こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
今回は目標設定をする時の要件について解説します。
私は仕事で目標設定の支援をしています。
改善活動を実行するときに必ず目標を設定します。
目標がないと成り行きで仕事が進んでしまうので、競合他社との競争に勝つことができません。
自社で目標設定が難しい会社に対して、目標設定の仕方や立てるべき目標の着眼点のアドバイスをしています。
特に私が力を入れているのが、その会社で作る一番最初の目標設定です。
目標設定に書ける時間は、最低でも約3か月、16時間以上をかけて設定しています。
なぜそこまで時間をかけるかというと「立てる目標の制度によって効果が全く違うから」です。
目標設定がしっかりできていないと、その後の活動に大きく影響してしまいます。
私が実務の時にどういった点に注意しているかを3つにまとめました。
3点は以下の通りです。
- 会社のビジョンとリンクしているか
- 具体的な目標であるか
- 達成基準が明確であるか
ではそれぞれの要素について解説します。
会社のビジョンとリンクしているか
まず立てる目標が会社の目指す方向と合っているかどうかです。
つまり会社が「こういう方向性を目指したい」というビジョンを実現できる目標を立てているかです。
例えば、「収益性の高い会社を目指す」といったビジョンがあるとします。
その時に、部門目標としてそれを達成する目標を具体的にします。
営業部門であれば、新規受注件数を増加させることや訪問件数の増やすことなどが挙げられます。
製造部門であれば、不良品の削減や製造工程の改善などです。
また挙げた目標が今取り組むべきなのか、優先順位も考えなくてはいけません。
例えば製造部門で不良品の多さが問題だった場合に、最先端の技術を習得といった目標だと現状の問題点とリンクしていません。
課題を抽出している段階では、いろんな目標をテーブルに挙げますが、その中から「何が重要か」を検討しなければなりません。
これらのことは当たり前のことですが、ついつい自分の部署だけメリットがあるような目標を立ててしまうことがあります。
個別で起こっている問題点を会社全体として取り組むべきか、俯瞰して検討して見てください。
せっかく時間をかけて改善に取り組むのであれば、効果の高い目標に取り組みましょう。
ちなみにですが、会社のビジョンに目標をリンクさせるには、会社の経営目標を全体にアナウンスしなくてはいけません。
また社員がそれを理解しなければなりません。
中にはそういった会社の経営計画を作成していない、従業員に浸透させていない会社があります。
この状態で目標を作ると、会社のビジョンとリンクしないことは当然です。
「ビジョンなんか抽象的なものを作って意味あるの?」
って思われる方もいますが、ビジョンは組織運営には非常に重要です。
会社の経営目標を定めて全社員を一致団結させなければ、効果的な企業活動はできません。
資源が多くない中小企業ではなおさらです。
私はビジョン作成や立てた目標を計画発表会で宣言してもらうなど、全社を巻き込んだ活動になるよう心掛けています。
具体的な目標であるか
次のポイントは「目標が実行できる状態に落とし込めているか」です。
会社のビジョンは抽象的な内容が多いです。
つまり実際に行動できる状態になっていません。
組織のメンバーがどう行動すればよいかわからないと、当然に目標達成することはできません。
では目標を具体的にするにはどうすれば良いでしょうか?
私は次の点を決めて具体的にしてもらっています。
- 掲げた目標
- どこまでするか
- 何をするか
- 誰がするか
- いつまでにするか
マーケティングにも「誰に」「何を」「どのように」といった感じで明らかにしていきますが、当然目標も明らかにしていきます。
まずは掲げる目標を設定します。
簡単に言うと「テーマ」です。
例えば、
- 「不良品を削減して生産性を向上させる」
- 「新人の人材育成を行い、全体のレベルアップを図る」
といった感じです。
この目標設定はその期間に達成しなくても良いです。
不良品や人材育成は半年や1年で終わらないです。
それを次の「どこまでするか」で設定します。
「どこまでするか」は「達成基準」を決めることです。
先ほどの不良品の削減で考えると、ある期間(上期)でどこまでできれば達成と判断するかを設定します。
例えば、
「不良率を1%から0.9%にする」
といった感じです。
掲げた目標(不良品の削減)は継続して取り組む必要がありますが、中間地点として達成基準(0.9%まだ下げる)を設定することで、最終的な目標まで到達しやすいです。
達成基準を決定したら実際に行動を決めます。
それが「何をするか」です。
不良品の削減を目標に掲げ、達成基準を1%から0.9%に設定した場合、それを具体的にどう達成するか行動を決めます。
行動の例は以下の通りです。
- 不良の原因を測定する
- 不良原因を特定する
- 標準書を作成する
- 標準書を共有する
- 標準書通りにできているかパトロールする
このように細かく決めます。
そしてそれぞれの行動に対して、誰がするかを決めます。
できれば一人一役としてメンバー全員を巻き込んでください。
そして最後にいつまでに実行するかを決めてください。
期限を決めておかないと、いつまでたっても実行されません。
これは後から計画通りにできていなかった場合に、怒るわけではありません。
このようにどれくらいの時間が必要かを見積もることで、目標設定ができる人材を育成します。
仮に遅れている場合は、どんな問題があるのか、目標に無理があったかなど原因を明らかにしていきます。
こうしたことを決めていけば、具体的な目標を設定できます。
達成基準が明確であるか
最後に大事なポイントは「達成基準を明確にする」です。
目標設定する時に大事なのは「どうやったら達成したといえるのかを客観的に判断できるか」です。
これがあいまいになってしまうと、振り返るときに評価することができません。
例えば「不良品の削減」を目標に掲げた場合、
- 不良品を作らないよう徹底する
- 不良率を1%から0.9%に下げる
2つの達成基準を比較します。
「1」の場合はどのような状態になったら「徹底できた」と言えるでしょうか?
