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ロックの「目標設定理論」を用いて改善・5S活動に活かそう!

投稿日:2021年10月30日 更新日:

こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。

私は中小企業診断士試験にストレート合格し、40歳から未経験でコンサルタント会社に転職しました。

このブログでは勉強や転職・実務といった観点で経営に関することを発信しています。

今回はロックの提唱した経営理論「目標設定理論」が、私が実務で行っている改善活動と一致する要素が多いので紹介します。

以前マズローの欲求5段階説と関連付けて5S活動の有効性を説明しました。

今回は経営理論と5S活動の2回目です。

ロックの「目標設定理論」とは

目標設定理論は、ロックという20世紀中盤の心学者が提唱した考え方です。

ロックの目標設定理論とは、目標がモチベーションに及ぼす効果を研究し、1968年にアメリカの心理学者ロックにより提唱された理論のひとつです

モチベーションの違いは、目標設定の違いによってもたらされているとした考え方です。

本人が受け入れていることを前提に、曖昧な目標より明確な目標を設定した方が結果として業績は上がり、難易度の低い目標より高い目標を設定したほうが同様に業績は上がることが確認されています。

例えば、単に作業として黙々と業務をこなすより、目的や意味、そしてその仕事の意義を明確に理解した方が高いモチベーションを維持することができます。

また、「とにかく出来るだけ頑張れ」と言われるより、「今日中に10件獲得出来るよう頑張れ」と言われた方が目標が明確で具体的であり、目標の達成に向け高いモチベーションを維持することができます。

 

目標設定理論の7つのステップ

ロックは、効果的な目標設定に向け7つのステップを紹介し、明確な目標設定を行うことで高いモチベーション維持が可能になるとしています。

このステップは私が行っている改善活動や5S活動と一致します。

①目的や課題を明確化する

まずは「なぜ目標設定するのか」「何を克服しようとしているのか」を明らかにします。

よく「新規獲得〇〇件」「売上前年比〇%アップ」といった細部の目標をすぐに立てますが、なぜその目標が必要なのかを考えなければいけません。

私は改善活動を行って何を達成しようとしているのかを話し合います。

人材育成のためなのか、不良品が多くなっているのか、新事業を黒字化させるためなのか・・・

数値目標を検討する前に、どういった課題があるのかを考えます。

 

②業績や成果の計測方法を明確化する

次に目標や課題を克服できたかどうかを測定方法を明確にします。

例えば不良品であれば「不良率」や「損失金額」などが該当します。

新事業の黒字化であれば「部門利益」を考えます。

人材育成といったものは数値で測ることは難しいです。

一つの方法として「スキルマップ」があります。

スキルマップには技術の習得度合いをレベルで判断します。

  • レベル1:指導を受けながらできる
  • レベル2:繰り返し作業なら独力でできる
  • レベル3:イレギュラー対応も独力でできる
  • レベル4:作業の指導ができる

このように判定することで、計測することができます。

 

③達成すべき基準とターゲットを具体化する

いわゆる「達成基準とターゲット設定」です。

前にも書きましたが、達成基準は「数値目標」か「状態目標」を設定します。

なぜ明確に知る必要があるのでしょうか?

それは、達成したかどうかを客観的に測定可能にしないと検証や評価が難しくなるからです。

例えば「不良品を削減する」という目標があった場合、削減するだけではどこまで削減すれば達成なのかがわかりません。

また不良品の削減といっても、どの工程なのか、どの不良原因を対策するのかを決めなくてはいけません。

一番不良が出ている工程に絞り、一番多い不良原因に絞ることで高い効果を得ることができます。

 

④目標達成までの時間と範囲を明確に定める

次に目標達成までのスケジュールを決めます。

目標管理において、いつまでに達成するかを決めておくことは重要です。

会社の目標であれば、月ごとに設定することが多いです。

私は会社全体の改善活動に関わりますので、半期や一年ごとのスケジュールで設定します。

先のことはわかりませんが、期限を決めて活動しなければ先延ばしになってしまいます。

目標設定の際に私は、期限内に達成できるかどうかを重要視していません。

環境や状況が変わることで、当初の目標が陳腐化することもあるからです。

特に経験がないことに関してはよくあります。

取り組んでみて先の見通し判断できるタイミングで、目標数値を決めることもあります。

 

⑤目標に優先順位をつける

目標の基準やスケジュールが決まれば、次に優先順位を決めます。

たくさん目標を立てることは良いことですが、一度にすべてを目標に取り組むことが難しい場合があります。

その場合、どれに取り組むべきかを決めなければなりません。

優先順位をつけるには、次の⑥にある困難度と重要度も関係します。

 

⑥目標達成の困難度と重要度を定める

⑤の優先順位を決めるために、目標の困難度と重要度を定めます。

目標の困難度と重要度が決まれば優先順位をつけることができます。

 

どうやって目標の重要度を測定するかですが、リスクアセスメントで使用するリスク見積もりがおすすめです。

これは事故が起きやすい建設業で、どこの箇所が特に危険性が高いかを分析する時に使用します。

「事故が起きる可能性」と「事故の影響」を3段階で評価します。

ポイントは以下の通りです。

  • 「大」は3ポイント
  • 「中」は2ポイント
  • 「小」は1ポイント

これをマトリックス図にしにて、掛け算を行います。

リスクの見積もり例 事故の可能性「大」③ 事故の可能性「中」② 事故の可能性「小」①
事故の影響「大」③ 9ポイント 6ポイント 3ポイント
事故の影響「中」② 6ポイント 4ポイント 2ポイント
事故の影響「小」① 3ポイント 2ポイント 1ポイント

この中で特に取り組まなければいけないのは事故の可能性と影響が共に高い9ポイントに当てはまるものです。

6ポイントも早期に取り組まなければいけませんね。

それ以外も取り組んだほうが良いですが、一度に取り組むことは難しいので後にします。

このような形で数値化すると、立てた目標の重要度が明らかになってきます。

仕事の優先度で置き換えると「緊急性」と「会社への影響」といった感じでマトリックス図にすると良いです。

人は個人によって価値観が違います。

そうすると優先したい仕事がずれていることがあります。

そうしたことがないように、目線をしっかり合わせておきましょう。

 

⑦目標達成に必要な調整を行う

最後に目標達成に必要な調整を行います。

いざ目標に向かって取り組むといっても、上司からのサポートがないとできないこともあります。

どういったサポートが必要なのか、必要な道具や備品等はないか、誰が担当するのか・・・

考えるといっぱいあります。

しかし実際に実行してみないとわからないことがほとんどです。

計画を立てることは重要ですが、時間をかけすぎるともったいないです。

やりながら調整する感じで十分です。

計画変更等が考えられる場合に、上司に相談できるようにしておきましょう。

 

モチベーションに与える影響は4つ

ロックはモチベーションに影響を与える要素を4つにまとめました。

それは、

  • 目標の難易度
  • 目標の具体性
  • 目標の受容度
  • フィードバックの有無

これらの要素を統合的に考える必要があります。

目標の難易度

最初の目標の難易度については、

「ある程度高い目標設定」

が重要としています。

ある程度、難易度の高い困難な目標が強い動機づけにつながり、高いモチベーションを生み出します。

この「ある程度」がポイントです。

 

あまりにも難易度が高すぎるとどうなるでしょうか?

