こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
決算手続きの流れを何回かに分けて解説しています。
今回が最終回です。
決算手続きの流れ
期中の取引に関しては、その都度仕訳を行い総勘定元帳に転記します。
そして期末になると財務諸表を作成するために、決算手続きを行います。
具体的な決算手続きの流れは5つです。
- 決算整理前試算表の作成
- 決算整理仕訳
- 決算整理後試算表の作成
- 帳簿の締切り
- 貸借対照表・損益計算書の作成
今回は
「3.決算整理後試算表の作成」
「4.帳簿の締切り」
「5.貸借対照表・損益計算書の作成」
について解説します。
決算の流れを最初から振り返りたい方は、「1.決算整理前試算表の作成」からどうぞ!
決算整理後試算表の作成
決算整理後試算表の作成は、前回の決算整理仕分けで修正した内容を決算整理前試算表に反映することで完成します。
具体的には「精算表」を作成します。
「決算整理前残高試算表」の内容を左側に記入します。次に決算整理仕訳を修正記入欄に記入していきます。
最後に、その修正を適用した残高を損益計算書欄と貸借対照表欄に記入します。
損益計算書欄には、収益と費用に分類される勘定科目の残高を記入します。
貸借対照表欄には、資産・負債・純資産に分類される勘定科目の残高を記入します。
この「精算表」を見れば、元の「総勘定元帳」の残高から、決算整理を経て、財務諸表が作成されるプロセスが分かります。
試験でも「精算表」の穴埋め問題などがよく出題されています。
勘定科目が資産・負債・純資産・費用・収益どれにあたるか覚えることで、穴埋め問題は解けるようになります!
帳簿の締切り
決算整理が終わると、それぞれの勘定科目の金額が確定します。
次は「帳簿の締切り」を行います。
帳簿の締切りは2つの財務諸表ごとに行います。
- 損益計算書に入る「収益・費用の締切り」
- 貸借対照表に入る「資産・負債・純資産の締切り」
いよいよ完成まで近づいてきました(^^)
損益計算書に入る「収益・費用の締切り」
全ての収益と費用に関する勘定を「損益勘定」に振り替えます。
収益の勘定は「売上」が該当します。
売上が1,000あった場合、これを振り返る仕分けは、
借方 | 貸方 |
売上 1,000 | 損益 1,000 |
となります。
売上の勘定を借方に書くことで相殺して、代わりに損益の勘定にします。
費用については「仕入」等が該当します。
仮に仕入が500あった場合の仕分けは、
借方 | 貸方 |
損益 500 | 仕入 500 |
となります。
費用である仕入を貸方に記載するとマイナスすることになります。
仕入勘定を相殺して、損益勘定に振り替えます。
収益と費用の差額は500です。
この損益勘定の残高を、繰越利益剰余金勘定に振り替えます。先ほどの例では、
借方 | 貸方 |
損益 500 | 繰越利益剰余金 500 |
儲けが出ていますので、勘定科目は「繰越利益剰余金」です。
これで、損益勘定の差額がなくなります。
これらの損益勘定を総勘定元帳に転記する感じでまとめていきます。
この損益勘定を基にして、財務諸表の「損益計算書」を作成します。
貸借対照表に入る「資産・負債・純資産」の締切り
資産・負債・純資産の締切りでは、残高を次期に繰越します。
方法は2つあります。
- 英米式決算法
- 大陸式決算法
英米式決算法
英米式決算法は、「仕訳を使わない簡便な方法」です。
英米式決算法では、資産・負債・純資産の勘定に、「次期繰越」と記入して貸借を一致させて締切ります。
それぞれの勘定科目の取引をまとめて、差額が出ている分を「次期繰越」として合わせます。
そして次期の期首の日付で「前期繰越」と記入して、残高を次期に繰越します。
次期繰越分は繰越試算表にまとめます。
繰越試算表は、資産・負債・純資産の勘定の次期繰越額を表にしたものです。
英米式決算法では、この繰越試算表を基にして最後の手順である「貸借対照表」を作成します。
大陸式計算法
大陸式決算法は、仕訳を使って帳簿を締切る方法です。
大陸式決算法では、資産・負債・純資産の勘定の残高を「閉鎖残高」勘定(もしくは「決算残高」勘定)に振替えてから締切ります。
例えば、資産に関して期末の現金が1,000、売掛金が500あったとします。
これらの勘定を0にして閉鎖残高に振り替えます。
借方 | 貸方 |
閉鎖残高 1,500 | 現金 1,000 |
売掛金 500 |
資産の部は貸方に記載すると、減らすことができるので打ち消します。
また負債・純資産において買掛金、資本金、繰越利益剰余金が500ずつあった場合、これらも0にして閉鎖残高に振り替えます。
負債・純資産は借方に記載することで減少させることができます。
借方 | 貸方 |
買掛金 500 | 閉鎖残高 1,500 |
資本金 500 | |
繰越利益剰余金 500 |
このような処理をすることで、閉鎖残高勘定の借方には資産の勘定の残高が転記され、貸方には負債・純資産の残高が転記されます。
借方合計と貸方合計は一致します。
大陸式決算法では、この閉鎖残高を基に貸借対照表を作成します。
大陸式決算法では、次期の期首に開始仕訳を行います。
これにより、各勘定の残高が次期に繰越されることになります。
先ほどの例では、開始仕訳は、次のようになります。
借方 | 貸方 |
現金 1,000 | 開始残高 1,500 |
売掛金 500 |
開始残高 1,500 | 買掛金 500 |
資本金 500 | |
繰越利益剰余金 500 |
貸借対照表・損益計算書の作成
いよいよ最後は財務諸表の「貸借対照表」と「損益計算書」を作成します。
帳簿の締切りを行った後で、最後に貸借対照表と損益計算書を作成します。
貸借対照表では、
- 資産の部(流動資産、固定資産、繰延資産」
- 負債の部(流動負債、固定負債)
- 純資産の部(資本金、資本剰余金、利益剰余金)
に分類します。
英米式決算法の場合は、「繰越試算表」に、大陸式決算法では、「閉鎖残高」を基にして貸借対照表を作成します。
なお、貸借対照表の項目では、マイナス表示される項目があることに注意しましょう。
マイナス表示される主な項目は、
- 貸倒引当金
- 減価償却累計額
- 自己株式
です。
これらの勘定があるときには、貸借対照表の所定の位置にマイナスで表示します。
損益計算書では、
- 収益(売上高、営業外収益、特別利益)
- 費用(売上原価、販売費及び一般管理費、営業外費用、特別損失)
損益計算書は、損益勘定を基に作成します。
損益勘定に転記されている収益・費用の残高を損益計算書に記入します。
損益勘定から損益計算書に記入する際は、売上は売上高に、仕入は売上原価として表示します。
また、繰越利益剰余金は当期純利益と表示します。
最後に
全4回にかけて、決算の流れを解説しました。
いろんな図を使って、できるだけわかりやすく「見える化」にチャレンジしてみましたが、やはり難しいですね(^^;)
私もあらためて勉強するきっかけになってます。
今後もこのように解説をいっぱい書いて、皆さんのお役に立てるように頑張ります!