こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
私は中小企業診断士の資格を活かして、経営コンサルタントとして活動しています。
今回は在庫管理の話をします。
会社によっては在庫の管理ができていないことが見受けられます。
特に規模の小さい会社では、兼任で担当を持っていることが多く、管理が難しい状態になっていることもあります。
そもそも在庫や在庫管理の重要性を学んでおらず、リスクが高い状態になっていることもあります。
ではどのような在庫管理をしていけば良いのでしょうか。
世間では在庫管理システムが全てを解決できると宣伝されていますが、そのような設備投資が難しい会社もあります。
今回は在庫管理の重要性と、今からすぐにできる在庫管理について説明いたします。
在庫とは?
まずは在庫とは何のことでしょうか?
ざっくり言うと、会社にストックされているモノが該当するとイメージできます。
例えば会社が製造時に使用する「原材料」は在庫に該当するとわかります。
では、ボールペンのストックやA4コピー用紙なんかは在庫に該当するでしょうか?
答えは「NO」です。
どちらもストックされているモノには変わりませんが、この違いはなんでしょうか?
この違いは「事業活動によって将来お金に変わるモノであるか」です。
原材料であれば、機械で加工して製品に仕上げることによって売上につなげることができます。
しかしボールペンやA4コピー用紙は事業の活動には使用しますが、それを販売してお金に変えるわけではありません。
文房具店であれば販売して売上に変わりますが(^^)
つまり在庫とは「将来お金に変わるモノであるか」です。
ですので、販売できないくらい状態が悪くなった原材料・仕掛品・製品はデッドストックと言われ、在庫にカウントしません。
まずは前提を押さえておきましょう。
在庫管理とは?
在庫管理とは「在庫を必要な時に必要なモノを必要な量だけ適切に提供するために適切な在庫状態にしておくこと」です。
お客さんから「あの製品を〇〇ロット、2週間後までに欲しい」と言われた時に、それが実現できる体制にしておくことです。
そのためには原材料や仕掛品、製品が現在どれだけあるのか、どこにあるのか、この状態で足りるのかを管理しておかなくてはいけません。
会社によっては忙しい時と暇な時があると思います。
忙しい時には多くの在庫を抱えて対応できるようにします。
逆に暇な時は在庫の量を減らして、ムダに抱えないようにします。
在庫管理は勘と経験も重要ですが、誰でもできるような仕組みを作っておくと、より精度の高い在庫管理ができるようになります。
在庫管理の重要性
在庫管理はとても重要です。
まず忘れてはいけないことは「在庫=お金」ということです。
在庫は会社の大事なお金を使って購入しています。
つまり、現金がモノに変化しているのです。
ついつい忘れがちですが、在庫を大切に扱わない人がいます。
現金であれば大切に扱うのに、モノであれば足で扱うような場面を見ることがあります。
さらに在庫は劣化したりすると、お金を落としたことと同じことです。
十分に注意して取り扱いましょう。
在庫管理がなぜ重要かを以下に説明します。
機会損失を防ぐ
在庫保有しておくことによって、顧客の欲しいタイミングでモノを提供することができます。
品揃えが豊富ですぐに自分の欲しいものが手に入るお店があれば利用したくなりますよね。
逆にいつも品切れで、別注しないと手に入らない場合はどうでしょうか。
「あそこに行っても欲しいものがすぐに手に入らない」
と言って違うお店に乗り換えられることも考えられます。
このように在庫を保有しておくと、機会損失を防ぐことができます。
在庫のロスを防ぐ
在庫を保有しておけば良いかといえばそうでないこともあります。
在庫を保有しすぎると、良くないことがおきます。
それは製品や商品が劣化して売り物にならなくなってしまうことです。
また季節や旬を過ぎた在庫は売れなくなってしまいます。
このような不良在庫を多く抱えると、大きな損失になります。
繰り返しますが「在庫=お金」です。
もし抱えている在庫が一円にもならないことが確定したらお金を捨てたことと同じです。
現金で持っておいたら他にも投資をできすが、不良在庫はそうはいきません。
在庫管理をしてムダな在庫を持たないようにすれば、不良在庫のようなロスを防ぐことができます。
キャッシュフローの改善
在庫がいつまでも売れないと、いつまでも現金化できません。
また在庫を購入すること自体が、現金を減らす要因となります。
たくさん買えば値引きしてくれるからといって、必要以上に購入することはリスクを背負います。
会社は現金が入る活動もあれば、事業のために現金を支払う活動もあります。
毎月にどれだけの支出が発生しているかを適切に把握して、現金と在庫のバランスを取る必要があります。
もし大量の在庫を抱えてしまって、手元に現金がほとんど残っていない時に支払いが発生するとどうなるでしょうか。
支払いが滞ってしまうと、最悪会社が倒産します。
業績が黒字にもかかわらず、支払いが滞って倒産してしまうことを「黒字倒産」と言います。
在庫にはこのようなリスクがあることを理解しておかなくてはいけません。
ロケーションの改善
在庫を持つと保管が必要です。
保管するためにはスペースを設ける必要があります。
在庫を多く抱えると、それを置くための場所を確保する必要があります。
場合によっては倉庫を借りる必要が出てくるでしょう。
スペースは無料で増やすことはできません。
倉庫を借りれば賃貸料の発生や管理のための人件費が余分にかかります。
もし、それほど在庫を持たなくても良いとわかればどうでしょうか。
