こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
今回は簿記について解説していきます。
財務・会計は複雑な説明がありますが、数字に強くなると物事を理論的に考える力となります。
それではいってみましょう!
簿記とは何か?
まず、簿記ってなんでしょうか?
いきなり聞かれてもって感じですよね(^^;)
簿記は、ざっくり言ってしまうと「お金に関する記録をつけること」です。
正確には「会社の経営活動を、ルールに従って帳簿に記録すること」です。
経営活動はお金に関わってくることばかりです。
仕入れをしたり、給料を支払ったり、商品を販売したり、銀行からお金を借りたり返したり・・・いっぱいあります。
企業の取引に関することは、簿記によって記録されます。
これを基にして、貸借対照表や損益計算書のような財務諸表を作成します。
ですので簿記の記帳は正確に行う必要があります。
簿記上の取引について
取引というと商品やお金をやり取りする感じですが、簿記上の取引では取引に含まれないこともあります。
逆に一般的に取引に入らないようなことが簿記上の取引に含まれることもあります。
例えば「契約書をもらったり、サインした状態」は、取引していますが簿記上の取引に入りません。
逆に災害が発生して、商品が被害を受けた場合は、取引に当たらない感じですが簿記上の取引に該当します。
どういった状態が簿記上の取引になるかを説明していきます。
簿記の5つの分類「資産・負債・純資産・収益・費用」
簿記では5つの要素に分類して記録していきます。
5 つの要素とは、
- 資産
- 負債
- 純資産
- 収益
- 費用
です。
簿記上の取引は「 5 つの要素が増減する場合」に成立します。
この 5 つの要素は、貸借対照表と損益計算書に対応します。
資産・負債・純資産は「貸借対照表」に該当します。
収益・費用は「損益計算書」に該当します。
例えば現金や商品が増減した時は、「資産」が増減します。
買掛金や借入金は負債の科目なので、「負債」に関わってきます。
資本金は純資産です。
これらは最終的に貸借対照表に反映します。
また、売上が増加すると収益に影響します。
仕入れでかかった費用や給与などの人件費は費用に、最終的に損益計算書に表示されます。
先ほど例で挙げた商談で契約書をもらったりサインしたりした状態では資産や負債、売上や費用といった増減が一切ありません。
ですので簿記上の取引には当たりません。
逆に災害によって商品が被害にあった場合、商品が減少します。
商品という試算が減少しますので、簿記上の取引に該当します。
取引を記録する「仕訳」
簿記上の取引を記録することを「仕訳」といいます。
仕訳のルールは「複式簿記」という方法で記録します。
複式簿記は名前の通り、取引を複式で記録します。
具体的には、取引を2つの側面から記録していきます。
例えば銀行でお金を借りたときのことを考えます。
お金を借りるので「現金」が増加します。
その一方で「借入金」が増加します。
このように2つの側面で見ることで「現金が増加(結果)したのは、借入金(原因)によるもの」ということが説明できます。
この「現金」や「借入金」といった、取引を分類する項目の事を「勘定科目」と呼びます。
実際にどのように仕分けするかですが、銀行から現金200を借り入れたときの仕訳は、
借方 | 貸方 |
現金 200 | 借入金 200 |
仕訳では、取引の 2 つの側面を「借方」、「貸方」と呼びます。
仕訳の左側が「借方」、仕訳の右側が「貸方」となります。
借方と貸方の金額は必ず一致します。
借方と貸方の位置は貸借対照表の位置関係と同じです。
現金のような資産は貸借対照表の左側に位置しているので、基本は借方にきます。
費用と収益は損益計算書に対応しています。
費用が借方(左側)、収益が貸方(右側)になります。
資産 | 負債 |
純資産 | |
費用 | 収益 |
左側の要素が増加した場合は、仕訳の左側、つまり借方に記入をします。資産や費用は左側にありましたので、資産や費用が増加した場合は、仕訳の左側(借方)に記入します。
