こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
今回は営業活動によるキャッシュフローを解説します。
キャッシュフローの計算自体は簡単ですが、仕組みが複雑てす。
中小企業診断士試験では、一次・二次共に出題されやすい超重要テーマですので、しっかりと取り組んで下さい。
試験重要度 ★★★★★
キャッシュフローは一次試験の財務・会計や二次試験の事例Ⅳにおいても頻繁に出題されます。
キャッシュフロー計算書は複雑ですが、手順は決まっています。
ですので、まずは解説で手順を学んだら問題を解いてみて下さい。
一次試験の問題であれば、それほど難しくはありません。
営業活動によるキャッシュフローとは?
キャッシュフロー計算書は「お金の流れを見る財務諸表」です。
そして中身は「営業」「投資」「財務」の3構造になっています。
営業活動によるキャッシュ・フローには
- 商品・サービスを提供して販売で代金を回収した
- 商品・サービスの仕入や提供を受けてお金を支払った
といった活動のキャッシュ・フローが記載されます。
このような活動をするための人件費支出や、その他の営業支出なども営業キャッシュ・フローに含まれます。
損益計算書の営業利益までの活動に近い感じです。
後で解説しますが、間接法では一旦「営業利益」に戻してから計算しています。
損益計算書の売上高や売上原価、販売費及び一般管理費までの活動にあたるキャッシュ・フローが、営業活動によるキャッシュ・フローです。
営業活動キャッシュフローの計算は「直接法」と「間接法」
営業活動によるキャッシュ・フローの作成方法には、
- 直接法
- 間接法
の 2 種類
があります。
直接法
直接法は、直接お金の動きを伴う取引を記録し、これを集計することによって作
成します。
直接法では、
- 営業収入
- 原材料又は商品の仕入支出
- 人件費支出
- その他の営業支出
といった項目から、お金の出入りを確認します。
直接法は、活動ごとの資金の流れが分かりやすいというメリットがあります。
間接法
間接法は、損益計算書と貸借対照表からキャッシュ・フローを計算する方法です。
間接法では、税引前当期純利益から出発し、お金の動きを表すように修正をしていきます。
直接法が売上から下に降りていく感じでしたが、間接法は逆にさかのぼって計算します。
間接法は、キャッシュ・フローと利益との差異の原因が分かりやすいというメリットがあります。
キャッシュフローは間接法が一般的
実務では、直接法でキャッシュ・フロー計算書を作成するためには、お金の動きを伴う取引をすべて分類して集計する必要があります。
つまりは事務的な負担が大きくなります。
よって、ほとんどの企業が間接法でキャッシュ・フロー計算書を作成しています。
基本的には、損益計算書の営業利益までの活動に近いとイメージしておくと良いでしょう。
つまり、損益計算書の売上高や売上原価、販売費及び一般管理費までの活動にあたるキャッシュ・フローが、営業活動によるキャッシュ・フローです。
試験では、両方の方法が出題されていますので、どちらの方法でもキャッシュ・フロー計算書を作成できるようにしておく必要があります。
間接法によるキャッシュフローの計算方法
では実際に間接法によるキャッシュフローの計算をしていきます。
ここに例として貸借対照表と損益計算書、間接法によるキャッシュフローで計算した例を示します。
キャッシュフローを計算するには
- 2期分の貸借対照表
- 当期の損益計算書
が必要です。
間接法では、損益計算書の税引前当期純利益を元に、様々な調整をしていくことでキャッシュ・フローを表すように修正します。
損益計算書は発生主義で計上しています。発生主義は商品の・サービスの提供があり売上や費用が発生した時に計上します。
キャッシュ・フローでは現金主義という、実際に入出金があった取引に着目します。
よって貸借対照表と損益計算書から修正しなければなりません。
「お金が実際にやり取りしているかってわかるの?」
と思われるかもしれませんが、売掛金や買掛金はまだお金の受取りや支払いがない状態です。
これらの取引は、貸借対照表や損益計算書ではやり取りしたとされています。