- みんなが不良品を0にすれば達成なのか?
- 標準書を作成してメンバーに浸透させたら達成なのか?
- 不良の原因を突き止めて共有すれば達成なのか?
徹底するという言葉は便利なのですが、人によって達成できたかの判断が分かれてしまいます。
人によっては「不良品0」が達成という人もいます。
また別の人は「標準書作成・共有」が達成と感じる人もいるかもしれません。
つまり、このような目標になってしまうと、
昇格させるべきか?昇給させるべきか?
その期間の評価が判断できませんよね(^^;)
「2」の0.9%と設定すればどうでしょうか?
結果を集計すれば客観的に判断できます。
私は達成基準に対しては厳格さを求めます。
達成基準としては主に2つの方法で決めます。
- 数値基準
- 状態基準
数値基準は売上高や歩留まり、不良率といった時に使用します。
状態基準は5Sのような整理整頓、人材育成の目標で使用します。
整理整頓はビフォーアフターの写真で検証すると良いですね。
ちなみに実務では少しあいまいでも、その目標で進めることもあります。
数値や状態をこだわり過ぎると、メンバーの意欲をそいでしまうこともあります。
しっかり議論はしますが、ある程度で止めています。
中には妥当な数値がわからないこともあります。
その場合は活動を進めながら後から妥当な達成基準を決めます。
例えば、不良率の削減を目標にした場合、現状の不良率を把握できていないこともあります。
そんな事あるのか!?って思いますよね。
ありました(^^;)
その場合は最初の2,3か月は集計だけします。
他の目標でも「現状把握」ができていなければ、最初の行動は現状がどうなっているか調べてもらいます。
調べた数値等の集計を行い、現状把握ができてから妥当な数値を判断します。
とにかく達成基準はこだわってください!
まとめ
今回は会社の目標を設定する時に押えるべき3つの要素を解説しました。
もう一度振り返ると
- 会社のビジョンとリンクしているか
- 具体的な目標であるか
- 達成基準が明確であるか
この3つです。
目標設定は計画を立てるだけでも人材育成につながります。
会社の仕組みとしてしっかり取り入れていきましょう。
最後に「成功体験を積もう」
こうした目標作りですが、個人の意欲に任せてしまうと、ムラができてしまします。
また次第に取り組みがなくなってしまいます。
「うちの社員は自主的に行動しない」
と嘆いている経営者の話を聞きますが、他人が作った会社で主体的に動くことまで求めるのは正直難しいです。
ただどこの会社に行ってもしっかり働いてくれる社員さんはいます。
この方達の意欲を刺激するような「仕組み」を作るとこが大事です。
目標管理をテーマにすると以下の感じです。
- 半期に1回目標を設定する
- 月に1回進捗報告をする
- 上期末・下期末には振り返りを行う
これらのことを会社の行事としてやり切って下さい。
そうすると従業員もそれについてきてくれます。
もし従業員に目標管理を求めるのなら、仕組みを確実に動かすことが求められます。
こうした仕組みがあると、社員の中でできる人とできない人の差が出始めます。
つまり意欲的に仕事をしてくれる人材を見極めることができます。
ぜひ挑戦してください!
最後に目標設定でお伝えしたいことがあります。
それは、
「目標は比較的達成しやすいものでOK」
です。
目標作りになれていない組織にありがちですが、簡単な目標を達成しても意味がないと思って、難しい目標にしてしまうことがあります。
しかし高すぎる目標は従業員の意欲をそぎます。
小さい目標を達成することで、
「やればできるじゃん!」
と思ってもらうことが大事です。
こうした小さい成功体験を積むことで、大きな挑戦ができるようになります。
最初は歯がゆいかもしれませんが、根気強く取り組んでください(^^)