こんにちは!中小企業診断士のカズユキです。
今回は財務活動によるキャッシュフローについて解説をしていきます。
キャッシュフローは中小企業診断士試験で非常に重要ですので4回に分けて解説しています。
試験重要度 ★★★★★
キャッシュフローは一次試験の財務・会計や二次試験の事例Ⅳにおいても頻繁に出題されます。
キャッシュフロー計算書は複雑ですが、手順は決まっています。
ですので、まずは解説で手順を学んだら問題を解いてみて下さい。
一次試験の問題であれば、それほど難しくはありません。
財務活動によるキャッシュフローとは?
財務活動によるキャッシュフローは、お金の調達や返済といったことが該当します。
具体的には以下の4つに分類できます。
- 借入金(短期・長期)
- 社債
- 株式
- 配当金
があります。
どういった時にお金が動くかは2パターンです。
- 借入:キャッシュが増加
- 返済:キャッシュが減少
分けて表示することがポイントです。
営業活動によるキャッシュフローに比べて単純ですので、覚えやすいと思います。
では、それぞれの項目について解説を始めます。
借入金(短期・長期)
借入金は短期と長期があります。
返済が1年以内かどうかで分けられますが、キャッシュフローの処理は一緒です。
どういった時にお金の変動があるかは、
- 借入れによる収入
- 借入金返済による支出
です。
具体的に2期分の「負債の部」を示して、キャッシュのインとアウトを解説します。
第10期 負債の部 | 第11期 負債の部 |
短期借入金 100 | 短期借入金 200 |
長期借入金 200 | 長期借入金 100 |
借入れによる収入
実際に計算してみます。
注目するのは貸借対照表の「短期借入金」です。
第10期では短期借入金は100でしたが、第11期では200になっています。
短期借入金が増加していますね。
ということは第11期に短期借入金で借入100を行っていることがわかります。
借り入れたということは、「お金が入ってきた」ということです。
これを財務活動によるキャッシュフローに「100」として記載します。
借入金返済による支出
今度は長期借入金に注目してください。
第10期の長期借入金は200ですが、第11期には100となっています。
長期借入金が減少しています。
ということは第11期に長期借入金の返済を100したということです。
返済したので「お金が減った」ということです。
これを財務活動によるキャッシュフローに「▲100」として記載します。
ちなにみ借入金の場合「利息」が発生します。
損益計算書の「営業外費用」に計上されます。
これは営業活動によるキャッシュフローの小計以下に計上しています。
ここでは貸借対照表の借入金だけを見ればOKです。
社債
社債も、借入金と同じように考えることができます。
社債に関連する項目には、
- 社債の発行による収入
- 社債の償還による支出
があります。
社債の発行による収入
これも具体的に見ていきます。
第10期 負債の部 | 第11期 負債の部 |
社債 100 | 社債 200 |
第10期と第11期の貸借対照表「負債の部」だけをピックアップしています。
第10期の100が第11期に200になっていますので、100増加しています。
ということは社債を発行しているということです。
社債を発行するとお金が手に入ります。
これを財務活動によるキャッシュフローにプラスとして記載します。
ちなみに社債は「負債」に入ります。
社債は借入金と同様に、最後は利息をつけて返済します。
よって返済する義務があるので「負債」です。
前から言っていますが、
- 権利は「資産」
- 義務は「負債」
です。
社債の償還による支出
第10期 負債の部 | 第11期 負債の部 |
社債 200 | 社債 100 |
第10期の200が第11期に100になっていますので、100減少しています。
ということは社債を償還しています。
社債の償還はお金が出ていっています。
これを財務活動によるキャッシュフローにマイナスとして記載します。
ちなみに償還するときに元本と利息を支払いますが、利息については「営業活動によるキャッシュフロー」の小計以下で計上しています。
ここでは元本である貸借対照表の増減を見ればよいです。
株式
株式に関連する項目には、
