こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
今回は物価上昇と賃上げについて、お話ししたいと思います。
物価上昇率は41年振りの上昇率
日本経済新聞によると総務省が発表した消費者物価指数は、前年同月比で4.0%上昇しました。
第2次石油危機の影響で物価が上がっていた1981年12月(4.0%)以来、41年ぶりの上昇率となっています。
2021年の時に生活費が月に30万円だったとすると、2022年は31万2000円です。
当に目に見えてモノの値段が上がっていることを実感しますね・・・
「なんかそれ以上に高くなっている気がする(^^;)」
と思った方もいるのではないでしょうか。
その感覚は間違いではありません。
先ほど紹介した消費者物価指数4.0%は「調査対象となっている522品目すべての総合指数」です。
消費者が頻繁に購入する食料品や上昇率は7.4%(生鮮を除く)でした。
特にエネルギー関連が15.2%で全体を押し上げています。
都市ガス代は33.3%、電気代は21.3%とかなりの上昇率です。
局地的に見てみると、今回の物価上昇は生活をかなり苦しくしていることがわかります。
物価上昇はすぐに実行されるのに対して、賃上げが追い付いていないので、実質賃金が下がりまくっている状況です( ノД`)シクシク…
ちなみに主要各国はそれ以上に物価が上昇しており、米国は6.5%、ユーロ圏は9.2%、英国は10.5%となっています。
ただし物価上昇を最低賃金に反映させる動きが広がっており、日本よりも実質賃金の下落はなさそうです。
ベルギーやフランスなどでは最低賃金に物価スライドを導入しているため、インフレ率に追いつく勢いで賃金に反映されています。
このような状況を考えると、一刻も早く物価高に追いつくような賃上げが求められています。
インフレ手当で対応した企業は全体の6.6%
こうした物価高に対応するため「インフレ手当」を支給している会社があります。
帝国データバンクが11月17日に公表した調査結果によると、インフレ手当を既に支給した調査対象企業は全体の6.6%でした。
この数値だけで見ると「やっぱり会社は給料を上げようとしないんだ・・・」と思われるかもしれませんが、支給を予定している企業の割合は5.7%、検討中の企業は14.1%となっています。
これらを合計すると、全体の26.4%の会社がインフレ手当に取り組もうとしています。
4社に1社が取り組んでいることを考えると、そこそこではないでしょうか。
支給は一時金で対応している会社が多い
ただし支給方法は一時金という形が多くなっています。
インフレ手当に取り組む企業のうち、「一時金」で支給と回答した企業は66.6%、一定期間月額給与に上乗せする「月額手当」と回答した企業は36.2%でした。※複数回答があり
2023年は物価の上昇率が鈍化することが予想されていますが、一時金の支給は雇用側にとって不安ではあります。
一方で経営者側からすると、給与への上乗せはリスクがあります。
おそらく基本給が賞与や退職金のベースとなっているため、手当という形をとっているのだと思われます。
ファーストリテイリングの大幅賃上げ
日本の会社は賃上げに消極的と言われてきましたが、「ユニクロ」などを展開するファーストリテイリングが衝撃の賃上げを発表しました。
なんと2023年3月から国内の約8,400人の従業員の年収を平均15%賃上げを実行するそうです。
職種によっては最大4割引き上げるとか・・・給与30万であれば一気に42万円Σ(・□・;)
すごいですね!
さらに新入社員の初任給は月25万5000円から30万円に、入社1年目から2年目で就任する新人の店長は月29万円から39万円に引き上げるそうです。
同社は、2022年9月にもパートやアルバイトの時給を平均で2割引き上げています。
これら人件費上昇のインパクトはかなり大きく、一連の取り組みで、国内の人件費は15%程度増える見込みです。
ただ、今回の賃上げは、インフレによる社員の生活を支える目的ではなく、海外との賃金格差を是正するために実施しています。
また昇給額についてお一律昇給させるベースアップ(ベア)ではなく、成績次第で決定するとのことです。
日本を代表する企業がこうした賃上げを実行することは、他の企業に波及する可能性を期待できるのではないでしょうか。
ベースアップや昇給については企業経営理論の記事を参考にしてください。
2023年春闘の見通し
そんな中で日本経済団体連合会(経団連)の十倉会長と日本労働組合総連合会(連合)芳野会長による会談が23日に行われました。
つまり2023年の春闘が事実上スタートしました!
賃上げの追い風が吹くの中、どこまで引き上げることができるのか期待されています。
「連合」の主張は、
「物価高で生活は苦しく実質賃金が持続的に上がる経済に変えていくべきだ」
として「ベースアップ」相当分と定期昇給分とを合わせて5%程度を要求しています。
これは1995年(平成7年)以来の高水準の賃上げです。
これに対して「経団連」は、
「『物価動向』を特に重視し企業の社会的な責務として賃上げへの積極的な対応を呼びかける」
として、「ベースアップ」を幅広い企業に対して前向きに検討するよう求めています。
ここ数年の妥結水準は、
- 2020年が2.00%
- 2021年が1.86%
- 2022年は2.20%
です。
おおよそです連合が要求する賃上げに対して、約半分程度のところで妥結しています。
これをそのまま今回に当てはめると2023年は2.5%になります。
冒頭でお伝えした4.0%と比較すると少ないので、物価上昇に追いつくような賃上げは難しいのかもしれません。
また春闘以前にインフレ手当で対応している会社もあり、連合が要求するような賃上げの実現は考えにくいです。
中小企業にも賃上げの動きアリ
私が支援している会社においても、物価上昇に対応しようとする動きがあります。
具体的には初任給の改定とベースアップです。
初任給の改定では採用の訴求力向上を狙っています。
本音では会社に貢献をしてくれるかどうかわからない新人に対して高い給与を払いたくないのですが、賃金を上げていかないと人が集まりません。
そうやって周りの会社がどんどん初任給を引き上げているので、それに合わせて仕方なく上げている会社もあります。
またベースアップでは物価上昇率に応じた賃金にするべく、厳しい収益状況の中でも賃上げを実行しようとしてます。
以前よりも労働環境が流動的になってきたので、優秀な人員を確保したいという思いがあります。
やりがいやモチベーションを維持するためにも、こうした処遇のことを考えていることを従業員に示すことも必要でしょう。