学びのすすめ

人事評価改善等助成金はリスクが高い3つの理由

投稿日:2020年4月10日 更新日:

こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。

ほとんどの会社では4月ごろに昇給が行われます。

1年間頑張った評価が給料になって還元されます。

ところで自分の評価はどうやって決まっているかご存じでしょうか?

なぜそのようなことを聞いたかと言いますと、ほとんどの方は自分の評価を知らないからです。

中小企業に勤めている方のほとんどが人事評価制度が明確になっていないです。

賃金の決まり方についても当然知りません。

賃金制度がオープンされている会社もかなり少ないです。

 

そういった会社を対象に厚生労働省は、評価制度や賃金制度の構築を推奨しています。

何と人事評価制度や賃金制度を構築してら助成金がもらえるのです。

それが、人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)です。

 

構築するだけで50万円、更に条件をクリアすればプラス80万円の補助を受けることができます。

最大130万円なのでかなり大きいです。

 

当然評価制度を構築するならこの助成金を活用したいですよね(^^)

評価制度を構築して賃金制度をオープンにしていくとお金がもらえるんですからね。

 

しかし改めて条件を見てみるとなかなか厳しい現実があります。

今回は人事評価改善等助成コースを使う難しさについて書いていきます。



補助金と助成金の違いとは?

助成金って何?

補助金と助成金ってどう違うの?

そもそも助成金て何かから説明していきます。

 

まず助成金・補助金は融資と違って返さなくても良いお金です。

助成金は厚生労働省が主幹で行っています。

何と示されている条件をクリアすればもらえるようになっています。

 

補助金の場合は違います。

補助金は経済産業省が主幹で行っています。

条件がありますが、たとえクリアをしていても採択されるためには審査があります。

ですので申請しても確実にもらえるわけではありません。

代表的なもので「ものづくり補助金」があります。

採択率は40%ぐらいです。

採択されるために「事業計画書」を作成します。

今回導入しようとしている設備がいかに社会や産業に貢献するかをアピールします。

また資金面や計画を立てて実現性が高い事業であることを訴えます。

 

ですので助成金のがほうが楽だなという印象です。

ただしもらえる金額は補助金のほうが高いです。

種類によっては1億円を軽く超えることもあります。

 

助成金は100万円以下になることが多いです。

まあ金額は別として助成金をうまく活用することで費用負担を抑えることができます。



人事評価改善等助成金の条件とは

今回私が皆様に「人事評価改善等助成金」の難しさをお伝えするために、これは厳しいなと思うところを3つに絞りました。

なぜこのことをブログに書こうと思ったのか?

それはこの助成金について調べていくにつれて「ちょっとハードル高くない!?」と思ったからです。

 

  1. 賃金制度を就業規則で公開する
  2. 普通の評価で賃金が2%アップすること(評価がABCならB評価)
  3. 2%の昇給がされていることを賃金表で証明する

もちろん書類を作成することもかなり面倒ですが、上記の3つが壁になってきます。

説明します。

 

賃金制度を就業規則で公開する

まず中小企業が大きく直面する問題として、賃金制度をオープンにすることが挙げられます。

中小企業の賃金規定を拝見すると、通勤手当や残業、役職手当などの各種手当について詳しく書いています。

しかし賃金の根幹部分である基本給については、

「詳しくは別途記載する」

としか書いていません。

つまり明確にされていないのです。

 

賃金が完全にオープンになることに対して抵抗感がある会社が多いです。

見えるかすることは公平性の面で良いことですが、

「ここで勤続しても将来貰える金額ってこれだけなのか・・・」

見えてしまうことでモチベーションを下げる可能性があります。

 

転職が盛んになってきた現状を考えると、オープン化が離職を促進する可能性すらあります。

 

まあ自分がどれくらいの勤続年数でどれくらい貰えるかを知らずに働いているのもおかしな話ですが(^^;)

