こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
今回からマーケティングについて解説します。
前回まで労務系の解説をしていましたが、なかなか大変でした(^^;)
改めて中小企業診断士試験の難しさを感じますね(^^;)
今回のマーケティングは一次試験だけでなく二次試験でも重要なテーマです。
ビジネスに関わる上で切っても切れません!
まずは基礎的なところから行きます!
マーケティングとは?
マーケティングという言葉はよく使われますが、どういったものでしょうか?
広い意味でつかわれるので、新商品や販売促進の規格を立てることや顧客のニーズをリサーチや分析することなども考えられます。
これらもマーケティングという言葉を使うことは間違っていません。
例に挙げた内容はマーケティング活動の一部です。
一言で言うと「売れる仕組みづくり」です。
もうちょっと詳しく言うと
- お客さんのニーズがどこにあるか調査する
- ニーズを満たす商品・サービスを開発する
- 欲しいと思っているお客さんに提供する
この活動がマーケティングです。
マーケティングとセリングとの違い
マーケティングと似たような言葉に「セリング」があります。
セリングとは「ある商品やサービスを営業活動によって販売する」ということです。
つまり商品はすでにあることが前提となっています。
マーケティングの場合はお客さんがどんなものを欲しがっているかを調べることからスタートします。
そしてお客さんとコミュニケーションを取ることで商品を知ってもらい、顧客満足を実現します。
有名なマーケティング定義
マーケティングの定義はいろいろあります。
ここで有名なマーケティングの定義を紹介します。
コトラーの場合
コトラーの場合のマーケティングの定義は、
「マーケティングとは、個人や集団が、製品および価値の創造と交換を通じて、そのニーズや欲求を満たす社会的・管理的プロセスである」
難しい言葉を並べていますが、言いたいことは、
「人が欲しいと思うものを作って提供することでニーズが満たされる一連の活動」って感じです。
AMA(米国マーケティング協会)の場合
AMA(米国マーケティング協会)の定義は、
「マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。」
だいたいコトラーの内容と一緒ですよね(^^)
そういえば過去問で上記の定義の穴埋め問題がありました。
内容を丸暗記するよりかは、意味を理解したほうが良いです。
ドラッガーの場合
ドラッガーの場合は、
「マーケティングの究極の目標は、セリングを不要にすることである」
セリングが不要ということは、お客さんから欲しいと言ってもらえる仕組みが必要ですね。
ということは、最初の定義である「売れる仕組みづくり」につながってきます。
ニーズを満たす魅力的な商品・サービスを作って価値を創造することが大切ですが、そういった商品・サービスがあるということを知ってもらわないと売れません。
商品が魅力的でも価格が高すぎると誰も買ってくれません。
また商品を欲しいと思っている方に情報が届かなければ買ってもらうことができません。
そのために会社はいろんなプロモーション活動を行って知らせようと頑張っています。
マーケティングコンセプトの変遷
マーケティングはいろんな意味を持っていますが、時代とともに進化してきました。
次はマーケティングのコンセプトがどのように変わってきたかを解説します。
最初マーケティングの概念は米国で生まれました。
そして時代とともにマーケティングのコンセプトは変化・進化しています。
どのようにコンセプトが変化したかは以下の5段階です。
コンセプト | 特徴 |
生産志向 | とにかくモノを効率的に作ることに力を入れている |
製品志向 | 良いものを作れば顧客に買ってもらえると思って作っている |
販売志向 | 製品・サービスの販売に力を入れている |
顧客志向 | 顧客のニーズに合った製品・サービスを作ることに力を入れている |
社会志向 | 自社・顧客・社会の3つを考えてマーケティング活動を行っている |
それぞれがどのような思考化を解説します。
生産志向
最初のコンセプトは20世紀初頭に生まれました。
ちょうど自動車メーカーで有名なフォードが大量生産を始めたころです。
この時代はモノが不足していましたので、作れば売れたので
「生産効率をいかに向上させるか」
が経営のテーマでした。
生産志向の条件は、
「需要が供給を上回っている」
ことで成り立ちます。
需要とは「モノを欲しがっている人」
供給は「モノを作っている人」
ということです。
つまり「欲しがっている人はいるけれども、生産が追い付いていない状態」ということです。
予約が3か月待ちのレストランや、人気だが手作りで生産が追いついていない名産品みたいな感じです(^^)
製品志向
その次の時代のマーケティングコンセプトは「製品志向」です。
生産性が徐々に高まってくるとモノ不足が解消されてきます。
作れば売れる時代ではくなってきました。
そうすると次の段階としては
