こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
今回は前回の続きで仕訳について解説します。
前回は現金と掛取引について解説しました。
基本的な内容なので、そちらから見ていただくと良いです。
今回は、
- 手形
- 有価証券
- 固定資産
- 社債
- 純資産
これらの仕訳を行います。
手形
手形とは「将来の特定の日に約束した金額を支払う一種の有価証券」です。
手形は
- 約束手形
- 振替手形
があります。
2者間でやりとりする「約束手形」
約束手形とは「あらかじめ決められた期日に、決められた金額を支払うことを約束した有価証券」です。
企業間取引は基本的に代金が後払いなので、現金を支払う代わりに約束手形が使われることがあります。
商品を仕入れた側、つまり手形を発行した側は「支払手形」の勘定科目を記録します。
代金そ支払う人を「振出人(ふりだしにん)」といいます。
商品を販売した側、手形を受け取る側は「受取手形」の勘定科目を記録します。
手形を受け取って代金を受け取る権利を有している人を「名宛人(なあてにん)」といいます。
振 出 人 | 名 宛 人 | |
約束手形 | 手形代金を支払う人
(支払人) |
手形代金を受け取る
(受取人) |
例えばA社がB社に500の商品を販売した時のことを想定します。
そのうち400を手形で受け取った場合の仕訳は
A社の仕訳
借方 | 貸方 |
受取手形 400 | 売上 500 |
売掛金 100 |
売上は「収益」なので、収益の増加は貸方(右側)です。
収益が増えた内容は、まず受取手形の400があります。
企業間取引では代金は後払いが基本ですので、残りの100は売掛金です。
逆にB社の仕訳はどうなるでしょうか
借方 | 貸方 |
仕入 500 | 支払手形 400 |
買掛金 100 |
B社は商品を仕入れたので、仕入という費用勘定が増加します。
費用の増加は借方(左側)に入ります。
費用をどう支払ったのかはA社と逆で、支払手形と買掛金です。
このように約束手形はA社・B社間のように「2者の間でやり取りされる手形」です。
ちなみになぜ「2者」という感じにしているかですが、個人事業主も含まれるので「社」ではなく「者」を使っています。
私は最初誤字かと思ってました(^^;)
3者間でやり取りされる「為替手形」
為替手形とは、3者間の取引です。
3者には約束手形で登場した「振出人」「名宛人」の他に「指図人(さしずにん)」がいます。
振 出 人 | 名 宛 人 | 指 図 人 | |
為替手形 | 手形を振り出すが
支払義務はない |
手形代金を支払う
(引受人、支払人) |
手形代金を受け取る (受取人) |
代金を受け取る権利と、代金を支払う義務を両方持っている会社(振出人)が、「だったら代わりに支払ってもらおう」という感じで手形を発行します。
これは具体例を出したほうがわかりやすいです。
<例:A社がC社に為替手形を振り出し、B社が支払いを引き受けた場合>
登場人物紹介
振出人:A社 | 名宛人:B社 | 指図人:C社 |
B社に売掛金(代金を受け取る権利)があり
C社に買掛金(代金を支払う義務)がある |
A社に買掛金(代金を支払う義務)がある | A社に売掛金(代金を受け取る権利)がある |
①A社がB社に「A社のC社への買掛金を替わって支払って下さい」という為替手形の引き受け依頼をする
②B社がそれを承諾する
③A社がC社に「代金はB社から受け取って下さい」という為替手形を振り出す
④C社が為替手形を受け取る
⑤B社が支払期日にC社へ手形代金を支払う
A社の仕訳(為替手形を発行する)
仕入先(C社)に対する買掛金¥600の支払のため、得意先(B社)宛ての為替手形を振り出した。(得意先の引受済み)
借方 | 貸方 |
買掛金 600 | 売掛金 600 |
代金を支払う義務(負債)の買掛金がなくなりますので、借方(左側)に「買掛金600」を記入します。
また代金を受け取る権利(資産)の売掛金もなくなりますので、貸方(右側)に「売掛金600」を記入します。
権利と義務を相殺する感じです。
資産の減少は右側に、負債の減少は左側に書くことを覚えてください。
B社の仕訳(支払いを引き受ける)