抱えている在庫を減らすことで、余分な倉庫の費用を削減できます。
スペースが空くことによって、動線に余裕ができて作業がしやすくなります。
作業効率が上がれば生産性が向上して、会社に利益をもたらすでしょう。
このように会社のスペースはとても重要です。
在庫を適切に管理できれば、スペースを確保できて費用や生産性の向上につたがります。
このように在庫管理は会社運営を適切に行うために必要なことです。
在庫管理のステップ
では在庫管理はどのようにするのでしょうか。
在庫管理にはステップがあります。
順番にクリアすることによって、精度の高い管理ができます。
5S活動
まず基本的なことですが、会社にいらないものがたくさんあると在庫管理ができないので、5S活動で管理ができる状態にします。
簡単なことですが、意外と疎かになっていることがあります。
特に「整理」は在庫管理の基本なので、必ず実行してください。
5S活動が進むことによって在庫管理ができる状態になります。
ロケーション管理
次はロケーション管理です。
ロケーション管理では、どこに何が置いてあるのかを明確にします。
会社でよく起こることに「担当者しかわからない」状態になっていることがあります。
その人が欠勤したり退職したりすると、会社は大混乱です。
そんなことにならないよう、どこに置いているかを共有できるように、場所を決めて明示します。
また倉庫に在庫の場所を張り出しておくと探しやすくなります。
新人の方も安心して探すことができますね(^^)
よく明示しなくてもみんな把握していると言う人がいますが、ベテランでも場所が曖昧だったり、人に聞かないとわからなかったりすることもあります。
誰でも探しやすくすることは、新人にとってもベテランにとっても必要なことです。
ABC分析
場所の確保ができれば、在庫の重要度を評価します。
それがABC分析です。
在庫の中で最も重要なモノに該当する場合は「A」、次に重要なモノを「B」、それほど重要でないモノを「C」とします。
何をもって重要かどうかは、さまざまな考えがありますので、会社によって検討してください。
一般的には価値の高いモノや頻繁に回転するモノを重要度が高いと位置づけます。
分けることによってロケーション管理の方法も再検討が必要になるでしょう。
頻繁に回転するものは倉庫の取り出しやすい場所に置いたほうが良いでしょう。
また高価なモノは盗難や劣化を防ぐために、管理がしやすい場所やカギ付きの倉庫などに保管すると良いでしょう。
管理方法の決定
ABC分析をした後は管理方法を決定します。
具体的には仕入管理です。
どのように仕入管理をするかはABCによっては仕入管理方法が異なります。
「A」に該当する在庫は重要度が高いため、細かい管理が必要です。
この場合「定期注文管理」をします。
定期管理は発注するタイミングを定めて、発注します。
高価なものが多いため、注文量はその都度考えて発生します。
繁忙期・閑散期などに応じて量を柔軟に変更できるので、ムダな仕入を防ぐことができます。
ただし量をその都度検討するため、発注の手間がかかります。
「B」に該当する在庫は「定量発注方式」を採用します。
定量発注では、ある一定数在庫が減ったら、決められた量だけ注文します。
例えば、ある在庫がMAX10個までとし、発注点を1個にすると、常に残り1個になったら9個発注して10個にします。
量が決まっているため定期発注よりも手間は少ないですが、減ったタイミングで発注するため、在庫数を管理しておく必要があります。
また繁忙期などに対応は出来ないので、季節によって変動がある場合は工夫が必要です。
「C」に該当する在庫は定量発注方式かダブルビル方式で管理します。
ダブルビン方式では在庫を2つ用意して、片方だけ使用し、なくなったらもう片方を使用します。
発注は片方がなくなったタイミングで1つ発注する感じです。
よくトイレットペーパーが二つ並んでいることを見ると思いますが、これこそがダブルビン方式です。
定量発注よりもさらに単純なので、管理はしやすいですが、使用する人が守らないと管理ができなくなります。
両方同時に使用すると管理が難しくなります。
ダブルビン方式では社内のルールを共有しておくことが大事です。
入出庫管理
発注方法を決定したら、在庫の動きを把握するために「入出庫管理」を行います。
入出庫管理では入ってきた数と出ていった数を記録に残して、今の在庫がどのような状態かを細かく管理します。
記録を残すことで、在庫状態をリアルタイムで把握できるため、欠品などのリスクに気が付きやすくなります。
また月の変動などを見ることができるので、毎年の在庫管理の予測ができます。
ただし入出庫管理は毎日チェックする必要があるため、全ての入出庫を管理するにはシステムが必要かもしれません。
もしエクセルで管理することを想定すると、まずは「A」在庫から始めると良いでしょう。
その他の在庫は定期的に棚卸して把握すれば、在庫管理はできます。
自社にとって重要なところに絞れば、エクセルでも管理ができると思います。
ただし入力は人が行うので、入力間違いなどのヒューマンエラーが発生するリスクがあります。
慣れていない場合は、できる範囲から始めてみると良いでしょう。
最後に
今回は在庫管理について、どのようにするべきかステップについて解説しました。
管理業務は時間をかけても付加価値を生まないことが多いのでなるべく簡略化できた方が良いです。
在庫管理はお金を管理していると同等なので、特にしっかり管理が必要です。
今回紹介した方法や手段も大事ですが、なぜ必要なのか?なぜ重要なのかを共有しておきましょう。
目的を共有できると、おのずと工夫してくれます。
適切に管理して、お金とスペースを有効活用しましょう!