企業経営理論

労働条件について(企業経営理論)

投稿日:2020年12月12日 更新日:

こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。

今回は労働条件について解説いたします。

労働条件についてはかなり奥が深いです。

社労士の試験では深く勉強しますが、中小企業診断士は企業経営理論の一部で登場します。

サラッとどんどん行こうと思います(^^)

 

労働条件を決めるもの

労働条件の決定はいろんなものがあります。

どのようなものがあるでしょうか?

こんな感じです。

  1. 労働基準法
  2. 労働協約
  3. 就業規則
  4. 労働契約

効力が高い順番で並べています。

やはり労働基準法は「法令」ですので、この中で一番効力が高いです。

労働基準法

労働基準法は「労働者の保護を目的とした法律」です。

本来は労働者と使用者は対等な立場で労働条件を決定すべきですが、実際は労働者のほうが立場が弱いです。

 

労働基準法では、労働者の最低基準を定めたものになっています。

会社はこの基準よりも下回る条件で労働契約を結ぶことはできません。

 

労働協約

労働協約は「労働組合と使用者の間で結ぶ協定」です。

一般的な労使の取り決めは「就業規則」ですが、使用者が作成するので労働者にとって不利になってしまうことがあります。

労働協約は就業規則よりも優先されます。

就業規則は労働協約に反してはならないので、労働者にとっては不利な条件から守ってくれます。

 

就業規則

就業規則は会社の法律みたいな感じです。

労働条件や賃金規定、その他規定が書かれています。

 

就業規則は常時10人以上労働者を雇う使用者は作成する義務があります。

また作成するだけではなくて、労総基準監督署長に届けなくてはいけません。

 

この10名以上の労働者は正社員だけでなく、アルバイト・パートも含みますので注意が必要です。

 

就業規則には大きくわかると3つの事項にわけられます。

  • 絶対的記載事項:必ず記載しなければならない

絶対的記載事項には

「労働時間に関する事項」「賃金に関する事項」「退職に関する事項」

といった事項です。

これらは必ず記載しなければなりません。

 

  • 相対的記載事項:定めをする場合は記載しなければならない

相対的記載事項は

「退職手当に関すること」や「臨時の賃金」

などです。

 

  • 任意的記載事項:使用者が自由に記載する

任意的記載事項は会社が自由に記載することができますが、当然労働協約や法令に違反することはできません。

 

ちなみに就業規則の変更は条件があります。

変更する場合は、

「労働者の過半数で組織する労働組合があれば、労働組合の意見を聞く必要がある」

もし労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は、

「労働者の過半数を代表する意見を聞く必要がある」

といった感じです。

あくまで意見を聞くので、承認を得るわけではありません。

 

労働契約

労働契約とは、

「労働者と使用者の間で結ぶ契約」

です。

労働契約を結ぶときは労働条件を明示することが義務です。

労働条件は賃金や労働時間といった内容です。

 

当然労働条件は、効力が高い「労働基準法」や「労働協約」「就業規則」に違反することはできません。

労働契約の期間は通常の採用であれば特に定めのない契約になります。

期間の定めをする場合については、3年までとなっています。

期間が長時間になると労働者の自由を拘束する恐れがあるためです。

 

一部例外もあります。

以下の場合は労働期間を5年とすることができます。

 

  • 医師や弁護士など、高度の専門知識を持つ労働者
  • 60 歳以上の労働者

念のため抑えておきましょう

心理的契約

心理的解約というのは、

「労働者と使用者の間に明文化された契約書を超えて期待する”暗黙の了解”」

 

労働者は明文化された労働契約が改善されるかどうかにかかわらず、頑張って仕事に取り組む傾向があります。

こういった状態を心理的契約がある状態と言います。

このような状態になると、明文化された契約以上の成果を期待することができます。

 

労働時間

次は労働時間について改札いたします。

法定労働時間

法定労働時間では1日や1週間で働く時間を制限しています。

 

  • 1日の法定労働時間は休憩を除いて8時間
  • 1週間の法定労働時間は休憩を除いて40時間

使用者はこの時間を超えて労働をさせることはできません。

 

例外が一部ありますので紹介します。

それは「特例措置対象事業所」です。

例外の条件は2つあります。

一つ目は「常時使用する労働者が10人未満」です。

もう一つは「特定の事業に限る」です。

特定の事業は以下の通りです。

  1. 小売り卸売などの「商業」
  2. 映画館などの「映画・演劇業」
  3. 病院などの「保健衛生業」
  4. 旅館や飲食店などの「接客・娯楽業」

この場合は週 44 時間までの労働時間が認められています。

いきなり覚えるのは難しいので、とりあえず「そういったものがある」という認識で大丈夫です。

 

しかし実際はこの時間を超えて労働しています。

そのためには36協定というのを労働者と結んで、残業をさせる必要があります。

 

