こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
今回は組織形態について解説いたします。
前回は組織の設計原則について解説いたしました。
今回は組織のさまざまな形態をメリット・デメリットを示しながら具体的な解説をします。
組織の基本形態
組織の基本形態としてラインとスタッフがあります。
主体活動を担当するライン
ラインというのは、組織の主活動を担当する部署です。
例えば生産のように実際の製品を製造して価値を提供する活動や、販売のように製品や商品を客先に販売をする活動が挙げられます。
いわゆる「機能を提供する職能」と呼ばれます。
ラインの活動を支援するスタッフ
スタッフの役割は、主活動を担っているラインを支援します。
例えば経営企画のようにどのようなコンセプトや強みを活かした戦略を立てる活動です。
また、主活動を統括するマネージャーと呼ばれる管理者も挙げられます。
組織はざっくり「ライン組織」と「ライン&スタッフ組織」
詳しい組織編成は後程行いますが、ざっくり言ってしまうと組織は2パターンに集約されます。
それが「ライン組織」と「ライン&スタッフ組織」です。
ライン組織は各機能が直接経営層の支持で動く組織です。
ライン組織では直接トップから命令が出されます。
各機能が統一の式のもと活動を行いますので、共通した目的で行動します。
組織の設計原則の中に「命令一元化の原則」がありました。
命令を一元化することで組織が混乱することなく活動することができます。
権力が集中していると組織を管理しやすくなりますが、管理者の負担が大きくなります。
また権力が集中しすぎると柔軟性がなくなるので、急な環境変化に対応することが難しくなります。
柔軟な対応ができないことを「組織が硬直化する」と言われます。
ライン&スタッフ組織では、先ほどのライン組織にスタッフ部門が追加されています。
スタッフ部門の支援があることによって管理者の負担が軽減されます。
スタッフに相談したり助言を聞いたりすることができますので、管理者としては助かります。
ただしスタッフは直接ラインに対して直接的には権限を持っていませんが、管理者を支援するためラインの活動に対して関与します。
そのため権限の場所があいまいになることがあいます。
指示命令系統が複雑化すると、誰からの指示を聞くべきかがわからなくなってしまいます。
このように、どちらの組織もメリット・デメリットがあります。
基本形態の2つはどちらが優れているというわけではなく、それぞれの組織に合ったものを選択します。
具体的な組織形態
では次にどのような組織形態があるか解説します。
組織形態は主に4つです。
- 機能別組織
- 事業部制組織
- カンパニー制組織
- マトリックス組織
それぞれのメリット・デメリットがあります。
中小企業診断士試験ではよく出題されていますのでチェックしてください。
機能別組織
機能別組織は中小企業において最も多くみられる形態です。
機能別組織は名前の通り、組織を機能ごとに分けて「分業」します。
下の図で言うと、開発・生産・営業と部門ごとに分業します。
主活動が中心の「ライン組織」ですが、スタッフ部門が設置されることもあります。
【機能別組織のメリット】
- 専門性を追求することができる
- 業務を効率化できる
- 統制が取りやすい
やはり分業することで、それぞれが専門性を追求することができます。
集中的に専門業務にあたるので、規模の経済性や経験曲線効果を発揮して業務の効率化を図れます。
また、階層が単純なピラミッド型になるので指揮命令系統がはっきりしています。
誰からの支持で動くかが明確なので統制を取りやすいです。
【機能別組織のデメリット】
- 管理者の負担が大きい
- 組織の硬直化しやすい
- 利益の責任が不明確
組織が小さい場合は大丈夫ですが、大きくなってくると統率者への負担が大きくなりやすいのが機能別組織のデメリットです。
また、部門間の情報共有などの連携がうまく取れないケースがあります。
他部門の効率化を考えずに自分の部門の効率化を折ってしまう傾向にあるからです。
さらに成績が振るわなかった場合に、どこの部門が責任を取るかわかりません。
開発の部門に利益責任を追及するのは酷なところもあります。
いろんな面がありますが、機能別組織はこれから出てくる他の組織構造の基本となっています。
事業部制組織
事業部制組織は、個々の事業ごとに組織を編成します。
A製品を取り扱う「A事業部」やBサービスを取り扱う「B事業部」といった感じです。