仕入先(A社)から為替手形¥600の依頼があり、その支払いの引受をした。
借方 | 貸方 |
買掛金 600 | 支払手形 600 |
支払う義務があった「買掛金」のうち手形が発行された分だけ勘定科目を変更します。
支払いを引受しているので「支払手形」という負債が増加します。
負債の増加は貸方(右側)です。
買掛金が支払手形に変わったので。買掛金を減少させるため借方(左側)に記入します。
C社の仕訳(為替手形を受けとって代金を)
A社に商品¥600を売り渡した。代金はB社あての為替手形で受け取った。
借方 | 貸方 |
受取手形 600 | 現金 600 |
代金を受け取る権利があった「売掛金」のうち手形が発行された分だけ勘定科目を変更します。
手形を受け取ったので「受取手形」という資産が増加します。
資産の増加は借方(左側)です。
売掛金が受取手形に変わったので。売掛金を減少させるため貸方(右側)に記入します。
このように仕分けにすると難しいですが、やっていること自体はそれほど複雑ではないです。
義務が増えると負債が増加、権利が増えると資産の増加を覚えておくと良いです。
手形の割引
手形の割引とは「受け取った手形を期日前に銀行に持っていった時に、期日までの日数に応じた利息にが割り引かれること」です。
つまり早く現金が手に入る反面、ちょっともらう額が少なるなるということです。
支払の期日が近づいているけど、手元に資金がないような場合に行うことがあります。
この場合、期日までの日数に応じた利息に相当する割引料という料金がかかります。
この割引料は、仕訳では「手形売却損」勘定で処理します。
例えば、手持ちの約束手形 600 を銀行に持っていき、割引料 60 で現金に割引いた場合の仕訳は、
借方 | 貸方 |
現金 540 | 受取手形 600 |
手形売却損 60 |
このように、10%分現金が少なくなっています。
借方と貸方の金額は必ず一致しますので、覚えておいてください。
有価証券
有価証券は「株式会社の株式や社債、国が発行する国債などの証券のこと」です。
株式などの有価証券は、値段が日々上下します。安く購入して高く売ることができれば儲けが得られます。
このように、安く買って高く売ることが目的の有価証券のことを「売買目的有価証券」と呼びます。
ここでは売買目的有価証券について扱います。
有価証券を購入する時
有価証券の購入は一般的に証券会社などを通じて株式市場で行います。
取得する時には「手数料(付随費用)」がかかります。
取得原価はこの手数料も含まれます。
式で表すと、
有価証券の取得原価=購入代金+手数料
短期的にもうけを得ようとする有価証券は「売買目的有価証券」という資産勘定を使用します。
例に挙げると、1株200円の有価証券を50株取得、手数料は100現金で支払った場合は
200×50=10,000に手数料の100を加えて記録します。
借方 | 貸方 |
売買目的有価証券 10,100 | 現金 10,100 |
取得原価に手数料を足すことをお忘れなく(^^)
有価証券を売却する時
売買を目的とした有価証券は売買を繰り返して設けようとします。
つまり安いときに購入して、価値が高くなったときに売却できるのが理想的です。
取得原価よりも価値が上がったときは「売却益」が生じます。
逆に取得原価よりも価値が下がっているときは「売却損」が生じます。
まず儲かった場合はどうなるかを解説します。
先ほどの1株200円の株式が300円になったときのことを考えます。
とりあえず10株だけ売却することにしました。
その場合の仕訳は、
借方 | 貸方 |
現金 3,000 | 売買目的有価証券 2,000 |
有価証券売却益 1,000 |
300円×10株で3,000円の現金を手にします。
元々の取得原価は200円だったので、10株分の価値は2,000円です。
そうすると借方と貸方の合計金額が一致しません。
そこで登場するのが「有価証券売却益」です。
有価証券売却益は収益なので、増加するということは貸方(右側)に記入します。
売却益は(300円ー200円)×10株=1,000円です。
何度も言いますが、借方と貸方の合計金額は一致します。
逆に損をした場合はどうなるでしょうか?
先ほどの1株200円の株式が100円になったときのことを考えます。
同じく10株だけ売却することにしました。
その場合の仕訳は、
借方 | 貸方 |
現金 1,000 | 売買目的有価証券 2,000 |
有価証券売却損 1,000 |
100円×10株で1,000円の現金を手にします。
元々の取得原価は200円だったので、10株分の価値は2,000円です。
先ほど同様、このままでは借方と貸方の合計金額が一致しません。
今回は「有価証券売却損」を使います。
有価証券売却損は費用なので、増加するということは借方(左側)に記入します。
売却損は(200円ー100円)×10株=1,000円です。
何度も言いますが、借方と貸方の合計金額は一致します。
有形固定資産の購入
固定資産は「企業が長期にわたって利用する資産のこと」です。
特に有形固定資産は建物や土地、設備や車両など売買が行われることがあります。
購入するときの取得原価は、売買目的有価証券と同様に付随費用も含めます。
つまり
有形固定資産の取得原価=購入代金+付随費用
です。
例えば、新しい機械設備を購入した時のことを想定します。
機械設備の費用に1000万円、付随費用に100万円かかったとする。支払いはすべて現金で支払った場合は、
借方 | 貸方 |
機械設備 1,100万円 | 現金 1,100万円 |
売却については減価償却が絡んできます。
減価償却は使っていくにつれて次第に価値がなくなっていく考え方です。
有形固定資産を売却するときは減価償却がどれだけになっているかを考慮する必要があります。
減価償却の計算方法については、決算整理仕訳の記事で解説しています。
社債
社債とは、「社債券という有価証券を発行し、法人や個人から資金調達を行うもの」です。
「社債」を発行した場合は、毎期の利息の支払いと、償還期限(満期)に元本を返済します。
社債は将来返済の義務がありますので「負債」の勘定科目です。
社債の発行形態には、2つあります。
- 平価(へいか)発行
- 割引発行
平価発行
「平価発行」は、社債の額面金額と等しい価額で発行することです。
例えば、額面 100 で社債を発行した場合は、同じ 100 を現金で受け取ります。仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 |
現金 100 | 社債 100 |
現金という資産が増加したので、借方(左側)に記入
受け取った代わりに、社債という「負債」が計上されます。
割引発行
「割引発行」は、社債の額面金額よりも低い価額で発行することです。
例えば、額面 100の社債を、95 で割引発行するような感じです。
社債を買った人は発行時に 95 だけ支払います。
ちなみに社債の金額は払い込まれた金額と等しくなっています。
仕訳は以下の通りです。
借方 | 貸方 |
現金 95 | 社債 95 |
そして満期日には額面金額と同じ 100 を受け取ることができます。
差額の5が儲かりますので、利息が付いているのと同じ効果があります。
この時点では額面金額は100ですので差があります。
この差額は満期(償還期限)までの間にちょっとずつ調整されます。
これを償却原価法と言います。
償却原価法には「定額法」と「利息法」があります。
利息法は複雑なので、ここでは定額法だけ紹介します。
償却原価法(定額法)
償却原価法(定額法)では、発行日から満期日までの期間で、差額の金額を均等に調整していきます。
先ほどの例では、額面金額と払い込まれた金額の差額は 5 となっています。ここで、社債の償還期間が 5 年だった場合は、1 年あたり 1 の金額を社債の帳簿価額に足していきます。毎年の決算整理仕訳は、
借方 | 貸方 |
社債利息 1 | 社債 1 |
社債利息は営業外費用です。「費用」の増加は借方(左側)に記入します。
利息の分だけ返済額が増えるので、社債が増加しています。
社債は「負債」です。負債の増加は貸方(右側)に記入します。