目標達成が不可能だと最初からあきらめてしまいます。

このような状態では動機付けにつながりません。

モチベーションを高める観点からは「努力すれば達成できる可能性のある範囲で、できる限り高い目標設定をする」が一番適切です。

 

目標の具体性

次は目標の具体性です。

定量的かつ具体的な目標が強い動機づけにつながり、高いモチベーションを生み出します。

目標がしっかり数値化していると、わかりやすいですよね。

「なるはやで」とかではイメージすることはできません。

目標達成度の測定が容易であり具体的であれば、達成に向けて必要な努力も具体的に想像しやすいです。

どうすれば目標達成できるか、実行手段が見えてくるので、モチベーションが高まるということです。

 

目標の受容度

目標の受容度とは「目標に取り組む人が納得しているかどうか」ということです。

目標は、他者が一方的に押し付けるのではなく、本人が受け入れていることが重要です。

本人が理解・納得する方が強い動機づけにつながり、高いモチベーションを生み出します。

この「納得性」というのは非常に重要です。

評価制度においても、評価内容よりも納得しているかどうかを重要視しています。

 

フィードバックの有無

最後はフィードバックの有無です。

つまり進捗や結果を本人に伝えているかということです。

目標の達成度合いを定期的に確認し、目標の進捗度を示すことにより、高いモチベーションを維持することができます。

自身では見えずらくなってしまう目標までの距離感や道筋を見失わないよう、定期的なフィードバックでフォローしていくことが大切です。

 

改善活動への応用

ロックの目標設定理論をまとめると

「人は、明確で、難易度が少しだけ高い目標に取り組む時に、最も意欲が高まる」

といった感じです。。

目標があったほうが張り合いがある、というのは、なんとなく理解できるものではないでしょうか?

例えば、私は趣味でギターを弾きます。

目指す目標がなくだらだら練習しているよりも、

「3か月後にライブをするから楽器の練習を頑張る」

といった明確な目標があるとモチベーションが高まります。

 

5Sは、まさに「明確」で「難易度が少し高い」目標を設定できる活動です。

まず、職場がきれいに整理整頓された姿というのは、比較的描きやすいものです。

例えば「この棚はいらないなあ」とか「ここの配線がごちゃごちゃしているのをすっきりさせたいなあ」という思いが、そのまま明確な職場の「あるべき姿(=目標)」になっていきます。

5Sの難易度も、簡単すぎず、かといって難しすぎないレベルです。

例えば「棚がない状態」を実現するには、棚に置いているもののうち、何が不要なものか。

必要なものは、棚が無くなった後にどこに収納するか、ということは、ある程度頭を使わなければ答えは出ません。

しかしながら、考えれば答えは必ず出るものです。売上向上や生産性の方策を考えるよりは、ずっと簡単です。

また、ロックさんは「目標に対するフィードバックがあれば、一層やる気が上がるよ」とも言っています。

5Sは、他人がフィードバックしやすい活動と言えます。

職場が整理整頓されているかどうかは、誰が見てもわかります。だから「きれいになっているね」「ここはもう少し改善の余地があるね」というフィードバックがさかんに行われるのです。

職場がきれいになっていくことを、自分自身で実感できるという意味では、活動結果そのものがフィードバックになっているとも言えるでしょう。

 

最後に「中小企業診断士として」

今回はロックの目標設定理論に絡めて5S活動の有効性について説明しました。

私は中小企業診断士として改善活動をサポートしています。

その時にこういった理論を念頭に置くことで、効果的なコーチングを行うことができます。

当初は試験に合格するために丸暗記していましたが、実務でも非常に重要であることを実感しています。

会社によっては効果的な目標になっていないことや、目標を設定していない場合があります。

そういった時に目標を一緒になって作成します。

しかし、私は会社の細かい業務のことはわかりません。

その中でどのように目標設定するかは「参加メンバーの気付きを促す」ことです。

目標はどういった問題や課題を克服しようとしているのか、本当に困っていることを解決できる取り組みなのか・・・

せっかく時間をかけて取り組むので、あまり効果がない目標に取り組みたくはありません。

それを議論しながら見極めていきます。

非常に難しい仕事ですが、「取り組んでよかった」といってもらえると嬉しいです。

達成基準やスケジュールといったことは、意外と抜け落ちてしまっていることがあります。

こうした理論を身につけることで、決めるべき項目を網羅できます。

皆さんも中小企業診断士に興味があれば、一度軽くやってみてください。

役に立つ内容が多くておすすめです!

 

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