変形労働時間

基本的には法定労働時間は1日8時間、1週間で40時間ですが、その通りに収まらないことがあります。

サービス業ではシフト制なので、週によっては40時間以上働くこともあります。

また経理担当の場合は、月末に処理が多くそれ以外はそこまで忙しくありません。

 

この場合1日8時間より多く働くことがあったり、1週間で40時間よりを超えることがあります。

逆に閑散期になると、8時間以内に仕事が終わったり、40時間未満になることがあります。

このような場合に変形労働時間を採用すれば、1日8時間を超えても時間外労働ににならないようにできます。

 

変形労働時間制には4つほどのパターンがあります。

 

変形労働時間の種類 内容 手続き
1 ヶ月単位の変形労働時間制

※特例措置対象事業所であれば週平均44時間

1 ヶ月間以内の一定期間の労働時間の平均が、1 週間の法定労働時間を超えない限り、特定の 1 日の労働時間が 8 時間を超えても良い。 労使協定+届出or就業規則
フレックスタイム制

※特例措置対象事業所であれば週平均44時間

1 ヶ月以内の一定期間の総労働時間を定めておき、労働者が始業や終業の時刻を自主的に決定できる制度。 労使協定+就業規則
1 年単位の変形労働時間制

 

1 年以内の一定期間の労働時間を平均して、1 週間あたりの労働時間が 40 時間を超えない限り、特定の 1 日の労働時間が 8 時間を超えても良い。

季節により繁忙期と閑散期がある場合は、この制度で柔軟に 1 日あたりの労働時間を設定可能

※1日10時間、1週間52時間が限度

労使協定+届出
1 週間単位の変形労働時間制

 

1 週間の労働時間が 40 時間を超えない限り、特定の 1 日の労働時間が 8 時間を超えても良い

※労働者が 30 人未満で、特定の業種のみ導入できる制度。(小売業、旅館、料理店、飲食店)

労使協定+届出

 

休憩

休憩時間は一定の条件のもと与える必要があります。

労働時間 休憩時間
6時間を超える場合 45分間
8時間を超える場合 60分間

ポイントは「超える」というとことです。

例えば、労働時間が6時間であれば休憩を与える必要はありません。

労働時間が8時間の場合は休憩時間は45分です。

会社によってはこれよりの条件をよくしていることがありますが、条件が良い場合は問題ありません。

上記の休憩時間よりも悪い条件はいけません。

 

休憩の与え方は、

  • 原則、労働時間中に一斉に付与
  • 自由に利用させる

必要があります。

休日と休暇

休日と休暇という言葉があります。

どちらも似ている言葉ですが、定義は明確に違います。

休日とは「労働者が労働義務を負わない日」です。

休暇とは労働者が労働する義務がある日に、会社がその労働義務を免除する日」のことです。

 

休日については毎週1日は与えないといけません。

また変形休日性も認められております。

この場合は、4週間で4日以上の休日を与えれば良いことになります。

 

休暇については年次有給休暇、育児休業、介護休業、看護休暇などがあります。

ここではその中で有給休暇について解説します。

年次有給休暇

年次有給休暇は、労働者が休日以外でも休みを得ることができる制度です。

労働者は一定の要件を満たせば権利を得ることができます。

使用者は労働者が求めると、年次有給休暇を与えなければなりません。

年次有給休暇を与えることは義務となっています。

 

年次有給休暇の取得条件は2つあります。

  • 雇い入れの日から6か月以上が経過している
  • 労働日の8割以上を出勤している

8割の出勤には、

  • 業務上の負傷・疾病による休業
  • 産休、育児休業や介護休業
  • 年次有給休暇を取得した日

これらもこれらも出勤したとしてカウントします。

有給休暇の日数ですが、勤続6か月で10日与えられます。

その後勤続年数が長くなるにつれて付与される日数が長くなります。

最高で年間20日取得することができます。

 

労働時間が短いパート・アルバイトはどうなるでしょうか?

実は年次有給休暇は存在します。

ただし、フルタイムと同じ日数ではないことがあります。

労働日数に応じて比例して付与することになります。

ないわけではありませんので、ご注意ください。

 

お伝えした通り、有給休暇はいつでも取ることができます。

しかし、有給休暇により会社の運営に支障が出る場合は「時季変更権」が認められています。

時季変更権とは

「請求されたタイミングでは通常の事業運営をすることが困難な場合、使用者が時期の変更を行うことができる」

という制度です。

 

ちなみに2019年4月から、全ての使用者に対して 「年5日の年次有給休暇の確実な取得」が義務付けられました。

 

時間外労働(36協定)

労働基準法では原則として法定労働時間を超えて労働をさせてはいけません。

一瞬「えっ!?」てなりますよね(^^;)

毎日平気で残業しているんですけと・・・

 