しかしキャッシュフローの観点から見れば、お金は動いていないので計上しません。
こういった実際にお金が動いていないのに取引として記録されている内容を修正していけは、キャッシュフローの姿が見えてきます。
スタートは「税引前当期純利益」から
最初は税引前当期純利益から記載します。
これは単純に損益計算書の「税引前当期純利益」を転記するだけです。
ここから間接法によるキャッシュ・フローがスタートします。
ちなみに、法人税等が引かれている「当期純利益」とは違いますのでご注意下さい。
「非資金項目」を加算する
次に、「減価償却費」と「貸倒引当金の増加額」を加算します。
これらは、「非資金項目の調整」と呼ばれます。
非資金項目は、損益計算書の損益のうち、お金が動いていないものです。
例えば、減価償却費は建物や設備の購入金額を、毎期ごとに費用計上します。
固定資産は複数年に会社の活動にを及ぼすので、一気に費用計上せずに分割させるのが会計上のルールです。
しかし、実際にお金を支払ったのは購入した年度だけですよね。
それ以降はお金の動きはありません。
よって、お金の流れを表すように修正するためには、減価償却費のマイナス分だけ加算します。
符号はプラスです。
違和感ありますね(^^;)
貸倒引当金も同様に加算します。
貸倒引当金は、将来の貸倒れに備えて、貸倒れの見積額をあらかじめ当期の費用とし、貸借対照表に貸倒引当金を積み立てておくものでした。
この費用も、積み立てるだけなので、実際のお金の動きは伴いません。
貸倒引当金を積み立てた場合は、その分の費用が計上されて、利益がマイナスされています。
よって、利益からお金を表すように修正するためには、
貸倒引当金が「増加」した分だけ利益にプラスする必要があります。
損益計算書の「貸倒引当金繰入額」ではなく、「貸倒引当金の増加額」を記入するのでご注意下さい。
貸倒引当金の増加額は、
(当期の貸倒引当金」−(前期の貸倒引当金)
で計算します。
貸倒引当金が増加している場合は、加算が必要なので符号がプラスにします。
具体例で計算します。
上の図は第X2期の損益計算書の税引前当期純利益は 700 です。
これを営業活動によるキャッシュ・フローの税引前当期純利益に転記します。
「減価償却費」については、損益計算書の減価償却費 100 を転記します。
「貸倒引当金の純増額」については、貸借対照表の貸倒引当金が第X1期末の 10 から、
第X2期末の 20 に増加しています。
計算式は、
(当期の貸倒引当金」−(前期の貸倒引当金)
でしたので、
貸倒引当金増加額=(10)−(20)
純増額 10 を転記します。貸借対照表上はマイナス表示されますが、引当金残高はプラスと考えて計算してください。
営業活動以外の損益
次に、営業活動以外の損益を処理します。
具体例には、
- 受取利息及び受取配当金
- 支払利息
- 有形固定資産売却益
という項目があります。
これらは、損益計算書では営業外損益や特別損益などの「営業活動以外の損益」です。
これらの項目を営業キャッシュ・フローから除去します。
具体的には、費用は足して収益は引きます。
損益計算書の符号を逆にして記載します。
例にある有形固定資産の売却で得られたお金は、「投資活動よるキャッシュ・フロー」に含めます。
間接法では、税引前当期純利益からスタートしているので、有形固定資産売却益が含まれています。
このような損益の影響を利益から取り除くために、符号を逆にして調整します。
これらの項目を除去することで、「税引前当期純利益」から「営業利益」に戻していると考えると分かりやすいです。
「営業外損益」や「特別損益」は本業とは関係性が薄い、お金のやりくりに関することがほとんどです。
これらは投資や財務のキャッシュフローなので、本業である営業利益を表すように調整しています。
符号を逆にするというのは
- 利益であればマイナス
- 費用であればプラス
にします。
儲けた分は引くことで、損した分は足すことで影響をなくします。
ちなみに私は一旦「営業利益」に戻してから「非資金費用」の計算をしていました。
その方がミスが少ないのでオススメです!