- 株式の発行による収入
- 自己株式の取得による支出
があります。
株式の発行による収入
第10期 純資産の部 | 第11期 純資産の部 |
資本金 100 | 資本金 200 |
資本準備金 50 | 資本準備金 100 |
「株式の発行による収入」は、資本金と資本準備金の残高を元に計算します。
株式の発行で調達した現金は、資本金と資本準備金に組み入れられます。
よって、「株式の発行による収入」は、資本金と資本準備金の増加額を足したものになります。
上の簡単な純資産の部では第10期に資本金100と資本準備金50から第11期に資本金200と資本準備金100に増加しています。
財務活動によるキャッシュフローに「株式の発行による収入150」とプラスにします。
自己株式の取得による支出
第10期 純資産の部 | 第11期 純資産の部 |
自己株式 ▲10 | 自己株式 ▲20 |
「自己株式の取得による支出」は、自己株式を取得する際に支払った金額となります。
これは、貸借対照表の「自己株式」の増加額となります。
自己株式はマイナス表記します。
よって増加するとマイナスの額が増えます。
上の図では第10期に▲10から第11期に▲20と増加しています。
財務活動によるキャッシュフローに「自己株式の取得による支出▲10」とマイナスにします。
配当金
配当は剰余金から行われます。
正確な配当額を調べるには株主資本等変動計算書の「剰余金の配当」を確認する必要があります。
配当金の支払額は、キャッシュの流出になるため符号がマイナスになります。
試験では注記欄に配当額が書いてあることもありますので、注意しておきましょう。
具体例から計算
ここからは営業活動によるキャッシュフローから使用している、具体例から計算します。
まずは借入金からです。
貸借対照表を見ると、短期借入金と社債はありませんが、長期借入金があります。
その他資料の③を見ると、当期の新規借入はありません。
期首残高は貸借対照表の第 X1 期末の残高の 350 です。
当期借入は 0 です。
期末残高は貸借対照表の第 X2 期末の残高の 250 です。
ということは、長期借入金を返済してキャッシュが減少しています。
よって、当期返済額は ▲100 となります。
次は資本金です。
貸借対照表の「資本金」を見ると、第X1期1,000から第X2期1,400になっています。
400株式を発行したことが分かります。
ここで、「株式の発行による収入」は、資本金の増加額である 400 です。
また、自己株式はありませんので、自己株式によるキャッシュ・フローはありません。
最後に配当金を計算します。
この例では、その他資料の⑤を見ると、配当金支払額が 250 であることがわかります。
よって、符号を逆にした▲250 が「配当金の支払額」となります。
ここまでが、財務活動によるキャッシュ・フローです。
これらを集計したものが、財務活動によるキャッシュ・フローの合計額になります。
合計額は50 となっています。
つまり財務活動によりキャッシュが 50 増えました。
財務キャッシュ・フローの内訳を分析すると、
- 長期借入の返済と配当金による支出350
- 株式の発行でキャッシュを400調達
結果 50 プラスになったことがわかります。
そして、営業活動、投資活動、財務活動をすべて合計したキャッシュ・フローが、その下の行の「現金及び現金同等物の増加額」となります。
例では 250 となっていますので、250 だけキャッシュが増えたということです。
また、この 250 という数字が、その下の行である「現金及び現金同等物の期首残高」と「現金及び現金同等物の期末残高」の差額となっているます。
最後に
これで第4回にわたって続いていた、キャッシュフロー計算書の解説は終了します。
何度も言っていますが、キャッシュフロー計算書は重要テーマです。
知識を定着させる近道は「過去問で練習する」です。
実際に考えて説いてみることで、見落としや計算間違いに気づくことができます。
中小企業診断士試験は範囲が広いので大変ですが、ちょっとずつ勉強すればだんだん身に付きます。
こうした知識は仕事においても役に立ちます。
目の前の仕事だけでなく、全体最適の考え方を持つことができるようになります。
私も解説ブログを続けていきますので、一緒に頑張りましょう!