これを5年間繰り返すことで、最終的には簿価が額面金額と同じ 100 になります。
社債の発行者と購入者のメリット
社債発行のメリットは、広くお金を集めることができます。
一般的には株式の発行よりも、利息支払いは少ないです。
社債を購入する人のメリットは、社債の利息を受け取ることができるので儲かります。
逆に、社債を発行した企業側は、定期的に利息を支払う必要があります。
利息の支払いは、先ほどの割引発行の仕訳で出てきた「社債利息」という費用で処理します。
利息の支払いは基本的に毎年されます。
例えば、額面 100、発行価額 95、利息が年 5%と考えることができます。
つまり毎年100×5%=5の利息を毎年の当座預金から支払う必要があります。
仕訳にすると
借方 | 貸方 |
社債利息 5 | 当座預金 5 |
社債の満期日(例では5年後)に、当期の社債利息とともに社債を償還する場合は、次のような仕訳となります。
借方 | 貸方 |
社債 100 | 当座預金 105 |
社債利息 5 |
このとき支払われる金額は、社債の額面金額 100と、当期の社債利息 5を合計した金額になることに注意しましょう。
純資産
純資産の仕訳で重要なのは
- 株式の発行
- 剰余金の配当
です。
株式の発行
株式の発行を行って資金調達を行った場合、、基本的には「資本金」に組み入れられます。
ただし払い込まれた額の半分は「資本準備金」に計上することが許されています。
例えば、株式の発行により1,000資金を調達した。そのうち半分は資本金に組み入れたときの仕訳は、
借方 | 貸方 |
当座預金 1,000 | 資本金 500 |
資本準備金 500 |
当座預金(現金)は資産なので、資産の増加は借方(左側)に記入します。
純資産の増加は貸方(右側)に記入します。
剰余金の配当
会社が株主への配当を行う場合には、剰余金から配当します。
剰余金は、「その他資本剰余金」と「その他利益剰余金」の合計です
配当を行う際にはルールがあります。
- 分配可能額を超えてはならない
- 配当する剰余金の 10 分の 1 の額を「資本準備金」または「利益準備金」として積み立てる
- ただし配当時の「資本準備金」と「利益準備金」の合計額が資本金の 4 分の 1 に達していれば積み立てなくて良い
まず分配可能額を超えてはならないというのは、「原資がないのに配当したらダメよ」ということです。
配当はあくまで利益が十分に出ていることが前提です。
積立のルールは具体例のほうがわかりやすいです。
事例① | |
資本金 | 1,000 |
資本準備金と利益準備金の合計 | 220 |
配当 | 200 |
配当を100行っていますので、200×0.1=20の積み立てが必要です。
この場合資本準備金と利益準備金の合計に20を積み立てると合計が240です。
資本金の4分の1は250なので、達していないのでこの処理で問題ありません。
事例② | |
資本金 | 1,000 |
資本準備金と利益準備金の合計 | 220 |
配当 | 500 |
こんどは配当額は500なので、積み立てる金額は50です。
元々ある資本準備金と利益準備金の合計に足すと、270です。
これは資本金の4分の1である250を超えています。
この場合は250-220=30だけ積み立てればOKです。
ちなみに「その他資本剰余金」から配当された場合は「資本準備金」に積み立てます。
また「その他利益剰余金」から配当された場合は「利益準備金」に積み立てます。
細かいことですが、念のため覚えておいてください。
最後に
今回も最後まで読んでいただき誠にありがとうございます!
仕訳は中小企業診断士試験では、難易度の高い問題は出題されません。
ですので、基礎的なことをしっかり押さえておいてください。
また過去問を解くことで問題の傾向がわかりますんので、しっかり研究しておいてください、。
研究といっても、そんなに難しく考えずに解いていくうちに
「この問題ってこんな感じで出題されるんだな」
って感じで傾向が見えてきますよ(^^)