従業員から賃金について確認することは難しいです。

基本的にはオープン化は評価に透明性が生まれますが、抵抗力も相当強そうです。

 

B評価で賃金2%アップ

私が一番気なっている内容が「普通の評価を受ければ賃金が2%アップする」ところです。

これは大問題に発展する恐れがあります。

それは「人件費が上がり過ぎて倒産する恐れがある」です。

 

例えば月の総支給額が30万円の従業員がいたとします。

この方が評価制度でB評価を受けると昇給額は6,000円です。

単純に同じ賃金の方が30人いると考えると1か月あたり18万円人件費が増加します。

年間に換算すると、216万円増加する計算になってきます。

労務費や人件費等人にかかわる費用は一番と言っていいぐらいかかります。

更に人件費が増加するような仕組みの賃金制度を導入して払っていけるのか疑問です。

従業員は頑張っているが外部環境の影響で業績が下がったとしても評価に応じて賃金の昇給をしないといけなくなります。

昇給させたくないからといって無理やり評価を下げるようなことがあれば本末転倒です。

 

2%アップを証明するため賃金表を公開する

ここまでお話した内容で導入することの難しさを感じていただけたかと思います。

とどめは2%アップすることを賃金表として公開しなくてはいけません。

率ではなく額で公開する必要があります。

例えば

A評価 4%
B評価 2%
C評価 0%

といった表では満たしていません。

2%上がることをしっかり表記しているはずですが、求められているのは賃金の「額」です。

助成金の条件を満たすためには、一般的には号俸給という賃金表が必要になってきます。

図にするとこういった感じです。

横が等級という役職などを表しています。

主任・係長・課長・部長といったほうがわかりやすいと思います。

縦が習熟度です。

同じ役職でも年数がたつと習熟度が増していきます。

それに伴って給料が上がっていくというわけです。

そして評価制度と号俸給を組み合わせます。

評価によって賃金がどう変わるかは下図の通りです。

A評価 2つ習熟度アップ
B評価 1つ習熟度アップ
C評価 習熟度は上がらない

習熟度が上がるということは下に進んでいくということです。

現状が1等級の4号とすると、B評価で1等級の5号に変わります。

1つ号が上がると4,000円昇給します。

この額が2%以上になっていれば条件を満たしていることになります。

 

実はこの号俸級でも条件を満たしていません。

上記に示した号俸給だと3等級2号⇒3号からは2%昇給になっていません。

だんだんと賃金が増加するので4,000円では2%を満たしていません。

30万円の賃金から2%アップを満たそうとすると6,000円昇給が必要です。

 

面倒くさい(>_<)

 

人事制度改善等助成金の目的とは

ここまで来て思うことは

「何のためにこの制度があるのか?」

私もそう思いました。

質問の回答は

「生産性を向上させて従業員に還元するため」

とのことです。

 

しかし売り上げが右肩上がりであれば成立しますが、常にそうなるとは限りません。

この条件を満たそうとすると売上に関係なく人件費が右肩上がりになるリスクを背負うことになります。

 

無理に条件を合わせて形骸化するような人事賃金制度を構築するよりも、助成金にとらわれない制度の構築が必要です。



 

最後にまとめ

今回言いたかったことは、

事制度改善等助成金を導入するにはリスクがあること

 

またどのようなリスクを伴うかは、

  1. 賃金制度を就業規則で公開する
  2. 普通の評価で賃金が2%アップすること(評価がABCならB評価)
  3. 2%の昇給がされているか賃金表で証明する

賃金制度をオープンにできる中小企業の社長はなかなかいません。

普通の評価で昇給し続ける制度は会社を崩壊するリスクを抱えます。

上記を満たすような賃金表を作るのは大変面倒です。

 

50万円をもらえることは魅力的ですが、手間暇とその後の運用を考えるとそれ以上のお金を失います。

小規模事業者であれば人件費のインパクトは少ないですが、規模が大きくなるにつれてリスクが大きくなります。

よく注意して導入をご検討ください!




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