右側の要素が増加した場合は、仕訳の右側、つまり貸方に記入をします。負債、純資産、収益は右側にありましたので、負債、純資産、収益が増加した場合は、仕訳の右側(貸方)に記入します。
逆に、左側の要素が減少した場合は、先ほどと逆になり、仕訳の右側(貸方)に記入をします。よって、資産や費用が減少した場合は、先ほどと逆に仕訳の右側(貸方)に記入します。
右側の要素が減少した場合は、先ほどと逆になり、仕訳の左側(借方)に記入をします。よって、負債、純資産、収益が減少した場合は、先ほどと逆に仕訳の左側(借方)に記入します。
言葉で書くと複雑ですね(^^;)
ルールをまとめると、
借方 | 貸方 |
資産の増加 | 資産の減少 |
負債の減少 | 負債の増加 |
純資産の減少 | 純資産の増加 |
費用の増加 | 費用の減少 |
収益の減少 | 収益の増加 |
増加するほうを赤文字にしました。
次に具体例を挙げて、もうちょっとイメージしやすいようにします(^^)
仕訳の具体例
- 具体例①
取引先に商品 300を掛取引で販売した場合の仕訳
借方 | 貸方 |
売掛金 300 | 売上 300 |
資産である売掛金が増加したので借方に「売掛金 300」を記録します。
売掛金が増えた原因は、商品が売れたことです。
収益の増加は貸方に入りますので、「売上 300」を記録します。
- 具体例②
取引先に商品 300を掛取引で販売、100の現金を受け取って、残りは月末に支払う予定になった場合の仕訳
借方 | 貸方 |
現金 100 | 売上 300 |
売掛金 200 |
資産である現金が100増加したので、借方に「現金 100」を記録します。
残りの支払いは未払となったので、借方に「売掛金 200」を記録します。
現金と売掛金が増えた原因は、商品が売れたことです。
収益の増加は貸方に入りますので、「売上 300」を記録します。
- 具体例③
銀行で借りていたお金50を現金で返済した場合の仕訳
借方 | 貸方 |
借入金 50 | 現金 50 |
「負債」である借入金が減少したので、借方に記録します。
借入金の減少は現金による返済が原因です。
ですので、「資産」である現金が減少したので、貸方に記録します。
- 具体例④
出張の際に宿泊代20を現金で支払った場合
借方 | 貸方 |
旅費交通費 20 | 現金 20 |
旅費交通費という「費用」が増加したので、借方に記録します。
「資産」である現金がなくなったので、貸方に記録します。
財務諸表作成までの道のり「簿記一巡」
簿記の目的は、会社の活動を記録して財務諸表を作成することです。
この財務諸表を作成するまでの手続きを「簿記一巡」と言います。
「簿記一巡」は、2つにわかれます。
- 期中の取引:日々の取引の仕訳を記入する
- 決算手続:期末に財務諸表を作成する
それぞれを説明していきます。
期中の取引
「期中の取引」とは、会計期間中に取引を帳簿に記録することです。
期中の取引では
- 仕訳帳に記録(取引が発生したら記録)
- 仕訳帳から総勘定元帳に転記
といった流れです。
まず取引が行われたら、「仕訳帳」に記録します。
「仕訳帳」は時系列にすべての取引を記録します。
「総勘定元帳」は、勘定科目別にまとめられた帳簿です。
なぜ「総勘定元帳」を記録するかですが、勘定科目ごとの状況がわかりやすいからです。
仕訳帳にすべての取引記録がありますが、現金がどれくらいあるかを調べたいときには不便です。
なぜなら、仕訳帳の取引の中から、現金が絡んでいる取引をピックアップしないといけないからです。
総勘定元帳には「現金」といった勘定科目別に記録しますので、各勘定科目の状況がわかりやすくなっています。
仕訳帳から総勘定元帳への具体的事例
ここで具体的な事例を紹介して、仕訳帳から総勘定元帳への流れを説明します。
具体例
- 取引① 商品500を掛取引で販売した
- 取引② 売掛金500を現金で回収した
よくある取引です。
企業間取引は信用取引なので、現金は後払いにされます。
これを仕訳帳に記録すると、
取引① | |
借方 | 貸方 |
売掛金 500 | 売上 500 |
取引② | |
借方 | 貸方 |
現金 500 | 売掛金 500 |
取引②では、売掛金が現金に変わります。