具体例で計算
これらの計算を具体例で確認してみます。
「受取利息及び受取配当金」は、利益です。
よって損益計算書の受取利息・配当金 20 の符号を逆にした▲20 を記入します。
「支払利息」については、費用です。
費用は出すので、損益計算書の支払利息 30 を記入します。
「有形固定資産売却益」はありません。
その他資料④の部分に「第X2期の有形固定資産の売却はない」とあります。
売却がないため、調整はありません。
試験では、その他の資料に重要な情報があります。
貸借対照表や損益計算書だけでなく、注記事項もしっかり確認してください。
私もなんだもやりましたが、けっこう見落としがちです(^^;)
営業活動のお金の動きを確認
ここまでで、営業利益に戻して非資金費用の足し戻しが終わりました。
ここからはいよいよ本業のお金の動きを追っていきます。
メインとなるのは、
- 売上債権の増減
- 棚卸資産の増減
- 仕入債務の増減
です。
まずは売上債権からです。
売上債権は売掛金や受取手形が該当します。
これらは掛取引の状態なので、お金をもらっていません。
商品・サービスは提供したけど、代金の回収はまだということです。
損益計算書の利益は売上債権を回収しなくても、売上が計上されれば増加します。
よって、利益からお金の流れに修正するためには、売上債権が増えた分はマイナスにしなければなりません。
売上債権の回収が遅れればお金が入ってきません。売上債権は早く回収をする必要があります。
次は棚卸資産を確認します。
棚卸資産は、商品などの在庫です。
よく在庫を削減することでキャッシュ・フローを改善できると言われます。
例えばある会社では売上が好調で、利益が上がっている状態だとします。
しかし、それ以上に仕入れた商品が売れ残っており、在庫が増えていました。
この場合は、商品の仕入れで支払ったお金がかなり多くなっています。
損益計算書ては売った分だけしか原価としてカウントしないので利益は上がっているように見えますが、売れ残りの在庫を買った分だけお金はマイナスの状況になっています。
逆に、在庫が減った場合は、それだけ仕入にお金を使っていないので、プラスする効果があります。
よって、利益をお金の流れに修正するためには、
- 棚卸資産が増えた分だけマイナス
- 棚卸資産が減った分だけプラス
こうした修正が必要です。
最後は仕入債務です。
仕入債務は商品を仕入れたときに計上されます。
仕入の際にも掛取引なのて、仕入債務の代金回収がなければお金は出ていきません。
つまり仕入債務が増えればお金は出ていっていないのでプラスになります。
よって、仕入債務が増えた分だけお金をプラスする必要があります。
つまり、支払を遅らせることができれば、お金はプラスになるということです。
キャッシュフローの覚え方
営業活動で生じる資産と負債に関しては、
- 資産が増えた場合にはキャッシュをマイナス
- 負債が増えた場合にはキャッシュをプラス
で覚えておくとよいです。
資産が増えると
符合が分からなくなったら、キャッシュ・フローを改善する例を思い出しましょう。
どうすればお金が増えるか、
- 売上権を早く回収する
- 在庫を削減する
- 支払いを遅らせる
こういった根本を抑えておくと、符号を間違えずに済みます。
具体例で確認します。
具体例では「売上債権の増加額」とあります。
貸借対照表の売上債権が第 X1 期末の 600 から、第 X2期末の 700 に増加しています。
債権が100増加しています。
代金の回収ができていないのでその分お金はマイナスです。
増加額 100 の符号を逆にして▲100 を記入します。
つまり、キャッシュ・フローは悪化したということです。
「棚卸資産の減少額」は貸借対照表の商品が第 X1 期末の 300 から、第 X2 期末 200 に減少しています。
この場合、在庫が削減されたので、お金は増加します。
符号をプラスにした100増加させます。
数字の符号はプラスです。
「仕入債務の減少額」については、貸借対照表の仕入債務が第 X1 期末の 400 から、第 X2期末の 350 に減少しています。
仕入債務が減っているということは、代金を回収されたということです。
つまりお金が減っているということです。
お金が減ったので▲50 を記入します。
このように、営業活動で生じる資産と負債に関しては数字の符号に注意してください。
資産の増加はマイナス、負債の増加はプラスで覚えておけば間違えることは少ないです。
その他の営業関連の調整
その他の営業関連の調整は、営業活動によって発生する経過勘定など、その他の資産と負債を調整する項目です。
この部分に関しても
- 資産が増えた場合にはキャッシュをマイナス
- 負債が増えた場合にはキャッシュをプラス
という調整を行います。
経過勘定には、
- 前払費用(資産)
- 未収収益(資産)
- 前受収益(負債)
- 未払費用(負債)
があります。
これに加えて、
- 前受金(負債)
- 前払金(資産)
などもこの調整の対象になります。
以前のブログで書きましたが、「権利は資産」「義務は負債」と覚えておけばわかりやすいです。
重要な点は「営業活動に関連するものだけが調整の対象」ということです。
今回の例では前払費用がその他営業費となっているので対象にしています。
他の経過勘定は利息に関することなので、ここでは対象外です。
具体例で計算します。
貸借対照表の経過勘定には、前払費用、未収収益、未払費用があることが分かります。
その他資料②から前払費用は営業関連の項目であることがわかります。
一方、未収収益と未払費用は利息に関するものですので、調整項目ではありません。
前払費用の残高は、第 X1 期末が 30、第 X2 期末が 40 です。
ということは資産である前払費用が10 増加しています。
資産が増加すれば、お金はマイナスです。
よって増加額 10 の符号を逆にして▲10と記入します。
ここまで、税引前当期純利益から出発し、様々な調整を加えることで営業キャッシュ・フローを表すように修正してきました。
キャッシュ・フロー計算書では、一旦ここまでで「小計」を計算し、表示することになっています。
小計以降は、間接法でも直接法でも同じ項目
小計以降は、主な営業活動以外のキャッシュ・フローの項目になります。
この後の投資活動、財務活動には含まれないが、主要な営業活動でもないものが、ここに入ります。
主な小計以降の項目には
- 利息及び配当金の受取額
- 利息の支払額
- 法人税等の支払額
があります。
営業利益から当期純利益の間に入ってくる損益から実際にお金の動きを確認して調整していきます。
利息及び配当金の受取額
利息及び配当金の受取額は、受取利息や受取配当金による増加額を記入します。
「さっき営業利益に戻したのに、また記入するの?」
って思いますよね(^^;)
私も思いました。
これは意味合いが違います。
- 小計前は、単純に営業利益を表すために加減するもの
- 小計後は、実際に受け取ったお金を計算するもの
ですので、小計後は経過勘定である「前受利息」や「未収利息」といったものを考慮に入れなければなりません。
未収利息が増えている場合は、収益として計上された受取利息のうち、まだお金を受け取っていません。
よって、未収利息の増加分を受取利息からマイナスする必要があります。
前受利息の場合はその逆で、先にお金を受け取っているので増加すればプラスにする必要があります。
計算式は、
利息及び配当金の受取額= 受取利息及び受取配当金 + 前受利息の増加額 - 未収利息の増加額
です。
営業活動のように前期と当期の貸借対照表の増減から計算できます。
利息・法人税等の支払額
利息の支払額と法人税等の支払額も同様に、経過勘定の増減を考慮して記入します。
経過勘定では「未払利息」と「前払利息」が該当します。
法人税では「未払い法人税等」の調整が必要です。
計算式は、
利息の支払額 = - 支払利息 + 未払利息増加額 - 前払利息増加額
法人税等の支払額 = - 法人税等 + 未払法人税等増加額
払ってなければお金が出ていっていないので「プラス」、先に払ったならお金が出ていっているので「マイナス」です。
具体例で計算します。
まずは利息及び配当金の受取額です。
計算式は
利息及び配当金の受取額= 受取利息及び受取配当金 + 前受利息の増加額 - 未収利息の増加額
です。
受取利息・配当金は損益計算書から 20 とわかります。
そして、その他資料の②には未収収益は受取利息に関するもの、つまり未収利息であることがわかります。
貸借対照表の未収収益は第X1期の10から第X2期は0になっています。
言葉で表現すると「未払だった代金を10を無事に回収できた」って感じですね(^^)
よって「利息及び配当金の受取額」は、
もともとの20から代金回収に成功した10を加えます。
先ほどの式に代入すると、
受取利息・配当金 20 – ▲10 = 30 です。
次は利息の支払額です。