例に挙げると下の図のようになります。
この段階では機能別組織よりも事業規模が大きいです。
製品の取り扱いが増えて複数の事業を展開して顧客層が広がってくると、製品別や顧客別・地域別に事業部を編成します。
【事業部制組織のメリット】
- 迅速な意思決定ができる
- トップの負担軽減ができる
- 将来の管理者を育成できる
事業部制組織のメリットは事業部ごとに利益を追求するため、事業部で意思決定を行います。
そうすると意思決定が早くなり、経営者への負担も減らすことができます。
また会社経営に深くかかわることで、将来会社の経営を任せることができる管理者の育成をすることができます。
【事業部制組織のデメリット】
- 機能別より非効率になりやすい
- 事業部間のセクショナリズム
- 短期の利益を求めがち
事業部制のデメリットで考えられるのが「効率性」です。
先ほどの図では事業部ごとに開発・生産・営業の機能を持っています。
機能が重複しているので、機能別組織のように一つにまとまっているほうが効率は良いです。
また事業部間で利益を追求していますので、、他の事業部よりも自分の事業部を優先する行動をとります。
そうすると事業部間での対立が起きることがあります。
このような外部の干渉を嫌うことを「セクショナリズム」と呼びます。
当然そのような事態になると会社全体として最適な行動ができなくなってきます。
また事業部には目標が与えられますので、目先の利益を優先するような行動になってしまします。
長期的な目線で事業を運営することが難しいです。
組織編成としては、各事業で利益追求をしてくれるので経営層の負担を減らせます。
しかしうまく調整をしないと、事業部間で争いが起きてしまい全体最適な行動ができなくなります。
経営者の調整機能が必要です。
カンパニー制組織
カンパニー制は事業部の更に発展した形です。
事業部を一つの会社としてみなします。
利益の追求はもちろんのこと、設備等の投資に関しても責任を持って運営します。
事業部の場合は「利益の追求」に責任がありました。
英語で言うと「プロフィットセンター」です。
プロフィットは「利益」という意味です。
ただし設備投資の判断は本社が行いますので、事業部の責任者は利益を追求するだけでした。
しかし、カンパニー制になると設備投資に関しても責任を持たなければなりません。
カンパニー制は「インベストメントセンター」ともいわれます。
インベストメントは投資という意味です。
英語の意味をしっかり覚えておくと知識が定着しやすいので、ひと手間ですが調べておきましょう。
また「バランスシート経営」と言われることもあります。
これは利益の「損益計算書」だけでなく、会社にある資金をどういったものに投資をしたか「貸借対照表」に対しても責任が発生するからです。
貸借対照表のことをバランスシートと言いますので、こういった呼ばれ方もします。
ですのでカンパニー制のトップは会社の経営者のような役割です。
実際に「プレジデント」と呼ばれることがあります。
プレジデントは「長」という意味があります。
「大統領」だけでなく「社長」や「頭取」が含まれます。
【カンパニー制組織のメリット】
- 経営責任が明確
- 迅速に意思決定できる
- 経営者教育ができる
カンパニー制のメリットは事業部制組織と似ています。
投資も含めた責任追及がありますので、経営責任がより重いです。
また単なる管理者の教育以上の体験ができるので、将来の経営者育成にもつながります。
【カンパニー制組織のデメリット】
- カンパニー間の連携
- 本社の意向に左右される
デメリットについてはカンパニー間の連携は難しいです。
事業部制組織でもセクショナリズムがありましたが、カンパニー制においても同様のことが言えます。
またカンパニー制は荘子の責任を負っていますが、本部の移行には従わなければいけません。
自分たちで完全に独立して運営することはできません。
投資案件によっては本社の上司に承認をもらわないと進めることができないことがあります。
マトリックス組織
最後はマトリックス組織です。
マトリックスというのは英語ではいろんな意味があります。
ここでは「行と列」で表現された図を示しています。
責任者一覧 | 営業 | 製造 |
A事業部 | ○○ | ×× |
B事業部 | △△ | □□ |
このような感じで表すのがマトリックスです。
それを組織図で表すと以下の通りです。
機能別組織に事業部制組織をミックスした形です。
縦は機能別組織の「開発部門」「生産部門」「営業部門」があります。
横は事業部制の「A事業部「B事業部」があります。
機能別組織の管理者と事業部の管理者2人が存在しており、指揮命令系統が2つある状態です。
【マトリックス組織のメリット】
- 専門性と柔軟性を兼ね備えている
- 人材を有効活用できる
マトリックス組織では機能別組織の特徴である専門性を追求しながらも事業部制を組み合わせることで横のつながりを作っています。
新しい事業がに対しても一つの機能で複数の事業を行うことができるので、人材を有効活用することができます。
機能別組織のデメリットである組織の硬直化を克服することができる組織形態です。
【マトリックス組織のデメリット】
- 命令系統が不明確
- 管理者間での対立や権力争い
ただしデメリットもあります。
それはボスが二人存在することです。
機能別の責任者と、事業部の責任者が存在します。
いわゆる「ワンマンツーボスシステム」になるので、誰の命令を聞けばよいのか現場が混乱する可能性があります。
組織の設計原則である「命令一元化の原則」から外れた組織形態になっています。
この2人の責任者が対立したり権力争いをすることもあります。
この組織形態を導入する際には、参加メンバーの組織への教育が重要です。
また指揮命令系統の明確化も必要です。
高度な組織形態は言葉で説明するのは簡単ですが、実際に運用していくには相当習熟が必要です。
今回のまとめ
今回は組織形態について解説しました。
内容をまとめると以下の通りです。
組織の基本形態
- 組織の基本形態は主体活動を担当するラインと、ラインの活動を支援するスタッフ
- 組織はざっくり「ライン組織」と「ライン&スタッフ組織」
組織形態は4つ
- 機能別組織
- 事業部制組織
- カンパニー制組織
- マトリックス組織
各組織形態のメリット・デメリット
組織形態 | メリット | デメリット |
機能別組織 | 「専門性の追求」「業務効率化」「統制」 |
「管理者の負担大」「組織の硬直化」「責任が不明確」 |
事業部制組織 | 「迅速な意思決定」「トップ負担軽減」「管理者育成」
|
「若干非効率」「セクショナリズム」「短期志向」 |
カンパニー制組織 | 「経営責任が明確」「迅速な意思決定」「経営者教育」
|
「カンパニー間連携」「本社の意向に左右」 |
マトリックス組織 | 「専門性と柔軟性の両立」「人材を有効活用」
|
「命令系統が不明確」「管理者の対立や権力争い」 |
組織については何回かに分けて解説しております。
もう一回ぐらい必要かと思います。
中小企業診断士試験の場合、あまり一つの論点に時間をかけると他への勉強時間が無くなります。
ある程度学習したら次々進んでください。
また過去問を解きながら問題にもなれるようにしてください。
合格を目指すあなたのために、魂を込めてブログを続けていきます。
これからもよろしくお願いします!
最後に~私の実務について~
私が関わっている実務では支援企業さんから組織図の提供をしてもらいます。
改善活動を行うときに、どの部署を行うのか、また誰が活動のリーダーとなるのか決めていきます。
その中でメンバーを変更したり部署を統合したり、組織図を見ながら検討します。
評価制度を構築する際にも組織図を活用します。
誰が誰を評価するかを決めていかなくてはいけません。
一人で評価できる人数は5,6名程度なので、組織によっては再構築しなければならないこともあります。
また評価者を評価する評価者も必要です。
一次評価者と二次評価者の階層構築です。
中小企業では割と簡単な組織形態が多いですが、製造業などは従業員数が多く複雑な組織になっていることもあります。
中には従業員数のわりに階層が多く、指揮命令の伝達がしづらいこともあります。
逆に管理するメンバーが多く評価を行うときに難しいこともあります。
ですので、組織形態は非常に重要です。
どのような組織形態が良いかは、試行錯誤しながら変更していきます。
また組織のメンバーにも理解していただく必要があります。
経営計画や新制度導入の際には最低でも主要なメンバーに集まっていただきます。
2、3時間の説明会を開催することもあります。
人がたくさん集まると統率していくのは難しいですが、うまくいけば物凄いパワーを発揮します。
こういった基本的な知識を学びながらも、課題を解決できるように柔軟な発想が必要です。
またこういった実務に絡んでくる話は定期的にさせていただきます。
また聞いてやっていただき得ると凄くうれしいです!
ご要望やご質問などもお気軽にじゃんじゃんしてください。
お待ちしております(^^)