ということは売掛金という「資産」が減少して、現金という「資産」が増加します。
資産の増加は「借方」に、減少は「負債」に記録します。
これを総勘定元帳に転記すると以下の通りです。
T字型の勘定で記録しています。
売掛金は①の取引で増加して、②の取引で減少しています。
最終的には売掛金は0になっています。
これを総勘定元帳に表すと、
①の取引では売掛金の増加原因は「売上」なので、借方(左側)に「売上500」が入ります。
売掛金は「資産」なので、資産の増加は借方(左側)です。
そして②の取引では売掛金の減少した原因は「現金」なので、貸方(右側)に「現金500」が入ります。
T字型の勘定には相手方の勘定科目を記入します。
増えた(または減った)原因を記入する感じです。
「なぜ売掛金が増えたのか → 売上が増えたから」だから売掛金のT字勘定に売上の勘定科目を借方に記入する感じです。
最終的には借方(増加分)500と貸方(減少分)500が記録されていますので、売掛金の増加分は「500-500=0」となります。
無事に現金回収できたので、ツケになっていた支払いが終わっている状態ですね(^^)
この要領で売上も記録していきます。
売上は取引①で500増加しました。
売上の場合は収益なので、増加した場合貸方(右側)に記録します。
なぜ売上が増えたのかは「売掛金が入ったから」ですので、「売掛金500」と記録します。
これで売上が500増えている状態を表します。
現金については取引②で売掛金を回収できましたので、500増加しています。
現金は「資産」なので、増加した場合は借方(左側)に記録します。
現金が増えた原因は「売掛金の回収」ですので、T字型に入る勘定科目は「売掛金」です。
このように、期中のすべての取引は「仕訳帳」と「総勘定元帳」に記録されていきます。
この「仕訳帳」と「総勘定元帳」をあわせて「主要簿」と呼びます。
また「主要簿」を補うための「補助簿」が作成されることがあります。
「補助簿」は、特定の用途のために、より詳しい情報を記入する帳簿です。
「補助簿」の種類はたくさんありますが、仕入先との取引の詳細を記録した「仕入先元帳」や、得意先との取引の詳細を記録した「得意先元帳」などがあります。
決算手続
決算手続とは、会計期間の期末に、財務諸表を作成するための一連の手続です。
会計期間は「事業年度」とも呼びます。
通常は 1 年間の区切りで財務諸表を作成するための期間です。
良くある期間は 4 月から来年の 3 月末まで、といった感じです。
会計期間の開始時点を「期首」、会計期間の終了時点を「期末」と呼びます。
財務諸表は期末時点のものを作成します。
決算手続きの手順
決算手続きの簡単な流れは
- 試算表作成
- 決算整理仕訳
- 財務諸表作成
といった流れです。
期中には仕訳と総勘定元帳への転記がされていますが、単純に集計しただけでは正しい財務諸表になるとは限りません。
本来計上すべき収益や費用が転記されていないことがあります。
また、資産や負債の金額が実態と違っている場合もあります。
これらを修正するため、決算整理仕訳を行います。
決算整理仕訳によって正しく損益や期末の財政状態を表すことができます。
決算整理仕訳に関する項目は、
- 在庫の評価
- 売上原価
- 減価償却
- 貸倒引当金
- 有価証券の評価
- 経過勘定
決算整理仕訳の具体的な内容については、また別の機会で説明します。
このように2回分ありますので、結構ボリュームがあります。
いったんここでは、仕訳は、
- 期中の取引の仕訳
- 決算整理仕訳
があることを覚えていただければと思います。
そして決算整理仕訳を行った後、最後に損益計算書と貸借対照表を作成します。
最後に
今回は簿記について基礎的なことを解説しました。
中小企業診断士試験では簿記の知識があったほうが良いです。
私は簿記3級のテキストを読んでみました。
結果として48点しか取れなかったのですが(^^;)
時間に余裕があれば、簿記の勉強をしても良いですが、基本的には診断士のテキストに出てくることを覚えたほうが効率的です。
解説した内容でご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください!