コンサル実務 人事制度

人事制度を構築する3つの制度①「等級制度」

投稿日:2021年11月17日 更新日:

こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。

今回は人事制度について解説します。

私は独学で中小企業診断士試験に一発合格し、40歳から経営コンサルタントの会社に転職しました。

その中で、人事制度構築にも携わっています。

実務の話を交えながら、どのようなものを構築しなければならないかを3回に分けて説明します。

 

人事制度とは?

まず人事制度とは何でしょうか?

人事制度とは「人材の処遇に関するルール」です。

中小企業では「うちは人事制度が存在しない」といわれることがあります。

その場合でも評価をしたり、給料やボーナスを決めたり、役職を決めたりしています。

ですので広い意味で言うと、どの会社にも人事制度は存在します。

世間一般で言うような人事制度はなくても、社員がどのような人材になってほしいかは経営者の頭の中にはあります。

ただこのような状態では、社員に理想の人物像が伝わりません。

社員に理想の人物像が伝わっていないと、せっかくの頑張りが評価されません。

「こんなに頑張っているのに、全然評価してくれない!」

それが続くと次第に従業員は離れていきます。

こうしたギャップを埋めて納得感を得られるように人事制度は構築されます。

ちなみに中小企業診断士試験での二次試験では、組織・人事についての事例問題が出題されます。

従業員のモチベーションを管理して、働きやすい環境祖整備することは非常に重要です。

 

人事制度は3つに分類

人事制度の構造は3つの制度に支えられています。

  1. 等級制度(社員のランクを定める)
  2. 評価制度(社員を評価する)
  3. 賃金制度(社員の処遇を決める)

これらの言葉がごっちゃになってしまいがちですが、人事制度はこれら3つの制度を統合したものです。

 

社員を役割ごとにランクを定めて、それぞれのランクごとの理想の人物像を定めて、評価によって賃金の昇給や賞与額を決定します。

これらを構築することで納得性を高める制度になります。

ただし、評価する文化がなかった会社がいきなり制度を導入すると、社員が困惑します。

ポイントは人事制度は「人を評価する目的で導入しない」ということです。

点数をつけて誰が一番優秀であるかを決めるような制度では、誰からも支持される制度にはなりません。

私は人事制度を「人財育成制度」と呼ぶようにしています。

従業員の長所を伸ばし、短所をみんなに迷惑をかけない程度に克服してもらう制度として活用しています。

そのことを導入時には従業員の皆さんに丁寧に説明します。

皆から受け入れてもらわないと、人事制度の目的は達成できません。

 

今回はその中で「等級制度」を説明します。

 

等級制度とは

等級制度なんていうと、ちょっとわかりにくいですね。

この制度は「役職や役割ごとにランク分けをすること」です。

会社にはいろんな役割を持った人がいます。

機械を使って加工する人、営業活動する人、会社のお金を管理する人、生産計画を立てる人・・・

それを一定のルールでランク付けします。

ここで言う「ランク」は、縦関係の役割を使います。

工場で言うと、

  • 実際に作業をする人
  • 作業者を統率する人
  • 工場全体を管理する人

という3つの段階があります。

営業部であれば、

  • 営業を実行する人
  • チームや係を指揮する人
  • 課や部の売上を管理して統率する人

同じく3つの段階です。

なぜ等級が必要なのでしょうか?

それは残りの2つのせいである「評価制度」と「賃金制度」を構築するためです。

例えば評価制度を構築する時に、働いている人の評価内容が一緒だったらどうでしょうか?

当然ですが、社歴が長くなるにつれて習熟していくので、評価が有利になってしまいます。

しかし新人の方であっても、会社に貢献しようとする姿勢がベテランを上回ることがあります。

社歴の浅い方は、実績である「成果」よりも貢献しようとする「行動」を重視して評価しなくてはいけません。

逆にベテランになってくると「行動」は当然求められますが、それ以上に「成果」を求められます。

社歴の長い方や役職者は、どれだけ実績を上げることができたかを評価しなくてはいけません。

このように役割に応じて評価内容を変えることで、平等に評価をすることができます。

 

「賃金制度」についても、等級を設定しておくことが必要です。

社歴が長い従業員や役職者は、会社から「成果」を求められます。

つまり責任重大ということです。

それだけの責任を負わされるということは、それに見合うだけの報酬を与えなければなりません。

当然等級が高くなるにつれて、給料や賞与が多くなります。

逆に「成果」ではなく貢献する意欲が大事な一般社員であれば、責任は役職者よりも軽いです。

そうすると、報酬もそれに見合った額になります。

 

このように等級制度を構築することで、権限や責任が明らかになります。

そしてそれに見合った評価内容と賃金を設定することで、納得感の高い制度にすることができます。

次に等級制度を構築するポイントを説明します。

 

等級制度構築のポイント

等級制度を設計する際のポイントを3つお話します。

まずは入社から退職までの会社人生を、大きく3つに分けることです。

3つのステージは

  1. 実務職
  2. 監督職
  3. 管理職

です。

第1ステージの「実務職」は能力を育成する段階です。

仕事の仕方を覚えて一人前として成長していく段階です。

第2のステージの監督職では部下の存在があり、部下や後輩の育成指導も必要となります。

プレイヤーだけでなく、監督としてチーム運営に関与します。

第3のステージは管理職であり、課や部の統括としての役割が増え、人を活用して業務を行なうことも増えます。

 

では等級はこの3等級を設定するかというと、もう少し多くする方が望ましいです。

なぜかというと、等級制度の効果として昇格することでモチベーションを高めることが期待されるからです。

それに第1段階の実務者でも、ひとまとめにすることは難しいです。

私は3段階をおすすめしています。

  • 仕事を覚える半人前の段階
  • 独力で仕事ができる一人前の段階
  • 仕事を他の人にも教えることができる段階

また監督職や管理職でも2段階ずつ設定します。

一般的に多いのは、以下の7段階の等級です。

監督職は「主任」や「係長」、管理職は「課長」や「部長」が該当します。

それぞれの会社でいろんな役職がありますので、監督職以上はそれに応じた等級にして下さい。

 

さらに、管理や監督は行なわないが、専門的技術や技能の向上に重きを置く「専門職」という等級もあります。

専門職は実務職よりも上位に位置します。

これは管理は得意ではないが、作業の知識が豊富なベテラン作業員さんが該当します。

専門職は監督職や管理職にポストが空いていない場合にも活用できます。

実務職から昇格させてあげたいけど、できない制約が発生することがあります。

そんな場合は専門職として昇格をさせます。

昇格できるルートを多く作ることで、停滞を防ぎます。

専門職をうまく活用すれば、従業員のモチベーションを維持したり、多様なキャリア形成に対応したりできます。

 

 

最後に

今回は人事制度を構築する3つの制度の一つ「等級制度」について解説しました。

中小企業では人事制度が全く存在しないこともあります。

ですので、等級制度を導入する話になると、

「そんな大掛かりな制度を入れなくても、もっと簡単なもので良いです」

と言われることもあります。

しかし、等級制度を構築しないと給料の違いを説明することができません。

給料の違いを説明できないということは、「同一労働・同一賃金」に対応することができません。

それに経営者の頭の中には、社員によって役割が違うことを理解されています。

それを見える形にしているだけです。

見える形にすることで、社員がどのような期待をされているかが明らかになります。

闇雲に働くよりも、期待されていることがわかったうえで働いたほうが良いです。

 

次回は人事制度の2つ目の要素である、「評価制度」について解説します。

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