「他社よりも優れた製品を生み出して顧客に買ってもらう」
というコンセプトに変わってきます。
この段階ではまだ顧客のニーズに直接目を向けているわけではありません。
あくまで「良い製品を作れば売れる」といった考えです。
この考えは顧客ニーズに合致しないような製品が生み出される可能性もあります。
例えば一時期テレビは3Dが流行しましたが、顧客がそれを必ずしも必要としていませんでした。
顧客の視点がないと、いくら製品が優れていても売れません。
3Dテレビについては、現在生産しているところはほぼありません。
それどころかテレビ事業から撤退している会社も多くなりました。
このような顧客視点がない状態のことを「マーケティングマイオピア」と言います。
販売志向
次に登場したのが「販売志向」です。
大量生産を実現することでモノが不足していた時代から、モノが余る時代になりました。
企業は在庫を多く抱えてしまうような状態になりました。
在庫が多い状態は企業にとってよくありません。
製品在庫はお金を使って生み出しています。
在庫が余っているということはそれだけお金も少なくなっています。
経費の支払いのためにはお金が必要です。
支払いのためにお金を生み出すためには、在庫をお金に変えなければいけません。
また、在庫は季節が過ぎると売れなくなってしまうものもあります。
当然在庫が古くなると品質が落ちてしまって売り物にならなくなることもあります。
そうするとお金を捨てているようなものです。
このような状況を打破するためには、製品をいかに売るかという志向になります。
「セリング」と言われる状態です。
製品をどうやって売るかという志向なので、顧客が欲しがっているかという視点はあまり高くありません。
そのため、この志向では「押し売り」になってしまう危険性があります。
現在においても行き過ぎたセリングは問題になっています。
顧客志向
その次は「顧客志向」です。別名「マーケティング志向」とも言います。
この時代としてはモノが潤沢にあり顧客はあらゆる製品から自分の好みに合ったモノを自由に選べる状態です。
市場としては「成熟市場」と言われます。
顧客志向のコンセプトは
「顧客ニーズを調査して、顧客が満足する製品・サービスを開発していこう」
といった考え方です。
今の時代では当たり前の考え方ですね(^^)
製品志向の時代では、まず製品を作る「プロダクトアウト」といわれます。
顧客志向の時代になると、顧客ニーズを重視した「マーケットイン」といわれます。
ちなみにマーケットインはTQM(Total Quality Management)という総合品質管理で登場します。
科目て言うと「運営管理」です。ちょっとチェックしておいてください。
顧客志向は現在のような成熟した市場で主流になるマーケティング・コンセプトです。
社会志向
社会志向は顧客志向の次に考えられているマーケティング・コンセプトです。
社会志向は顧客志向のさらに上のレベルです。
単に目の前の顧客満足を実現するだけでなく、社会全体に対してどのような貢献ができるかまで考えます。
現在では企業の社会的責任(CSR)が重要視されており、徐々に社会志向のマーケティング・コンセプトに変わりつつあります。
従来のマーケティング・コンセプトでは「企業」と「顧客」の2つで考えられてきました。
社会志向のマーケティングではそれに加えて「社会」の3つで考えます。
ですので、企業が顧客ニーズをとらえた製品を作って満足していても環境汚染や資源のムダ使いをしている上程ではいけません。
社会にとっても満足するような活動が必要です。
例えば、製品の材料を自然に優しいものに変更した事例があります。
また売上の一部を寄付することにより社会全体が豊かになるような活動をしている企業もあります。
最近ではゴミの発生を抑えたり、微生物で分解して肥料として使用するような活動があります。
このように社会志向は、今までのコンセプトよりも広い考えを持ったマーケティング・コンセプトです。
コーズ・リレイテッド・マーケティング
社会志向のマーケティングの1つとして「コーズ・リレイテッド・マーケティング」があります。
英語で書くと(Cause-Related・Marketing)です。CRMとも呼ばれます。
英語を紐解くと
- Cause:社会的な大義
- Related:関連した
といった感じなので、「社会的に意義のある活動(コーズ)に役立てるマーケティング活動」といえます。
コーズ・リレイテッド・マーケティングは
「売上によって得た利益の一部を社会に貢献する事業を行っている組織などに寄付する」
といったことです。
しかし単なる慈善活動ではありません。
この活動を通して「企業のイメージ向上などを図って売り上げを増加させる」というある種の打算があります。
日本では、1960年にスタートした「ベルマーク運動」がその先駆けといえます。
マーケティングの階層
従来はマーケティングというの部門の一部分という認識でした。
営業・販売・マーケティングといった感じですね。
しかし近年マーケティングは経営の中で重要性が増してきました。
マーケティングには階層があります。