実は業務上どうしても時間を超えて労働しなければならないことが想定される場合は、あらかじめ届け出をしておけばよいです。

労使で協定を結び、労働基準監督署長に届けることで時間外労働を行うことができます。

この協定のことを「36協定」といいます

「さぶろくきょうてい」と読みます。

 

労使の協定に関しては下記の2パターンがあります。

  • 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合
  • 無い場合は労働者の過半数を代表する者と書面による協定

結ぶことで、労働時間の延長や休日の労働が可能になります。

 

労働時間の規定に含まない人がいる

実は一部の労働者にはこれまでの規定が適応しないことになっています。

それが主に4つあります。

  1. 管理監督者
  2. 農水事業者
  3. 機密の事務に従事(秘書など)
  4. 管理断続的労働従事者(警備員等)

これらの方は、労働時間・休憩・休日に関する規定が適応外になります。

 

1の場合に関しては役職名が管理監督者であっても実態が異なることがります。

管理監督者は一心同体の地位にあります。

実態が伴っていない管理監督者の事例では、ファミレスの店長などが問題がありました。

その場合、残業代の免除にはなりません。

 

みなし労働時間

みなし労働時間制とは、労働者の働いた時間を把握することが難しい場合に、一定時間働いととみなす制度です。

みなし労働時間には大きく2つあります。

  • 事業外労働
  • 裁量労働

です。

 

事業外労働のみなし労働時間制

事業外労働のみなし労働時間制は、

労働者が事業場の外で働いていることで時間管理ができないケースに適応します。

具体的には、営業担当が外で仕事をしている場合です。

外にいると当然ながら労働時間の把握は難しいです。

そんな時には、就業規則で定めた所定労働時間を適応します。

 

裁量労働のみなし労働時間

裁量労働のみなし労働時間制は、

  • 専門業務型
  • 企画業務型

の2つがあります。

専門業務型は、研究開発などの専門的業務に適用されます。

企画業務型は、事業の企画や分析など事業運営自体を扱う業務に適用されます。

 

解雇

解雇については相当な理由がないと成立しません。

日本では労働者なかなり守られています。

 

解雇の制限

労働基準法では解雇を制限しています。

解雇の制限があるパターンは以下の通りです。

  • 業務上の負傷や疾病のための休業期間や休業が終了した後の30日間
  • 産休の期間と休業終了後の30日間
  • 使用期間中の14日間
  • 日雇い労働者で1か月を超えて引続き使用される場合
  • 2か月以内の期間を定めて使用されるものが、所定の期間を超えて引続き使用された場合
  • 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用されるもので、所定の期間を超えて引続き使用された場合

また育児・介護休業法では、育児休業や介護休業の申し出や取得により解雇することも禁止されています。

そんな会社あるなら、逆にさっさとやめて法が良いと思いますが(^^;)

 

解雇の予告

使用者が解雇をするときには一定の条件があります。

まずは、合理的な理由がない場合は解雇をすることができません。

無効です。

そして解雇のためには主に以下の2点が必要です。

  • 少なくとも30日前に労働者に予告する
  • 30日分以上の賃金を払う

といった必要があります。

 

例外もあります。

主には以下の4つです。

  • 天変地異などのやむを得ない事由が発生して事業が継続不要になった場合
  • 労働者の責任で解雇する場合
  • 日々雇い入れる労働者
  • 使用期間中の労働者

これらの例外では解雇予告を必要としません。

 

賃金

最後に賃金についての原則と割増賃金について解説します。

賃金支払いの原則

労働基準法では、賃金の支払い方法についての原則があります。

原則は5つあります。

1.通貨払いの原則 通貨で支払う必要がある
2.直接払いの原則 労働者に直接支払う必要がある
3.全額払いの原則 全額を支払う必要がある
4.毎月1回払いの原則 毎月1回支払う必要がある
5.一定期日払いの原則 支払いの期日を定める必要がある

 

割増賃金

法定労働時間を超えて労働をさせる場合には、「割増賃金」を支払う必要があります。

割増賃金の額については、時間帯や条件によって違います。

また、条件が重なると割増賃金を加算する必要があります。

割増のパターン 割増賃金の額
時間外労働 25%以上
休日労働(法定休日) 35%以上 ※所定休日なら25%以上でOK
深夜早朝労働 25%以上
時間外+休日労働(法定休日) 35%以上
時間外+深夜早朝労働 50%以上
休日(法定休日)+深夜早朝労働 60%以上

 

最後に

今回は労働に関することを解説いたしました。

中小企業診断士試験では深いところまでは出題されませんので、ざっと行きました(^^)

 

一つ一つのテーマは掘り下げるとこんな量では収まりません。

まずはざっとどのような内容化を把握することが大事です。

どのみち過去問で撃沈しますので、テキストで勉強しているときは「ふ~ん」ってぐらいで見ておいてください!

 

また次々と開設ブログを作成しますので、参考になれば幸いです(^^)

当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。

 
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