件を話し合いながら契約するコスト
  3. 契約通りに実行されているか監視するコスト

自分たちが欲しい資源を持っている企業を探して、価格やロットなどの条件を折衝して契約、そして契約通りに実行されているかチェックします。

 

もし取引コストが高い場合はどうするか・・・その場合は内部に取り込むことを検討します。

仕入れ先を買収することで、契約や監視のコストを削減することができます。

ただし内部のチェックは外部よりも甘くなりがちなので、市場よりもコストがかかっていないかはチェックする必要があります。

 

逆に取引コストが安い場合は、外部にアウトソーシングします。

アウトソーシングすることで他の業務に集中することができます。

何でもかんでも内製化すると経営資源が分散してしまします。

中小企業は経営資源が限られていますので、うまくアウトソーシングを活用していく必要があります。

 

今回のまとめ

今回は組織の運営について解説しました。

ようやく組織の話は終わりました。

中小企業診断士試験では度々出題される重要なテーマですので、しっかり対策しておいてください。

 

最後に今回の解説をまとめると、

  • 組織のライフサイクルは4段階「起業家段階」「共同体段階」「公式化段階」「精巧化段階」
  • 組織のコンティンジェンシー理論では、「安定した産業では官僚的組織」「不安定な産業においては柔軟な組織」
  • ローレンスとローシュのコンティンジェンシー理論は「不安定な環境に置かれている組織は分化と統合が必要」
  • 組織スラックのメリット4つ「ステークホルダーをつなぎとめる」「対立解消ができる」「急な対応や柔軟な対応ができる」「イノベーションの促進」
  • 組織依存モデルの依存度が高くなる要因は「企業にとってその資源の重要度が高い」「外部の企業のパワーが強い」「資源の集中度が高い」
  • 依存度のマネジメントは2つ「依存度を回避する」「依存度をコントロールする」
  • 取引コストアプローチとは「取引をするときにかかるコストがどれくらいかを算出して、外部委託するか内製化するかを考える方法」です。

多すぎてまとめきれませーん(^^;)

このように組織論はそれだけで論文が書けるくらいのボリュームがあります。

まだまだ組織論は続きますので、よろしくお願いします(^^)

試験対策ではそこまで掘り下げると間に合いませんので、細かいところはいったん置いといて先に進んできましょう

今回はちょっと長かったですが、最後まで読んでいただき誠にありがとうございます!

 

なかなか解説は大変ですが、頑張っている人たちを応援したいので続けていきます。

また遊びに来てくださいね(^^)

 

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