階層は
- 戦略的マーケティング
- マーケティング・マネジメント戦略
- マーケティング機能要素別戦略
です。
この順番がなかなか覚えにくいです(^^;)
まずは戦略を考えないといけませんので、一番上が「戦略」です。
その下が管理をしないといけませんので「マネジメント」です。
機能は小さい単位ですので「機能要素」が一番下です。
こんな感じで覚えてください(^^)
詳しい中身は図と共に解説します。
戦略的マーケティング
一番上は「戦略的マーケティング」です。
戦略的マーケティングでは企業全体の方向性を決めます。
企業戦略とほぼ同じ意味と思ってください。
企業戦略は成長戦略ともいい、企業の全体の方向をどうするか、経営資源の配分をどうするかを考えます。
マーケティングは外部環境を分析する機能ですので、営業などの機能よりも上位に位置付けられます。
まずはどの方向に進むかを決めておかないと製造や販売の戦略も決めることはできませんよね(^^)
マーケティング・マネジメント戦略
その次の階層は、マーケティング・マネジメント戦略です。
マーケティング・マネジメント戦略では、マーケティングの4Pを統合する戦略です。
売れる仕組みを作るためにはこれらの方向性を考えないといけません。
これらの要素を統一したコンセプトを会社として決めていきます。
例えば、比較的高級なブランド品を想定すると、
チャネルといわれる販売経路がネット中心ですと、いまいち高級感を顧客に訴えることが難しいと考えられます。
プロモーションも価格訴求だと、ブランドイメージが崩れる可能性が高いです。
コンセプトと会った4Pになっているかどうかは、全体的に調整する必要があります。
マーケティング機能要素別戦略
一番下の階層はマーケティング機能要素別戦略です。
機能要素別戦略は4つの機能から構成されます。
4つの機能はマーケティングの4Pと呼ばれます。
マーケティングの4Pとは、以下の通りです。
製品 | Product |
価格 | Price |
チャネル(販売経路) | Place |
プロモーション(販売促進) | Promotion |
それぞれの頭文字がPになっているので4Pと呼ばれています。
これらの詳しい説明は別のブログで書こうと思います。
一旦はマーケティングにはこのような要素があるということだけ覚えてください。
それぞれの機能をどのようにするか、より具体的に決めていきます。
マーケティングのプロセス
マーケティング戦略を策定するためには、どのように行っていくでしょうか?
一般的な流れを解説します。
マーケティング環境分析
まずはやはり「環境分析」です。
分析するのは
- 外部環境
- 内部環境
この2種類を分析します。
分析するにはSWOT分析が使えます。
- 「強み」と「弱み」が「内部環境」
- 「機会」と「脅威」が「外部環境」
といった感じです。
外部環境では「顧客」「競合」を分析しますが、マーケティングでは特に「顧客」に着目します。
そのためには顧客のニーズや消費者行動をリサーチします。
マーケティング目標の設定
次に目標設定をします。
目標にするのは定量化できるものが良いです。
いわゆる「数値目標」です。
例えば、
- 売上高
- 利益額
- 利益率
- 占有率(シェア)
といった感じです。
数値化しておかないと、実際に目標達成できたかどうかの判断ができません。
標的とする市場の決定
次にどこを狙っていくのかを考えないといけません。
具体的には3段階です。
- 市場を細分化(セグメンテーション)
- 市場の選定(ターゲッティング)
- 自社の位置を決定(ポジショニング)
これらのことをSTP分析と言います。
単純に
- セグメンテーション:Segmentation
- ターゲッティング:Targeting
- ポジショニング:Positioning
の頭文字をとっただけです。
マーケティングの計画・実行
最後は当たり前ですが、有効なマーケティングを計画して実行します。
自分たちが考えた「売れるしくみが」顧客に受け入れられるか検討したことをやらなくては意味がありません。
更に実行したことは検証して次の計画に盛り込んでいきます。
PDCAを回す感じですね。
PDCAはマネジメントサイクルと呼ばれています。
計画を実行しその結果を検証して改善につなげます。
当たり前のことですが、なかなか実行できない会社が多いです。
最後に
今回はマーケティングの基礎部分について解説しました。
いまいちつかみどころのない言葉ですが、広い意味でつかわれるのでなんとなくでOKです。
書いている内容自体はそれほど難しくありませんが、マーケティングの変遷など順番を覚えるのはちょっと苦労すると思います。
特にマーケティングの階層はなかなか定着しないと思います。
実務ではこんな階層にこだわることはないです(^^;)
将来セミナーとか考えている方は覚えておくと良いかもしれませんね(^^)
マーケティングは説明事項が多いので、しばらくは書いていこうと思います。
また遊びに来てくださいね!
質問などもどんどん受け付けていますので、お気軽に聞いてください(^^)