計算式は、
利息の支払額 = - 支払利息 + 未払利息増加額 - 前払利息増加額
です。
支払利息は損益計算書から 30 ということがわかります。
またその他資料の②を確認すると、未払費用は支払利息に関するもの、つまり未払利息であることがわかります。
貸借対照表の未払費用は第X1期の20から第X2期は10になっています。
言葉で表現すると「払っていなかった代金10を回収された」って感じですね。
お金減っちゃいました(^^;)
よってもともとの支払利息30に更に回収された10を加えます。
よって「利息の支払額」の計算式は、
支払利息▲30 +▲10 =▲40 となります。
最後は法人税等の支払額です。
計算式は、
法人税等の支払額 = - 法人税等 + 未払法人税等増加額
です。
損益計算書の法人税等は 280 です。
貸借対照表の未払法人税等は増加額は第X1期の100から第X2期は130となっています。
払っていない法人税が増加しています。
ということはお金が出ていっていない30だけ増加します。
よって、「法人税等の支払額」は、
法人税等の△280 +30 =△250
です。
活動要因の分析
これで営業活動によるキャッシュ・フローの計算ができました。
これらの調整項目をすべて合計すると、営業活動によるキャッシュ・フローが計算できます。
具体例では営業活動によるキャッシュ・フローが 500 でした。
つまり営業活動によってお金が増えたということです。
また、キャッシュ・フローの増減の要因を分析すると、
棚卸資産の削減がプラスに働いたものの、売上債権の増加と、仕入債務の減少の分がマイナスになった、ということが分かります。
つまり
- 在庫は減らせた
- 代金回収が滞っている
- 仕入れ業者からの代金回収が早い
ということがわかります。
キャッシュフローを分析すれば、どのよう要因が良かったのか悪かったのかがわかります。
分析結果は会社の戦略会議で使用して共有化すると良いです。
直接法によるキャッシュフローの計算方法
もう一つのキャッシュフローを計算する方法として「直接法」があります。
間接法では、税引前当期純利益から出発し、キャッシュの流れを表すように損益計算書を下から調整していきました。
損益計算書の下からスタートした感じですね。
直接法では、損益計算書の売上高、売上原価、販売費及び一般管理費から、キャッシュの動きを表すように修正をしていきます。
この場合は、損益計算書の上から調整していきます。
どちらで計算しても、営業活動によるキャッシュ・フローの小計以降は同じ金額です。
では具体例を挟みながら直接法で小計までを作成する方法を見ていきます。
直接法の小計までの項目は、
- 営業収入
- 原材料又は商品の仕入支出
- 人件費支出
- その他の営業支出
の 4 つです。
営業収入
営業収入は、損益計算書の売上高から、実際にどれだけお金が入ったかを調整します。
営業収入では、
- 売上債権を回収できていないものをマイナスする
- 貸倒の分をマイナスする
といった調整が必要です。
基本的な営業収入の式は、
営業収入 = 売上高 - 売上債権増加額 - 当期貸倒高
となります。
当期貸倒高の求め方は、前期の債権による貸倒高と当期の債権による貸倒高の合計です。
前期の債権については貸倒引当金を積み立てていますので、取り崩しているかどうかを計算します。
よって前期の貸倒引当金に貸倒引当金繰入額の合計から当期の貸倒引当金を引くことで「貸倒引当金の取り崩し額」が判明します。
式で表現すると
貸倒引当金の取り崩し=前期貸倒引当 + 貸倒引当金繰入額 ー 当期貸倒引当金
図で表すとイメージしやすいと思います。
積み立てていた以上の貸倒が発生した場合は、貸倒損失に計上されています。
当期の貸倒高は、直で貸倒損失になります。
式で表すと
当期貸倒高 = 貸倒引当金の取り崩し+ 貸倒損失
貸倒引当金の取り崩し=前期貸倒引当 + 貸倒引当金繰入額 ー 当期貸倒引当金
です。
代金の回収見込みがなくなった債権はマイナスします。
具体例で確認します。
具体例を使って営業収入を計算します。
計算に使う式は以下の通りです。
営業収入 = 売上高 - 売上債権増加額 - 当期貸倒高
当期貸倒高 = 貸倒引当金の取り崩し+ 貸倒損失
貸倒引当金の取り崩し=前期貸倒引当 + 貸倒引当金繰入額 ー 当期貸倒引当金
売上高は3,400です。
売上債権の増加額は、間接法でも計算しましたが100です。
貸倒高の計算もします。
