こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
皆さんは「特定創業支援事業」というのを聞いたことがありますか?
「特定創業・・・何それ?」となっている人もいるかもしれませんが、起業を考えている人はぜひ検討したい内容です。
知らないといつの間にか、損してしまうかもしれません。
これから事業を始める方に知っておいて欲しい内容なので、ぜひ読んでください!
今回は「特定創業支援事業」について解説いたします。
特定創業支援事業とは
特定創業支援事業とは、市区町村が創業支援等事業者と連携して創業者を支援する事業です。
ちょっとこ言葉ご難しいですね。
名前の通り「特定の創業する人を支援する目的の事業」です。
たとえば私は兵庫県に住んでいますが、尼崎市では
- 尼崎商工会議所
- 尼崎地域産業活性化機構
- 尼崎信用金庫
といった「認定連携創業支援等事業者」が創業される方に対して支援しています。
支援内容は準備期から事業安定期までの成長段階に応じてさまざまあります。
尼崎市ではオールあまがさき体制で事業者を支援するネットワークが構築されています。
ちなみに他の市区町村もチェックしてみると、同じような支援をしています。
令和4年6月現在で認定されている件数は、1,285件(1,443市区町村)あります。
かなりの数の市町村で認定されているので、創業の準備をしている方はチェックして見てください。
認定されている市町村については中小企業庁のホームページから確認できます。
特定創業支援事業の内容
特定創業支援事業では経営の基礎的な知識を学ぶことができます。
約1ヶ月かけて5回ほどの講義を受けます。
また講義と並行して参加者には「事業計画」を作成する課題があります。
事業計画は資金調達の時に作成することがありますが、こういったきっかけがないと作成しません。
しかし事業計画を作成すると、漏れなく計画することができるので、事業の成功を高めることができます。
講師は主に中小企業診断士が担当しているので、経営の知識をしっかり持った講師から学ぶことができます。
特定創業支援事業に参加するには5,000円くらい費用がかかります。
有料にしておくことで、冷やかしで受ける人が多くなってしまうことを防いでいるのでしょう。
兵庫県尼崎市の例を挙げると「創業塾」という特定創業支援事業を実施しています。
創業塾に参加すると「特定創業支援等事業」による支援を受けたことの証明書が発行されます。
証明書により参加した地域のさまざまな優遇制度を受けることができます。
どのようなメリットがあるかをこの後解説します。
参加のメリット(定量的なもの)
特定創業支援等事業により支援(創業塾など)を受けた創業者・創業希望者は、次のような定量的メリットを受けることができます。
創業時は何かとお金がかかりますので、これらの優遇制度はぜひ活用したいです。
優遇は大きく3つあります。
- 会社設立時の優遇
- 信用保証制度の優遇
- 日本政策金融公庫の優遇
もう少し詳しく解説します。
会社設立時の登録免許税の半額軽減
まずは会社を設立する時に、登録免許税が安くなります。
設立する会社が株式会社・合同会社の場合と、合名会社・合資会社で金額が異なります。
① 株式会社又は合同会社の場合
資本金の0.7%の登録免許税が0.35%に軽減(例)最低税額の場合、株式会社設立は15万円が7.5万円に軽減
② 合名会社又は合資会社の場合
1件につき6万円の登録免許税が3万円に軽減
対象者は以下の通りです。
- これから初めて事業を営む個人
- 個人事業開始から5年を経過してない個人事業主
既に会社を設立している場合は対象外です。支払ってしまった後に申請して返金されるわけではありません。
わずか5,000円の先行投資で既に元がとれてますね(^^)
創業関連保証の利用開始月の前倒し
創業関連保証とは、創業期に利用可能な信用保証制度のことです。
信用保証制度を利用すると、信用保証協会のバックアップを受けて金融機関から資金調達がしやすくなります。
一般的には保証制度の対象者は起業している人ですが、創業関連保証では創業前事業であっても利用可能な制度です。
創業する時にも準備にさまざまなお金が必要ですから、資金調達しやすくなると助かりますね(^^)
この創業関連保証についても特定創業支援事業に参加することで更なる優遇を受けるとができます。
具体的には、創業2ヶ月前からから対象となる創業関連保証の特例について、事業開始6ヶ月前から対象となります。
対象者は以下の通りです。
- これから初めて事業を営む個人
- 個人事業開始から5年を経過してない個人事業主
ただし別途、審査を受ける必要がありますので、確実に利用できるとは限りません。
日本政策金融公庫新創業融資制度・新規開業資金
創業するには当然資金が必要です。
自分で用意できれば理想的ですが、どうしても個人の力だけでは足らないことが多いです。
そんな時にお金を借りることを検討しますが、特定創業支援等事業に参加することで有利な条件で借り入れができます。
それが日本政策金融公庫を利用した融資制度です。
日本政策金融公庫には「新創業融資制度」があります。
通常制度を利用するには自己資金要件を満たす必要があります。
ところが特定創業支援事業の証明書を受けると自己資金を用意しなくても要件を満たしているとされます。
また「新規開業資金」を利用する時に貸付利率の引き下げの適応を受けて融資を利用することができます。
自己資金の準備や返済のリスクを考えると助かりますね(^^)
対象者についても以下に示します。
- これから初めて事業を営む個人
- 個人事業開始から5年を経過してない個人事業主
- 法人設立から5年を経過してない個人(代表者、役員)
これも信用保証協会と同じで、審査があります。
実際は自己資金ゼロでは審査に通りづらいです。
参加のメリット(定性的なもの)
またお金以外の面でもメリットがあります。
経営に対する知識がつく
特定創業支援事業では経営に対する知識の講義を受けることができます。
たとえば兵庫県尼崎市の「創業塾」では、
- 経営
- マーケティング
- 人事労務
- 財務
このような講義があります。
また自分の事業をアウトプットして計画書を作成します。
士業の方と知り合いになれる
講義は税理士・社会保険労務士・中小企業診断士といった士業の先生が担当します。
こういった士業の先生と知り合う機会はあまりありません。
せっかく接点を持ったので、これからも相談できるように知り合いになっておきましょう。
事業を進めるのは孤独です。
相談できる人がいないので、正しい方向なのかを客観的に判断してくれる先生と知り合いになると心強いですね!
同じ志を持った人と知り合える
創業塾には事業を始めている人やこれから始めようとしている方が集まります。
自分と同じように事業を始めようとしている人と知り合えるのは貴重です。
情報を交換したり、アドバイスをもらったりできます。
また他の人を見て刺激を受けることができます。
切磋琢磨しながら進めることができると良いですね!
補助金の優遇もある
これまで説明したメリットに追加して補助金の優遇があります。
補助金は融資と比べて、返済の必要がない資金調達ができるので魅力的です。
その分審査が厳しく、事業計画書を作成する手間もかかりますが、要件が合えばぜひ検討したいですね!
小規模事業者持続化補助金の「創業枠」が活用できる
小規模事業者持続化補助金とは小規模事業者の設備投資や販促の補助をする制度です。
通常枠では限度額が50万円ですが、特定創業支援事業の証明書があれば200万円まで限度額が上がります。
創業枠に係る申請要件について以下のように記載があります。
創業した事業者を重点的に政策支援するため、産業競争力強化法に基づく「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携した「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を公募締切時から起算して過去3か年の間に受け、かつ、過去3か年の間に開業した事業者に対して、補助上限額を200万円へ引き上げ。
ただしこの制度は開業しておく必要があります。
これから開業する人は対象外なのでご注意ください。
地方自治体の補助金が受けられる
小規模事業者持続化補助金は全国的に実施している制度ですが、地方独自で補助金を実施していることもあります。
補助額はそれほど大きくありませんが、ひっそりとやっていることがあるので見逃さないようにしてください。
どのような補助金が実施されているかは、J-Net21 の支援情報ヘッドラインで検索して見てください。
ちなみに兵庫県尼崎市では「尼崎市創業支援補助金」というのがあります。
新型コロナウイルス感染症や物価高高騰の中、新たなビジネスにチャレンジする創業者、第二創業者を対象に、創業時に要する経費の一部を補助する目的です。
対象者は以下の条件を全て満たす中小事業者・個人事業主です。
- 令和4年1月1日から令和5年1月31日までに、尼崎市内で創業すること
- 特定創業支援事業を受けていること
特定創業支援事業については、尼崎商工会議所と尼崎信用金庫が実施する創業塾や(公財)尼崎地域産業活性化機構が実施する支援事業等を受けることが条件です。
他の地域で特定創業支援事業を受けても対象外です。
こういった地方の補助金は創業の場所が限定されるので、利用する時には条件をよく検討してからにしてください。
補助上限額は50万円、補助率は2/3です。
つまり75万円以上の投資であれば限度額の50万円となります。
補助対象経費は以下の通りです。
- 事務所等の賃借料
- 改装工事費
- 初期設備購入費
- 広報費
ただし、1品あたりの経費が50千円(税抜)以上のものが対象です。
小さい費用のものをあれこれ購入できるわけではなさそうですね(^^;)
デメリット
特定創業支援事業ですがデメリットもあります。
時間と費用を奪われる
上記の優遇制度を利用しようとすると証明書の発行が必要です。
証明書の発行には出席率を満たしていないといけません。
たとえば兵庫県尼崎市の「創業塾」では5回中4回は出席しないと証明書を発行してくれません。
講義の時間は10:00~17:00なので、せっかくの休みが一日つぶれてしまいます。
それと創業塾は有料です。
5,000円くらいは必要ですので、少し負担に感じるかもしれません。
今回は創業する時にいろいろ優遇が多い「特定創業支援事業」について解説しました。
こういった情報を知らないまま創業すると損をしてしまいます。
創業する時には資金調達方法は非常に重要ですので、どういった支援があるのかを調査して進めてくださいね!