まず貸倒引当金と繰入額を見ます。
X1期の貸倒引当金は10です。
X2当期の貸倒引当金は20です。
そして貸倒引当金繰入額は10です。
これらから貸倒引当金の取り崩しは
貸倒引当金の取り崩し=前期貸倒引当 + 貸倒引当金繰入額 ー 当期貸倒引当金
10+10-20=0
ということで貸倒引当金の取り崩しはありません。
貸倒損失があれば、損益計算書に表示されています。
一般的は「販管費」に計上されますが、「営業外費用」や「特別損失」に入ることもあります。
損益計算書を見ても、貸倒損失はなさそうです。
ということで営業収入は
3,400-100=3,300
と計算できます。
原材料又は商品の仕入支出
「原材料又は商品の仕入支出」は、損益計算書の売上原価を元に、支払ったお金を表すように調整します。
式で表すと、
原材料又は商品の仕入支出 = - 売上原価 - 棚卸資産の増加額 + 仕入債務の増加額
です。
棚卸資産と仕入債務について調整する必要があります。
符号に注意しましょう。
考え方としては、
- 売上原価はお金が出ていきます。
- 棚卸資産が増えるほどお金が出ていきます。
- 仕入の代金を支払っていないほどお金は残ります。
丸暗記よりも理屈で覚えているほうが知識が定着します。
中小企業診断士試験は、範囲が広いので理屈で覚えておくほうが良いです。
具体例で計算します。
例で計算をしてみます。
使用する式は、
原材料又は商品の仕入支出 = - 売上原価 - 棚卸資産の増加額 + 仕入債務の増加額
です。
売上原価は2,200です。
棚卸資産は100減少しています。
仕入債務は50減少しています。
これらを式に代入すると
ー(2,200)-(▲100)+(▲50)=▲2,150
つまり
- 売上原価で2,200お金が出ていっている
- 棚卸資産で100お金が残っている
- 仕入債務で50お金が出ていった
- よって2,150お金が出ていった
といった計算ができます。
お金の流出なので符号がマイナスになることに注意してください。
人件費支出
「人件費支出」は名前の通り、人件費の支払いです。
「人件費支出」は、損益計算書の販管費に含まれる「給料」などの人件費支出項目を元に計算します。
貸借対照表に「未払給料」や「前払給料」がある場合は、増減額を調整します。
人件費支出の式は、
人件費支出 = - 人件費支出項目 + 未払給料の増加額 - 前払給料の増加額
となります。
- 人件費支出項目は当然お金が出ていきます。
- 未払給料はお金が残ります。
- 前払給料はお金が出ていきます。
具体例で計算します。
例で確認してみましょう。
人件費支出 = - 人件費支出項目 + 未払給料の増加額 - 前払給料の増加額
「人件費支出」は、損益計算書の人件費 250 です。
未払や前払といった項目はありません。
よって250というお金が出ていっています。
お金の減少なので符号を逆にした▲250 です。
その他の営業支出
その他の営業支出は、損益計算書の「販売費及び一般管理費」から、人件費を除いた営業費関連の支出となります。
また営業費についての経過勘定である、「未払営業費」や「前払営業費」がある場合は、増減額を調整します。
先ほどの人件費と同じで、
未払いの場合お金が残ります。
前払いの場合はお金が出ていきます。
よって、「その他の営業支出」の式は、
その他の営業支出 = - 営業費関連項目 + 未払営業費等増加額 - 前払営業費等増加額
です。
具体例で計算します。
例で確認してみましょう。
まず、損益計算書の、その他営業費が 130 となっています。
また、その他資料②を見ると、前払費用は、その他営業費であることが分かります。
前払費用が前期よりも10増加していますので、お金が出ていっています。
これらを計算すると、
その他の営業支出 = - 営業費関連項目 + 未払営業費等増加額 - 前払営業費等増加額
ー(130)+(▲10)=▲140
です。
合計額は間接法と同じ
すべての項目を合計すると760 です。
間接法で算出した「小計まで」と結果と同じになっています。
小計以降については直接法と間接法の計算方法は全く同じです。
試験では直接法も出題されることがあります。
ですので、間接法、直接法のどちらでも計算できるように練習しておくことをおすすめします。
[…] 前回は営業活動によるキャッシュフローを解説しました。 […]
[…] 第2回目の営業活動によるキャッシュフローはこちらからどうぞ […]